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「歴史に学ぶこと」の難しさの理由と歴史の教訓の活かし方(その2)

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「歴史に学ぶこと」の難しさの理由と歴史の教訓の活かし方(その2)

 

歴史に学ぶのは、容易ではない理由

「事業に投資すべきかどうか」
「景気は、今後どうなるか」
「今後、株価はどうなるか」
こんな場面で、「将来を正確に見通せたら、どんなにいいか」と思うものです。国のリーダーや組織の幹部なら、なおさらこんな思いがするのではと思います。
教訓として、よく「歴史に学べ」と言われます。過去の成功や失敗を知ることで、未来の判断を誤らないようにするという考え方は、個人・組織・国家を問わず広く共有されています。しかし、実際に歴史を未来予測に活かすのは、容易ではありません。その最大の理由は、歴史が必ずしも「真実そのもの」ではなく、解釈や編集を経た「物語」であるという点にあります。
勝海舟『氷川清話』の中で、歴史の信憑性について次のように述べています。
「およそ歴史といふものは、あてにならないものだよ。勝った者が、自分の都合のいいように書くのだから、その真実を究めることは、なかなかむずかしいことだ。……(中略)……そのまま歴史を読んでいると、いつのまにか騙されてしまう。歴史を材料にして、将来の形勢を卜(ぼく)しようなどというのは、実に危ないことだ。」(一部意訳)
これは、「歴史」というものの本質を突いたものではないでしょうか。
歴史は、勝者が自らの正当性を示すために書き換えられ、都合の悪い事実は隠され、誇張されることがあります。また、会社や組織の「歴史」、個人の「歴史」も同様です。
歴史には、いくつかの特徴があります。
1)歴史は「記録」ではなく「解釈」である
2)勝者の論理が歴史を支配する
3)事実は一つでも、歴史は複数存在する
つまり、歴史とは「事実+解釈」であり「物語」です。解釈が変われば歴史も変わります。歴史は本質的に不完全であり、偏りを含んでいます。
つまり、歴史を未来予測に使うには、まずその不完全性を理解する必要があります。
前回、このブログで「『歴史に学ぶこと』の難しさの理由と会社における歴史の教訓の活かし方」という記事を書きましたが、ここでは、歴史がなぜ不確か、未来予測を難しくするのかを論じ、歴史から教訓を引き出すために必要な思考方法について考えます。

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氷川清話 (講談社学術文庫 1463)

歴史が「真実」をそのまま伝えない理由

歴史が未来予測に使いにくい最大の理由は、歴史が本質的に不完全であり、偏りを含むためです。
1)歴史は「選択された事実」によって構成される
歴史家や記録者は、膨大な出来事の中から「何を記録し、何を捨てるか」を選択します。
この選択には、以下のような要因が影響しています。
①当時の価値観
②政治的・社会的圧力
③記録者の思想や立場
④利害関係者の意図
⑤利用可能な資料の偏り
つまり、歴史は「すべての事実」ではなく、「選ばれた事実」によって構成されます。
日清戦争、日露戦争に関して、陸軍や海軍が作った戦史には、失敗の事例はほとんどなく、華々しいことばかりが強調された、一種の自慢話集といったところです。
2)歴史は「解釈」によって意味づけられる
同じ出来事でも、立場や視点が異なれば解釈は大きく変わります。
①勝者と敗者
②支配者と被支配者
③中心と周縁
④多数派と少数派
歴史とは、事実そのものではなく、事実に対する「意味づけ」の体系です。そのため、歴史は常に複数存在し得ます。第2次大戦後、戦勝国側であった中国やロシア(ソ連)、被害者意識の濃厚な南北商戦の主張する歴史は、全ての悪が日本に押し付けられています。その後、歴史を作った人々の思想は、現体制に引き継がれており、日本から解釈の訂正(歴史の訂正)を申し入れても受け入れられることがありません。
3)記録は常に不完全である
歴史資料は、必ずしも完全ではありません。
①文書が残らない、②口述が誇張される、③記録が破棄される、④偏った資料が残るといったことがあります。
このような状況では、歴史家は不完全な材料から全体像を再構成するしかありません。
その結果、歴史は必然的に「推測」や「仮説」を含むものになります。
4)時代が変われば歴史の解釈も変わる
歴史は固定されたものではなく、時代の価値観によって解釈が変わります。
①ある時代には「正義」とされた行為が、別の時代には「誤り」とされる
②かつて英雄とされた人物が、後に批判される
③逆に、無名だった人物が再評価される
歴史は「過去の出来事」ではなく、「現在の視点から見た過去」です。
したがって、未来予測に用いる際には、歴史の可変性を理解する必要があります。
かつて、「お犬公方」として評判の悪かった五代将軍・徳川綱吉、「賄賂まみれ」と言われた田沼意次は、今や高い評価を受けています。

歴史を未来予測に使うことが難しい理由

歴史が不確かであることは、未来予測を難しくする直接的な要因です。
1)歴史は「再現性のない事象」の集合
自然科学とは異なり、歴史は同じ条件で同じ結果が再現されることがありません。例えば、時代背景、技術水準、社会構造、人々の価値観、国際環境などが、常に変化するため、過去の成功や失敗がそのまま未来に適用できるとは限りません。
2)歴史は「単純化」されて語られる
歴史はしばしば、理解しやすいように単純化されます。たとえば、「〇〇が原因で失敗した」、「〇〇をしたから成功した」といった具合です。しかし、実際の歴史的出来事は複雑で、多数の要因が絡み合っています。単純化された歴史をそのまま未来に当てはめると、誤った判断につながります。
私自身、会社の業績が悪化したとき、
「事業責任者が、過去の成功体験から抜けられず、今日の低迷を招いている」
と社外の人や社内の他部門から批判されたことがあります。「過去の成功体験から抜けられない経営陣」と単純化して批判されて、悔しい思いしました。
3)歴史は「後付けの合理化」を含む
歴史は、結果が分かった後に語られるため、因果関係が過度に強調される傾向があります。例えば、「あの時の判断がすべてを決めた」、「あの選択が失敗の原因だった」と決めつけなどです。しかし、実際には偶然や外部要因が大きく影響していることも多く、後から見れば必然に見える出来事も、当時は不確実な選択の連続だったはずです。
歴史というほどでもなく、スポーツの結果を評論する場合、「結果論」といわれるような「後付けの合理化」が行われることがよくあります。
4)歴史は「語り手の意図」に左右される
歴史は、語り手の意図によって形づくられます。たとえば、自らの正当性を主張する、特定の価値観を広めたい、過去の行為を正当化したい、失敗の責任を回避したいといったことです。
今日では、中国や韓国が「歴史」を引き合いに領土問題や民族問題をコメントするときは、語り手の意図に沿った歴史になっていることが明確にわかります。

 

歴史から教訓を引き出すための思考方法

歴史が不確かであるからといって、歴史が無意味というわけではありません。
むしろ、歴史の不完全性を理解した上で読み解くことで、未来を考えるための深い洞察が得られます。
以下、歴史から教訓を引き出すための方法を考えてみます。
1)歴史を「事実」と「解釈」に分けて読む
歴史を読む際には、「変わらない事実」と「時代や立場によって変わる解釈」を区別することが重要です。この区別ができると、歴史の本質が見えてきます。
2)歴史の「背景」と「構造」を理解する
歴史的な出来事は、単独で起こるものではありません。背景には、経済、社会、文化、技術、国際関係などの複雑な要因があります。表面的な出来事だけを追うのではなく、背景や構造を理解することで、未来への応用可能性が高まります。
3)歴史を「固定的な答え」ではなく「問いの源泉」として使う
歴史は未来の答えを教えてくれるものではありません。
しかし、未来を考えるための「問い」を与えてくれます。例えば、「なぜその判断が行われたのか?」「どのような環境がその結果を生んだのか?」「他にどのような選択肢があったのか?」「何が成功を支え、何が失敗を招いたのか?」といった問いを立てることで、歴史は未来予測の強力な道具に変わります。
4) 歴史を「絶対視」しない
歴史はあくまで参考材料であり、絶対的な指針ではありません。過去の成功や失敗をそのまま未来に当てはめるのではなく、状況の違いを踏まえて柔軟に考える必要があります。
歴史は一つではありません。複数の視点から歴史を読み解くことで、偏りを減らし、より立体的な理解が可能になります。例えば、異なる立場の記録、異なる時代の解釈、異なる文化圏の視点といった多様な視点を取り入れることで、歴史の本質に近づくことができます。

 

歴史の不確かさを前提に未来を考える

歴史が不確かであることを理解した上で、未来を考えるためには必要な姿勢があります。
1)「変わるもの」と「変わらないもの」を見極める
歴史には、時代によって変わるものと、変わらないものがあります。例えば、技術や制度は変わりますが、人間の心理や組織の構造は変わりにくいといったことです。
中国やロシアなどをみてみると、その専制的なしくみは、何百年も受け継がれているとさえ思えます。
2)歴史を「パターン」として捉える
歴史は再現されませんが、似たようなパターンは繰り返されます。例えば、「過信・慢心」「情報の偏り」「組織の硬直化」「外部環境の変化への鈍感さ」といった原因による失敗のパターンは、時代や組織を超えて共通しています。歴史を失敗のパターンとして捉えることで、未来のリスクを予測しやすくなります。
3)歴史を「反省の材料」として使う
歴史は未来の答えを教えてくれませんが、過去の誤りを繰り返さないための材料を提供してくれます。「なぜ誤った判断が行われたのか?」「どのような思考の偏りがあったのか?」「どのような環境要因が影響したのか?」といった疑問を積み重ねることで、未来の判断の質が高まります。

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教養としての歴史学入門

まとめ

歴史は不完全であり、偏りを含んでいます。
しかし、歴史の不確かさを理解した上で読み解くことで、未来を考えるための深い洞察が得られます。
未来を予測し、行動に移すためには、
①歴史の真実をできる限り掘り下げること
②その中から自分なりの教訓を引き出すこと
③過去の成功や失敗を絶対視せず、背景や構造を理解すること
④複数の視点から歴史を読み解くこと
が重要です。
歴史は「答え」ではなく「問い」を与えてくれる存在であることを理解すれば、未来にいかすことができます。

参考記事:業務改革・改善が何度も失敗する理由は、その会社の過去(歴史)をみれば分かる

「結果論」で責められた時の対処法を結果論のメリットとデメリットから考える

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