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日本のマスコミや政府の調査が、「ヒヤリング中心」という問題(報道について その2)

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

日本のマスコミや政府の調査が、「ヒヤリング中心」という問題(報道について その2)

 

日本のマスコミや政府の調査が、「ヒヤリング中心」の理由

昨年(2025年)のコメ不足
最近のナフサ不足
こんな短期的な社会問題に対して、マスコミの報道が盛んに報道し、政府も状況を説明します。発表されるマスコミや政府の調査は、ヒヤリング中心で、定量性が欠けたものが大半です。例えば、
「消費者から、『売り場からナフサ製品であるポリ袋が無くなった』との声」
「卸業者の話では、『元売りからナフサ供給が止まっている』」
「石油元売りは、『十分な量のナフサを保有し、出荷している』と言っており、現状問題ございません。」
といった具合です。
日本において、マスコミや政府の調査が、短期的な問題について、ヒヤリング中心になる背景には、日本社会に存在する固有の要因があります。
それは、以下の3つです。
1)マスコミや政府のスタッフに「データで判断する習慣」が根付いていない
2)日本には「短期統計を専門に扱う民間会社」が育っていない
3)日本人・日本の教育に「定量的に判断する習慣」が欠けている
これら日本社会が抱える「定量性の欠如」という構造問題を解消するには、マスコミ・政府・民間企業・国民のすべてが、
「数字で判断する社会」へと意識を転換すること
が不可欠なのかも知れません。
この記事では、前記事:マスコミの情緒的報道が社会の混乱を拡大させている」(報道について その1に続き、日本のマスコミ報道や政府発表とその社会的背景について考えます。

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検証 暴走報道

マスコミや政府のスタッフに「データで判断する習慣」が根付いていない

日本のマスコミや行政組織では、長年にわたり「現場の声」「担当者の経験」「空気の読み取り」が重視されてきました。これは日本社会の文化的特徴でもあり、短期的な需給変動のように、定量データが最も重要な領域においても、同じ手法が持ち込まれてしまうという問題があります。
その結果、組織文化として「ヒヤリング依存」となっているのではないでしょうか。
例えば、
① 新聞社・テレビ局では、若手記者はまず「足で稼げ」と教えられる
② 行政官も「関係者との調整」「現場の声の吸い上げ」が評価される
③ データ分析は専門部署に限定され、現場の判断に組み込まれない
といったことがあり、結果として「数字を見て判断する」という文化が育たず、ヒヤリングが「唯一の調査手法」のように扱われる状況が続いています。

日本には「短期統計を専門に扱う民間会社」が育っていない

海外では、短期的な需給変動を把握するための民間データ会社が多数存在します。
衛星画像で農地の収穫量を推計する会社、トラックの移動データから物流量を推定する会社、POSデータをリアルタイムで解析する会社などです。
こうした企業は、政府やマスコミとは独立した立場で、定量的な「事実」を提供する役割を担っています。例えば、以下のような会社があります・
1)ORBCOMM(オーブコム)
世界最大級の 衛星IoT(Satellite IoT) プラットフォームを持ち、コンテナ、トラック、鉄道貨車、冷凍コンテナ(reefer)などの リアルタイム位置・温度・在庫状況 を把握できる。
2)Inmarsat(インマルサット)
電力網・物流・海運・航空などのインフラを衛星で監視し、需給の変化や障害をリアルタイムで把握できる。
3)Kineis(キネイス)
小型衛星を多数運用し、農業・物流・環境データを低コストで収集する。
残念ながら、日本にも統計会社は存在していますが、扱うのは長期統計が中心で、短期需給のリアルタイム把握はほとんど行われていません。つまり、日本では 「短期的な事実を定量的に把握するための社会的インフラ」が存在しません。
その結果、マスコミは外部データ会社を利用せず、自社でできる安直なヒヤリング調査に頼ることになります。

日本人・日本の教育に「定量的に判断する習慣」が欠けている

より根本的な問題として、日本の教育や社会文化には、定量的思考を育てる仕組みが弱いという特徴があります。
1)教育面の問題:
数学は「受験科目」として扱われ、実社会での活用が教えられない。また、統計教育が極めて弱く、データの読み方を学ばない。「数字で議論する」訓練が不足していることがあります。
2)社会文化の問題:
日本の社会には、「空気を読む」「多数派に合わせる」文化が強い。数字よりも「感覚」や「印象」が優先されがち。データを示すと「理屈っぽい」と敬遠される場面さえもあります。
このため、マスコミ・政府だけでなく、国民側も数字を求める習慣が弱く、ヒヤリング中心の報道が受け入れられてしまうという構造が生まれているのではないでしょうか。

マスコミや政府に期待すべきこと

以上の構造的問題を踏まえると、マスコミや政府に求められるのは、次の3点です。
1)定量データを収集し、公開する仕組みを整えること
様々な手段を利用して、生産/流通/在庫/消費のデータを日次で把握すること。また、民間企業のデータも匿名化して統合する。その上で、 報道時に「数字で語る」ことを基本とすること。
2)ヒヤリングとデータを「セット」で扱う文化を作ること
個別の声は「事例」として扱い、全体像はデータで示すべきです。感情的な表現より、事実の提示を優先すること。政府も「問題ない」だけでなく、根拠となる数字を示すことが重要。
3)民間データ会社の育成・連携を進めること
衛星データ、物流データ、POSデータの活用を促進すれば、定量的に状況は把握できます。マスコミが外部データ会社と連携し、事実を検証したり、政府がデータ公開を進め、民間分析を促すことが期待されます。

我々、国民が気を付けるべきこと

社会の混乱を防ぐためには、受け手であるわれわれ国民の姿勢も重要です。
1)情緒的な報道に反応しすぎないこと
「棚が空」の映像は全体を代表していません。単発の声より、数字を確認する姿勢が必要。
2)定量データを求める習慣を持つこと
「どれだけ不足しているのか」
「在庫は、どこに何日分あるのか」
「入荷量はどう推移しているのか」
こうした質問を持つだけで、情報の受け取り方が大きく変わる。
3)必要以上の買いだめを避けること
社会的混乱の多くは、実際のモノ不足ではなく「心理的不足」から始まります。冷静な行動が、結果として社会全体の安定につながることを強く意識することです。

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まとめ

短期的な社会問題において、日本のマスコミや政府の調査がヒヤリング中心で、定量性が欠ける背景には、
1)組織文化としてのデータ軽視
2)短期統計を扱う民間会社の不在
3)教育・文化としての定量思考の弱さ
という3つの要因があります。
この構造を変えるには、マスコミ・政府・民間企業・国民のすべてが、
「数字で判断する社会」へと意識を転換すること
が不可欠ではないでしょうか。

参考記事:「総論賛成各論反対」の壁を突き破るのが、経営者や政府のリーダーの役目!

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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