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親会社出身社員と子会社の生え抜き社員(プロパー社員)との間で起きる軋轢の原因

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

親会社出身社員と子会社の生え抜き社員(プロパー社員)との間で起きる軋轢の原因

 

親会社出身社員と子会社の生え抜き社員(プロパー社員)との間で起きる軋轢(あつれき)

「仕事分かっていないのに偉そうにしている親会社から来た部長」
「おとなしくて頼りにならない親会社からの出向社員」
大企業の連結子会社内で、生え抜き社員(プロパー社員)からよく出る不満です。一方、親会社出身の社員が集まると
「この会社のプロパー社員は、レベルが低い」
などと子会社社員への不満を言ったかと思えば、
「親会社の連中は、子会社のことが分かっていない」
「俺たちを含め、子会社を何だと思っているのか」
などと、親会社への不満を話します。このあたりの人間関係は、企業小説や企業ドラマの題材にもなるような人間模様がゴロゴロしています。
連結子会社内にある社員間の軋轢(あつれき)は、それが子会社ということでなくても起きるものです。しかし、親会社出身とプロパー社員という立場の違いに、背景としてある根拠なき「差別意識」や「優越感」「劣等感」などによって、より複雑で重いものになります。
連結子会社における親会社出身社員と生え抜き社員(プロパー社員)の間で起きる軋轢の原因には2つの背景があります。
1)子会社になった経緯
2)子会社と親会社の収益関係
この2つの要因が、親会社出身社員やプロパー社員の目にフィルターを掛け、人間関係において軋轢を生みだします。

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子会社になった経緯

子会社が生まれるに至る経緯には、2つのケースがあります。

1)親会社が新規事業や事業拡大のために新規に設立した会社
新規に設立した会社の場合、子会社は親会社出身と会社設立以降に採用した社員によって構成されます。社員の仕事へのモチベーションが高く、比較的社員間の不満は少ないものです。ただし、事業が安定して収益を得るまでに時間がかかり、この間の人間関係を良好に維持することが大切です。
設立時は、従業員に一体感がありますが、時が経過するに従い、親会社出身の社員が第2世代、第3世代となるにつれ、親会社出身の社員とプロパー社員との間で感覚のズレが生まれ易くなります。

2)既存の会社を子会社としてグループに入れた会社
親会社の戦略により既存の会社を子会社としてグループに組み入れるケースがあります。例えば、技術力があるが経営がうまく行かず子会社化されたケースなどです。米国のベンチャー企業に見られるような、成功を収めた会社が巨大企業に身売りするケースもあります。
このように既存企業が子会社化された場合、親会社は幹部社員を子会社に送り込むことになりますが、このようなケースでは、子会社化した当初から人間関係の不満が出易いものです。
プロパー社員は、親会社出身社員に対して
「この会社のこと、この業界/技術/慣習が分かっていない!」
と思い込んでいることがあります。一方、親会社出身社員は、
「プロパー社員は、システマチックな経営/生産品質管理が分かっていない」
と思い込んでいることがあります。そんな背景の中、社内のコミュニケーションが行われると思わぬ人間関係の軋轢が生まれます。
私自身、こんな子会社のプロパー社員の立場も親会社出身社員の立場も経験したことがあります。その時、感じたのは、親会社出身社員、プロパー社員の双方が、勝手な思い込みから不満を口にし人間関係のトラブルに発展することが実に多いということです。
親会社出身の社員が、子会社に異動した後、その会社のこと、市場のこと、生産技術を良く勉強、会社の長所短所を知りつくしていたとしても、プロパー社員は、
「親会社から来た人は、うちの会社のことを分かっていない」
と親会社出身者を見てしまうことがあります。
一方で、親会社出身の上司が、部下であるプロパー社員の技術や仕事ぶりを知ろうともしないで、自分のこれまでのやり方を押し付けたりしていることがあります。この結果、プロパー社員が上司の指示に拒絶反応を示しトラブルとなります。挙句にはてに、上司が、
「プロパー社員は、学歴もなく頭が悪い」
口をつき、プロパー社員が
「親会社からの出向者は、プライドだけが高い」
などと不毛な言い合いで、取返しのつかない事態へと発展した経験があります。

子会社と親会社の収益関係

親会社と連結子会社との関係は、収益という面でると様々なケースがあります。子会社が収益を上げているケースでは不満が少ないのですが、子会社の収益が低迷していると、親会社出身の社員とプロパー社員との間に軋轢が生まれ易くなります。

1)子会社の収益を親会社に還元している
子会社が収益を上げると配当金の形で親会社に還元するケースがあります。また、子会社に対して、親会社が仕事を出している場合では、加工費や請負費を下げることで還元できます。ただし、会計上収益は連結決算されますので、企業グループとしては同じなのですが。
子会社から利益を親会社に還元しているケースでは、プロパー社員からみると
「親会社に利益をむしり取られている」
という印象があります。親会社と子会社の給与水準が同じならいいのですが、もし子会社の給与水準が低ければ(このケースが多いのですが)、一層「むしり取られている」との感覚が強くなります。

2)親会社が子会社を資金面で支援している
子会社の収益が悪く、親会社が子会社を支えているケースでは、プロパー社員の気持ちは重くなり易いものです。
「赤字が続けば、親会社は会社を潰すことも有り得る」
との不安が生まれます。あるいは、
「会社が潰れても親会社の出向社員は救われる」
などと思うかも知れません。
大切なのは、親会社及び幹部社員が、明確な将来に向けてのストーリーを示すことです。しかし、親会社が、
「子会社の将来は、子会社が考えろ」
といった風に一種無責任な対応をする会社を沢山知っています。親会社出身の幹部社員にしてみれば、親会社の将来的な保証がなければ、大胆な収益改善策は出せません。プロパー社員と同じように「切り捨てられる」不安が生まれます。その結果、さしたる根拠のないまま
「業績は将来好転する」
といった、当たり障りのないストーリーを作り親会社に報告してしまうことになり兼ねません。これを見ているプロパー社員のモチベーションがどうなるか、容易に想像できます。

3)子会社、親会社がともに成長し収益を上げている
子会社、親会社ともに成長し収益を上げていくことが理想です。人間関係も好循環が期待できるでしょう。企業史の中で、親会社から分かれた子会社が、親会社を凌ぐ企業になった例があります。トヨタ、富士通、ソフトバンク、NTTデータ等々です。いずれの例も、その社史では、収益の上がらない時期を幹部のリーダーシップと社員達の努力により突破した話が語られています。

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まとめ

連結子会社における親会社出身社員と生え抜き社員(プロパー社員)の間で起きる軋轢には、原因となる2つの背景があります。
1)子会社になった経緯
2)子会社と親会社の収益関係
この2つの要因が、親会社出身社員やプロパー社員の目にフィルターを掛け、人間関係において軋轢を生みだします。

参考記事:離職を防ぎ、やる気を高める「トータル・リワード」という非金銭報酬とは

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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