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「自責思考」は道徳ではない! その正しい理解と使い方

 
ミスショットをしたゴルファーのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「自責思考」は道徳ではない! その正しい理解と使い方

 

自責思考は、トラブルの「原因追及」ではなく、「対策」において使うべきもの

「何事も他人のせいにせいにするな」
「問題が起きたときは自分に非があると考えよ」
こんな言い方で日本人は、家庭や学校、会社で指導されてきました。しかし、何かトラブルがあった時、「それは自分のせい」と考えるのには、少々抵抗感があります。(少なくとも私)実際は、
「ほんとか?」
「納得いかない!」
といった感情を伴いながら、道徳的に「そう考えねばならない」と自分を戒めてしまうケースもあります。これでは、ストレスが溜まります。
罪を犯した者がいて、第三者が
「本人が悪いのではなく、社会が悪い」
とか、
「環境がそうさせた」
といった言葉に、被害者は納得できるのでしょうか。
私自身、かつて所属していた会社で不祥事が起きたとき、報告書を作成したことがあります。そのとき、
「本人だけが悪いのではなく、背景には会社の『儲け至上主義』があったことを報告書に入れよ!」
と圧力を掛けられたことがあります。報告書を発表した後、マスコミは、「会社の儲け至上主義」を強調した報道がなされました。当時、子どもから「お父さんの会社は、そんなに悪い会社」と言われて当惑したという社員がいました。
個人的な「やっかみ」かも知れませんが、官僚や政治家に不祥事があったときは、「担当した人だけが悪い」といった記者会見をする人が多いように感じます。
冒頭に挙げたような何か問題が起きたときに、他者ではなく自分に非があるとする考え方を「自責思考」と言います。自責思考は、一般に当事者意識や成長意欲につながり、ビジネスでは高く評価される考え方です。しかし、極端な自責思考はストレスを抱え易く、うつ病の原因になる可能性だってあります。
自責思考でストレスが生まれるのは、自責感情を原因分析の中で使うからです。トラブルの直接原因は、他人のミスなのが明らかなこともあります。それを黙殺して、「自分にも責任がある」と考えるのは、不条理です。自責思考でやるべきは、トラブルの対応や再発防止においてです。つまり、自分でコントロールできることを優先する考え方です。他人や他社、社会は、容易にコントロールできません。これを理解していれば、自責思考のメリットを活かすことができます。
この記事では、自責思考の正しい扱い方とそのメリットをご紹介します。

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トラブル時の原因探索は、客観的にする

そもそも、自責が「道徳的に良い」から推奨されるわけではないということです。
・ 「自分が悪い」と感じることが美徳である
・ 「他人のせいにするのは悪い」

といった道徳的評価とは切り離すべきです。「他人のせいにする(他責)と周囲から敬遠される」といった感情を原因究明に持ち込まないことが重要です。
トラブルの原因分析は、感情(自責/他責)とは切り離して、事実ベースで行うべきです。通常は、
「何が起きたのか?」
「どのプロセスで問題が生じたのか?」
「誰がどのように関与したのか?」
「システム・構造・環境要因は何か?」
といった追及が行われます。感情ではなく、データ・観察・検証によって明らかにすることです。
要は、「自責で考えるべきだ」という感情は、原因分析の段階ではなく、対策を立てる段階で意味を持つということです。

トラブル対策は、自責で立てるべき

問題解決の本質は、
自分が変えられる領域に働きかけること
他責感情で対処すると、「あの人が悪い」「組織が悪い」「環境が悪い」といった「自分では変えられない領域」に焦点が向き勝ちになります。自分がコントロールできない要因に重点を置いた対策は、実行可能性が低く、改善効果も限定的です。
一方、自責思考は、
「自分の行動」「自分の判断」「自分の準備」「自分のコミュニケーション」
といった自分の「コントロール可能領域」に焦点を当てます。つまり、自責は「自分が変えられる部分」を起点に対策を立てられるため、改善の実効性が高くなります。

自責思考のメリット

以下に自責で考えるメリットを述べます。
1)行動可能性が高まり、改善サイクルが回る
自責は、「自分が変えられる部分」に意識を向けるため、改善行動が具体化しやすくなります。例えば、
・ 伝達ミス → 「次から確認プロセスを追加しよう」
・ 期限遅延 → 「計画の精度を上げよう」
といったことです。他責では行動が止まりやすいのに対し、自責は行動を生み出す駆動力になります。

2)学習効果が高い(成長につながる)
自責は、自分のスキル・判断・プロセスを振り返る機会を生むため、学習効果が高く、長期的な成長につながります。
一方、他責は、「自分は悪くない」という前提になるため、学習ポイントが抽出されにくく、成長が停滞しがちです。

3)再発防止策が実行しやすい
再発防止策は、自分が変えられる行動の改善が中心です。自責はそのまま再発防止策の設計につながり、実行可能で効果の高い対策を生み出しやすくなります。

4)対人関係の摩擦を減らす
他責は、相手の防衛反応、責任の押し付け合い、信頼関係の悪化を引き起こしやすいものです。
一方、自責は、相手を責めないため、関係性の悪化を防ぎ、協力を得やすいという副次的効果があります。

5)心理的安定につながる場合がある
自責は一見つらいように見えますが、「自分が変えられる部分がある」と感じられることは、心理的なコントロール感を高めるため、むしろストレス軽減につながることがあります。

他責は、「自分にはどうしようもない」という無力感を生みやすく、心理的ストレスを増幅させることもあります。

 

仕事やゴルフの例からみる自責と他責

自責と他責について、仕事やゴルフを例として考えてみます。

仕事の例

同僚がミス(顧客との納期・価格の契約内容が曖昧)し、契約破綻の危機にあるケースを想定してみます。
他責感情で対処すると起き易いこと:
感情の矛先が「同僚」へ向かう:
「あいつが曖昧な契約をしたせいだ」「自分は悪くない」という心理が強くなります。
その結果、行動が停滞しやすくなる;
他責では「自分では変えられない領域」に焦点が向くため、同僚への不満、組織への怒り、顧客への苛立ちといった「行動につながらない感情」が増えます。結果として、改善策が出てこない/動きが遅れます
チーム内の関係悪化:
同僚は防衛的になったり、「責められた」と感じて協力が得られなかったりします。下手をすると上司も巻き込んで対立構造が生まれます。その結果、トラブル対応のスピードが落ち、顧客対応も後手に回ります
顧客との関係が悪化しやすくなる:
他責の姿勢は、顧客にも伝わります。「社内の責任転嫁をしている」「この会社は統制が取れていない」と評価され、信頼を失います。

自責感情で対処する場合に起こること:
ここでいう「自責」は、「自分が変えられる部分に焦点を当てる」という実務的姿勢であり、自己否定ではないことに注意。
行動可能な領域に意識が向く:
「自分はどの段階で確認できたか」、「次回はどうすれば曖昧な契約を防げるか」、「顧客にどう説明すれば収束させられるか」といった、改善可能なポイントに目が向きます。
迅速な対策が打てる:
例えば、顧客に事実を整理して説明する、曖昧な部分を文書化して再確認といった実行可能な行動が生まれ易くなります。
チームの協力が得られやすい:
自責姿勢は、相手を責めない、攻撃しない、協力を求めやすいため、同僚も防衛的にならず、「一緒に解決しよう」という空気が生まれます。
④ 顧客からの信頼回復につながる:

顧客は、責任転嫁よりも迅速で誠実な対応を評価します。結果として、契約破綻の回避や、関係維持につながる可能性が高くなります。

ゴルフの例

ミスショットでボールが木の真下にあり、まともに次のショットができないケースを想定してみます。
他責感情で対処する場合に起こりうること:
① 外部要因に怒りが向く、
「木が邪魔だ」、「風のせいだ」、「同伴者がうるさかった」などと、外部に原因を求め勝ちになります。
冷静さを失い、さらにミスを誘発:
怒りや苛立ちは、判断力の低下、スイングの乱れ、無理なショット選択につながり、連続ミスの確率が上がります
ラウンド全体のリズムが崩れる:
他責は感情のコントロールを難しくし、その後のホールにも悪影響が出ます。

自責感情で対処する場合に起こりうること:
「自責」は、「自分のプレーの改善点に目を向ける」という冷静な姿勢のことです。
状況を受け入れ、最適解を探せる:
「自分のショットが原因で木の下に来た」「では、この状況で最善の一打は何か」と考えます。結果として、横に出す、低い球を打つ、レイアップして次のショットを整えるなど、リスク管理ができます。
感情が安定し、ミスの連鎖を防ぐ:
自責は、コントロール感、冷静さ、判断の質を保つため、その後のプレーが安定します
学習につながる:
また、「なぜ木の方向に打ってしまったのか」「次はどのラインを狙うべきか」「クラブ選択は適切だったか」と振り返ることで、次のラウンドで同じミスを減らせます

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まとめ

トラブルが起きたとき、自責思考で対処すべきなのは、
1)自責が道徳的に優れているからではなく、
2)トラブルの原因分析を客観的に行い、
3)対策は「自分が変えられる領域」から立てる必要
があり、
自責思考が、行動可能性・学習効果・再発防止・関係性・心理的安定など多くのメリットをもたらすためです。

参考記事:3種類の「責任」とは?「自己責任」は、「責任」ではない!

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