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部下が事故やトラブルを起こした時、リーダーはどう「叱る」

 
部下を叱る上司のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

部下が事故やトラブルを起こした時、リーダーはどう「叱る」

 

部下が事故やトラブルを起こした時のリーダーの叱り方

会社で、
「絶対に交通事故を起こさない!」
2度と労働災害を起さない!」
「品質クレームを出さない!」
こんなスローガンを掲げていても、交通事故が起きることもあれば、労働災害や品質クレームが起きてしまうことがあります。そんな事態(トラブル)になったとき、上司は当事者にどんな言葉をかけ、どんな態度をとりますか?
もし、リーダーである上司が問答無用で叱りつけたら、当事者は萎縮してしまい、次の行動が起こせなくなります。下手をすると、職場全体が重苦しい空気となり、活力がなくなるかも知れません。その後、職場でトラブルが起きても、上司に報告しなかったり(隠蔽)、状況を過少に報告するといったりする職場風土になってしまう可能性があります。
逆に交通事故や労災を起した当事者や作業指示者に対して、これといったアクションを取らなければ、再発防止が図れるか疑問です。
部下が労災、品質不良などのトラブルを起こしたとき、リーダーは適切な叱り方やアクションを取ることが大切です。それは、以下のようなことです。
1)トラブルの人的原因が、「誤り」か「嘘」なのかを区別して叱る
2)ルールを破ったことを叱る
3)ルールを守ってのトラブルならルールを変える
事故などのトラブルは、様々な要因が関係しています。リーダーが、明らかに「人的ミス」が原因と判断できると思っていても、その裏には技術的要因、組織的要因、環境的要因、当事者の健康状態要因等々、様々な間接的原因が隠れているかも知れません。
トラブルの直接原因となった当事者に対して、いきなり「叱る」(あるいは「怒る」)前に、上記のようなことを考慮しておくことが、トラブルの再発防止や部下の成長に繋がる「叱り方」になります。

トラブルの人的原因が、「誤り」か「嘘」なのかを区別して叱る

人的原因でトラブルが起きたことに対して、当事者に対して「叱る」とき、人的原因に「誤り」と「嘘」があることを認識しておく必要があります。
例えば、顧客に提出した製品の検査成績書が、検査した現場の記録と異なっていることが発見されたとき、二つのケースがあります。一つは、試験記録を検査成績書に作成する際の転記ミスなどの「誤り」。もう一つは、意図的に試験記録を書き換えるという「改ざん」や試験記録がないのに検査記録をつくる「ねつ造」です。顧客からみたら、どちらも「間違い」ですが、ミスによる「間違い」と「改ざん」「ねつ造」は全く違います。「改ざん」「ねつ造」は、一種の「嘘」であり、社会的には犯罪にもなります。
また、社内でトラブルが発生したとき、それを上司に報告しなかったり、「大したことではない」と過少な表現で報告したりすることは「嘘」です。トラブルで状況が混乱していて、「事実誤認」で報告する場合もあるかも知れませんが、こちらは「間違い」です。
リーダーが、当事者を「叱る」とき、「間違い」に対しては寛大に、「嘘」に対しては厳しくが大原則です。

余談ではありますが、週刊誌のゴシップ記事には、「嘘」と「間違い」が混在しています。「間違い」に対しては、記事にされた当事者が訴えを起したり、出版社が謝罪をしたりします。ところが、意外に「嘘」に対しては寛容なところがあります。例えば、ある問題を起こした社長が会見で、
「そんな話は、聞いておりません」
と発言したのをTV中継で見ていました。ところが、後に出た週刊誌には、
「『儂はそんな話、関係ない!』と社長は記者を一喝した」
といった表現で掲載されていました。その社長、自分のこと「儂」といったことも恫喝した印象もなかったのですが、読者に社長の強引なイメージをつくろうと発言が「改ざん」されていました。売るための週刊誌ですので、記事を面白くするための「嘘」でしょうが、週刊誌を「叱る」人がおらず、このような状況が放置されています。

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ウソつきの国

ルールを破ったことを叱れ

人的な要因でトラブルが起きたとき、原因が「ルールを破った」ことであれば、厳しく「叱る」必要があります。厳しく叱ろうが、淡々した注意であろうが、指摘している内容は同じです。厳しく責めたところで、結果が変わるわけではありません。しかし、再発防止の観点からすれば、「叱る」という感情が入った注意をすることで、ミスや手抜きをした当事者は、強くそのことが記憶に残ります。ただ単に「失敗した事実」を記憶するより、「失敗して、上司に厳しく叱られた」と記憶する方が、はるかに強く記憶され、後から思い出し易くなります。これは、脳科学では、「エピソード記憶」といわれ、体験と一緒に物事を記憶することで、記憶が強化されると言われています。上司が部下を叱るとき、たとえ明確に「ルールを破った」事実があったとしても、気をつけるポイントがあります。これを無視して「叱る」とパワハラとみなされる恐れがあります。そのポイント、以下のようなことです。
1)身体的暴力
2)威嚇的な行為、例えば大声で罵倒したり机を叩いたりすること
3)威嚇的な言葉、例えば脅し、解雇をほのめかす言葉
4)事象とは異なる内容の発言、例えば人格を傷つけるような言葉
特に、起きたトラブルとは関係ないことを叱るのは要注意です。例えば、
「そもそもお前は、普段からボーとしているからだ!」
といった発言は、受け止め方次第ではパワハラとなります。
リーダーが「叱る」のは、トラブルの再発防止や部下の成長に繋げるためです。「叱る」ことが、リーダーの感情のはけ口にしてはいけないことを肝に命じておくべきです。

ルールを守ってトラブルが起きたならルールを変えよ

マニュアル(技術標準や作業標準等規程)に従った作業をしたのに、品質不良などのトラブルが発生することがあります。こんな時、担当者を一方的に「叱る」ことはできません。マニュアルに従った作業をしたとしても、当事者のスキルが不足していたり、マニュアルが想定していない環境の変化があったり、マニュアルの内容が不足していたり、誤っていることがあるからです。
トラブルの再発防止には、マニュアルの見直しが有効です。出来るだけ速やかに、マニュアル、つまりルールを変えることが必要です。
現場では、トラブルが発生する前にも、似たようなことが起きていることが多くあります。担当者は「ルールがない」、「ルールが実情に合っていない」ことを認識していながら、仕事を続けていたということです。このような状態に気付かない、気づいていても放置していたとしていたら、これはリーダーの責任であり、「叱られる」べきはリーダーでしょう。
ルールが、実態に合っていない、不足していると気づいたとき即刻改定することが大切です。ルールが「実態と合っていない」、「不適切である」と報告することは部下の責任ですが、改定の責任は上司にあります。実際には、担当者がルールを改定案を作成することになるのでしょうが、ルールを管理する責任は上司にあります。

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まとめ

部下がトラブルを起こしたとき、リーダーは適切な叱り方やアクションを取ることが必要です。それは、以下のようなポイントです。
1)トラブルの人的原因が、「誤り」か「嘘」なのかを区別して叱る
2)ルールを破ったことを叱る
3)ルールを守ってのトラブルならルールを変える
トラブルの直接原因となった当事者に対して、いきなり「叱る」前に、これらのことを考慮しておくことが、トラブルの再発防止や部下の成長に繋がる「叱り方」になります。

参考記事:同じ失敗を繰り返す人は、失敗をエピソード記憶にして再発防止をすること

ミスの多い人、ミスが多い職場の「ミス対策」は、3段階の行動原理に沿ってすること

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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