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「エリート社員」をつくっても「エリートコース」はつくるな!

 
エリートコースのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「エリート社員」をつくっても「エリートコース」はつくるな!

 

「エリートコース」は、実在するの?

「彼は、エリートコースを歩んで、いずれ役員になる」
「殻が、あの部署に行くということは、エリートコースから外れたことだ」
社内での噂話です。実際に社内や役所に「エリート」と言われる人も「エリートコース」も制度とし存在しません。しかし、現実には、
「本社管理部門の部長になると、役員になる」
「地方の長を務めたあと、本庁に戻って出世するキャリア官僚」
など、あたかもエリートコースが制度として存在しているかのようです。日本の大企業、官僚の世界では、結果として同じようなキャリアの人が幹部やトップになることが多く、あたかもエリートコースがあるかのような印象を持ちます。

将来会社など組織のリーダーになるようなエリート人材に関して、2つのポイントがあります。
1)「エリート」を育てることは、組織にとって重要
2)しかし「エリートコース」をつくってはいけない
若い時から会社や国家の発展を考え行動するエリート社員やエリート官僚を育てることは、組織にとって重要なことです。しかし、「エリートコース」が意図したものでないにせよ出来てしまうことは、組織の停滞や非常時に脆い体質になるなどの弊害が生まれ易く、避けるべきことです。
企業人として、長く「エリート」いわれる人材やその周りの人々を見てきた経験から、上記ポイントを述べます。

 

「エリート」とは

エリートという言葉は、一般的に
「選ばれた者(選良とも表記される)、優れた者、指導的な立場にある者」
等々、多義的に使われています。イデオロギー的な意味合いをもって語られるときもあれば、ただ単に優れているという意味合いをもって語られるときもあります。
古くから、数々のエリート論がありますが、この記事では、企業などの組織において、「優れた人、指導的立場の人」のことを「エリート」と呼ぶことにします。
エリートと対になる「ノーブレスオブリージュ(選ばれし者の責務)」というフランス語を語源とする言葉があります。「特権的な地位には相応の義務が伴う」という考え方を表す言葉です。この言葉には、階級制度や貴族社会の正当化であると批判する意見もあります。

エリートとは、ノーブレスオブリージュとセットで育成されるべきものだと思います。私の考える「エリート」とは、
個人としての行動や責任より、組織に対する行動や責任の方が大きい人
です。責任の重さは、地位や状況により変わりますが、
「誰かのために行動する」
ことが、エリートの基本だと考えます。家族のため、企業のため、社会のために行動することが、自分のためより優先できるかです。自分中心の考え方が主流になり、親が子供に
「自分のためになるから勉強しなさい」
と言います。会社でも
「自分のためにもなるから、仕事を頑張ってください」
などと言われます。しかし、「自分のために頑張る」のは、結構難しいことです。自分だけのためなら、「今のままでもいい」とつい思いがちです。
エリートとは、常に「他人のために頑張る人」です。だから、会社や社会をリードできる人材になれるのだと思います。



「エリート」を育てることは、組織にとって重要

将来会社を引っ張っていくエリートを育てるには、早いうちからリーダーを任せることです。
任せるグループは、人数が多くても少なくてもかまいません。
「今利益を上げている部署」「注目されているところ」「赤字部署、問題部署」
かも知れません。利益を上げている部署をより伸ばす、長年お荷物だった部署が、リーダーの配転を機に花形部署に変身するなど成功体験もあれば、うまくいかない経験もあるでしょう。重要なのは、リーダーとしての経験を積み、「誰かのために行動する」意識と責任感を持つようになることが「エリート」育成になります。

私が、会社に入って6年目位でしたか、仕事の失敗から組織の人間関係が壊れ東京本社の専務に説明に行った帰りのことです。夜も遅くなり
「千葉まで帰るなら、俺の車を使え」
そう言って、専務専用の運転手付きの車を出してくれました。自分は、タクシーで帰るとのこと。恐縮しながら、後部座席にポツンと一人座りました。無言でしばらく走っていると、専属の運転手から声を掛けられました。
「若いのに専務と話をなさるなんて、きっと偉くなられるのでしょうね。どうか、この会社を良くしてくださいね」
この言葉にハッとしました。これまで自分のことだけを考えていたことに気付き、急に恥ずかしく思えました。何十年も前の話で専務の言葉はすっかり忘れましたが、この運転手さんの言葉は、今でもハッキリ覚えています。

 

「エリートコース」をつくってはいけない

一流と言われる大学を卒業し、伝統的な大企業や中央官僚になり、力のある部署で順調キャリアを積んでいく人がいます。まさに「エリートコース」を歩んでいく人達です。能力も高く、また人と接するのも上手な人が多いようです。「生え抜き」と言われる挫折知らずの順調な人達です。このまま順調にいけば、やがて会社の幹部や高級官僚になるのでしょう。

ところが、市場や社会の状況は変化しています。時には、予期せぬ災害や事件、事故が起きます。その時、「エリートコース」を歩んできた人の中には、意外なほど脆い人がいます。エリートコースを歩むということは、「平時における最適人間」を育成しているとも言えます。

数年前、勤務していた会社で品質不正問題が発覚し、社会的にも収益的にも大きなダメージを受けた事件がありました。会社として前例のないことばかりです。うろたえる「生え抜き幹部」に代わり、力を発揮したのは、生産現場や営業経験の長かった人々でした。失ったJISやISO認証を取り戻したのは、品質管理の専門家ではなく、生産現場出身者。顧客の信頼を取り戻すのに活躍したのは、営業の前線に長くいた人々です。彼らは、「面子をつぶされた時」の認証機関の扱い、「怒ったとき」の顧客の行動と扱いを素早く理解する柔軟性を持っていました。

陸軍士官学校や海軍兵学校の年次と成績順で決めた旧日本軍の指揮官が、先の大戦においてトンチンカンな作戦を連発したことは、エリートコース重視の弊害をよく示しています。一方、米軍は、エリートコースから外れていたミニッツパットンをそれぞれ海軍や陸軍総指揮官にして活躍させています。米軍は、平時人事と戦時人事とを使い分けていました。

日経新聞などには、大企業の部課長や役員人事が載ります。エリートコースといわれるような部署の課長や部長に就任すると、祝いの電報や品が会社や自宅に届きます。最近は、だいぶ減ったようですが、このような慣習は、本人も周囲の人々に誤解を生みます。残念ながら、周囲からチヤホヤされて自分を見失い、大きな失敗をしてしまった人を沢山知っています。

よく勘違いするのは、「経営企画にいたから経営に強いだろう」「システム部にいたからDXに強いだろう」と思うことです。そこの部署に所属しても、その分野において他社や世間で通用する専門家であるかどうか分かりません。エリートコースを歩んでいる人の多くが、ジェネラリスト志向で、専門性があまり高くないようです。システム会社で出世する人々は、いかに早くコードを書かない立場になるかを競っています。エリートコースを歩んでも、そのコースの専門性は全く持ち合わせていない人もいます。

主要なキャリアコースをたどった人が、会社のリーダーになるような「エリートコース」をつくり固定化してはダメです。エリートとしての自覚を持った人は必要ですが、その人々のキャリアには多様性が必要です。それが、非常時や変革期における会社の強さを生みだします。


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まとめ

将来会社など組織のリーダーになるようなエリート人材に関して、2つのポイントは、
1)「エリート」を育てることは、組織にとって重要
2)しかし「エリートコース」をつくってはいけない
ということ。若い時から会社や国家の発展を考え行動するエリート社員やエリート官僚を育てることは、組織にとって重要です。しかし、「エリートコース」が意図したものでないにせよ出来てしまうことは、組織の停滞や非常時に脆い体質になるなどの弊害が生まれ易く、避けるべきである。

参考記事:リーダー育成は、部下に「面白い仕事」「やりがいのある仕事」を任せることから

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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