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ペルソナの気持ちになってつくる「共感マップ」の6つの要素と3つの有効活用ポイント

 
共感マップを考える人
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

ペルソナの気持ちになってつくる「共感マップ」の6つの要素と3つの有効活用ポイント

 

共感マップの6つの要素と3つの活用ポイント

「従業員の為と思って、駅前の保育所と提携したのに利用者されない」
「高齢者の住民向けにイベントを企画したのに参加者がいない」
これらは、企業や役所の企画不発に終わった例です。それなりに、事前調査をした上で、企画したのですが、どうも利用者の心理を把握しきれていなかったようです。社員の福利厚生や行政のサービスは、良かれてと思って企画しても、こんな例が沢山あります。
モノやサービスを如何に売るかというマーケティングにおいても最近は、お客様の機能・品質要求や価格要求に加えて、「感動」「共感」「安心」といった心理的な要素を重視する傾向が強まっています。それは、機能・品質や価格において差が少なくなり、心理的な「満足感」の重要度が増しているからです。
モノやサービスが、顧客や社内外の利用者にどのような心理的な満足感を予想する方法の一つに「共感マップ」があります。
共感マップとは、対象とする顧客/利用者(ペルソナ*)を想定し、以下の6つの要素から検討するものです。
1)See: (ぺルソナが)見ていること
2)Hear:聞いていること
3)Say and Do: 言っていること、行っていること
4)Think and Feel: 考えていること、感じていること
5)Pain: 悩みやストレスに感じていること
6)Gain: 幸福に感じていること、あったら嬉しいこと
「共感マップ」は、ネットなどにテンプレートが公開されており、グループでディスカッションしながら埋めていく手法が紹介されています。(参考記事:「共感マップとは?6つの基本要素から作り方まで詳しく解説!」)
共感マップを作成する一番の目的は、想定したペルソナを深掘りすることにより、顧客への理解を深めることです。共感マップを埋めることが、目的にならないことが大切です。
一般に「共感マップ」は、グループで作ることが推奨されていますが、一人でテンプレートを使わずとも、上記6つの要素を検討することで、顧客の心理に迫ることが期待できます。
「共感マップ」を有効に利用するには、3つのポイントがあります。
1)ペルソナに成りきって、多くのことに「気付く」
2)できるだけユーザーから話を聞く
3)アイデアを速やか具体化する
共感マップ作りは、マーケティングでいうところの「ユーザーニーズの把握」に当たります。共感マップを利用して、新しいモノやサービスのアイデアに繋げることが期待できます。

*注)「ペルソナ(persona)」:サービス・商品の典型的なユーザー像のこと。実際にその人物が実在しているかのように、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、特技、価値観、家族構成、生い立ち、休日の過ごし方、ライフスタイル……などリアリティのある詳細な情報を設定します。


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ペルソナに成りきって、多くのことに「気付く」

共感マップの6つの要素を埋めるには、ペルソナの日常生活や仕事ぶりを想定した時、どんな感情になるのか、どんな行動をとるのかを理解することが必要です。
性別や年齢などといった属性を想定するだけでなく、感情や言動・行動にまで詳細に目を向けてイメージを膨らませることが大切です。ペルソナを深くイメージすることで、実際のユーザーを深く理解することに繋がります。
共感マップを作るには、ペルソナである女性/男性、お年寄りや子供に成りきって、気持ちを考えます。自分と異なる性別や職業、年齢のペルソナの気持ちを想像することは、難しい反面、やってみると面白いとも感じるものです。
大人の男性が、女性視線、子供視線を意識するだけで、全く違う世界があることに気付きます。あまり、アイデアとして「まとめる」ことを意識せず、「気づき」を沢山集めることが大切です。
グループで、共感マップを作っていると、男女や年齢の違うメンバーがいて、想像の世界が広がり易いものです。
面白がって、共感マップを作っていくと、そこに「突拍子もない可能性」が出てきます。それも、加えていくと思わぬアイデアのタネになります。
中年のペルソナを設定してグループで共感マップを議論していたとき、
「不倫したい気持ちがあるかも」
「中年といえども、異性にモテたい気持ちがある」
なんて発言があり、大いに盛り上がりました。もし、議論していた企業が、男性用化粧品などを販売したら、面白い企画ができたかも知れませんでした。

 

できるだけユーザーから話を聞く

共感マップを一人であれグループであれ、作成していく中で、作成者(グループメンバー)の固定観念や思い込みが入ります。設定したペルソナに近いユーザーに対して、話を聞くことで、確認や修正をすることをお勧めします。設定したペルソナと全く同じ人物を探すことは難しいでしょうが、同性であったり、同じ年齢層など共通する要素を持つ人にインタビューすることで、共感マップに挙げた内容の確認ができます。共感マップの作成前にインタビューすることも重要ですが、マップ作成後もユーザーから話を聞きたいものです。実際に共感マップに挙げたことを訊ねると、ユーザー本人も気が付かなかったことであったり、全く見当違いだったりすることがあります。
冒頭の例に挙げた利用されない保育所の例は、工場で働く女性社員の為に駅前の保育所と契約して、便宜を図ろうとしたものです。女性社員の「保育所が欲しい」との要望で、保育所と「社員が優先利用できる」という条件で契約したのですが、制度を作って2年経っても利用者ゼロと意外な結果となりました。
事前の検討で、女性社員は、「職場に近い」「費用が安い」「信頼できる保育所」を要望していることが判明していました。そこで、工場に近い駅前にある保育所と交渉し、会社補助で費用は超格安、社員の子供を優先的に入れるという条件で契約しました。対象になる就学前児童をもつ女性社員は、20人ほどいたのですが、結果は利用者ゼロ。後に女性社員にインタビューしてみると、
「保育所まで、子供を連れて通勤電車に乗れない」
「車で保育所まで連れてくるには、周辺に駐車スペースがない」
「親など家族が迎えに行くのに不便」
等々、「なるほど利用しない」と思える理由がいくつも出てきました。ユーザーである女性社員の気持ちを考えたつもりで検討した保育所でしたが、本当の要望を把握しきれていないことが露呈しました。企画を作った時点で、もう少しユーザーである女性従業員の声を聞いていればと言える事例です。

アイデアを速やかに具体化する

共感マップを作成すると、自社(自分)の対象としているユーザーが、どんな人があるか明確になってきます。自社で提供しているモノやサービスが、ユーザーにとって、どんなものかを把握できます。これだけでも、共感マップを作った意義があるかも知れませんが、これで終わりでというのでは、もったいないです。作った共感マップを利用して、次のステップに進むことがより重要です。
共感マップは、現状のモノやサービスの改善、新企画作成に利用できます。共感マップは、マーケティングでいうところの、「ユーザーニーズの把握」に当たります。
また、作った共感マップを確認していくと、共感マップから読み取ったユーザーの気持ちと言動・行動との間に矛盾が生じている場合があるかも知れません。矛盾が生じた部分にこそ真のユーザーのニーズが隠れている可能性があります。矛盾とそれが生じている理由を考えることで、モノやサービスのアイデアに繋がります。
今や商品は、品質・機能、価格の他、「感動」「共感」といったものを含んでいることが求められています。品質、機能、価格は、ユーザー要求が明確で、評価も容易ですが、「感動」「共感」は、精神的なもので、測定も評価も難しいものです。商品や制度などを検討するとき、共感マップの内容を指標として利用することができます。
共感マップから得られた情報で、モノやサービスのアイデアを速やかに具体化し、試してみることです。実際にアイデアを小規模に商品化するか、アイデアだけでもユーザーにぶつけて評価してもらうことが大切です。アイデアを具体的に見える形で提供すると、ユーザーに新たな「気持ち」が生まれます。つまり、共感マップの修正があるはずです。もし、「やりたくないこと」が、「やって楽しいこと」に変われば、その企画は大成功です。
「小さく生んで、大きく育てる」
という言葉がありますが、新しいアイデアを小さく試し、共感マップの内容に修正を加え、更にアイデアを発展させていくサイクルができます。

まとめ

「共感マップ」とは、対象とする顧客/利用者(ペルソナ)を想定し、行動や気持ちなど6つの要素から検討する手法。
「共感マップ」を有効に利用するには、以下のような3つのポイントがあります。
1)ペルソナに成りきって、多くのことに「気付く」
2)できるだけユーザーから話を聞く
3)アイデアを速やか具体化する
共感マップ作りは、マーケティングでいうところの「ユーザーニーズの把握」に当たります。共感マップを利用して、新しいモノやサービスのアイデアに繋げることが期待できます。

参考記事:感性に訴える「共感提供ビジネス」を成功させる3つのポイント

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