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管理職昇格に必要な実務能力の他に「知名度」という発信力の重要性

2021/09/19
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

管理職昇格に必要な実務能力の他に「知名度」という発信力の重要性

 

管理職昇格に必要な、「知名度」という発信力

「なぜあんな人が、管理職になるの?」
「どうやって管理職を選ぶの?」
「どうしたら、昇進・昇格できるの?」

年功序列が批判され、成果主義が叫ばれる中、自社の昇進・昇格について、若い人がこんな疑問を抱きます。

大企業で年功序列をベースとした人事制度を採用している会社において、管理職昇格の仕組みを公開しているところは多くありません。ましてや昇進・昇格を決めた会議の内容を公開することはありません。せいぜい、優しい上司が、昇格者や昇格を逃した者に対してオブラートに包んだような話をするだけです。

長年実際に昇進・昇格決定の現場に立ち会った私の経験から、管理職に昇格に必要と考える3つのポイントをご紹介します。

① 業務を遂行する実務能力があること。(新人を指導できるレベル)
② 社内知名度があること
③ 「高い専門性や実績を持つ人」もしくは、「任せて安心な人」であること
他に、「可もなく不可もなく、好感の持てる人でいる」という訳のわからない昇格例がありますが、絶滅危惧種です。

ここに上げた中の実務能力は、最低限給料をもらうのに必要な条件で、説明を要しません。与えられた仕事が出来なければ、昇格候補者リストのあがることはありえません。新人を指導できるレベルであることが最低条件です。

自己研鑽本やネットでは、管理職昇格には、「高い専門性や実績を持つ」ことに力点が置かれて説明されています。しかし、実際に管理職昇格の実務に携わった者からすると、専門性や実績で昇格する人は、全体の2割程度の少数派です。残り8割の管理職候補から、選ばれるのは、知名度と「任せて安心」と思わせる信頼感や責任感がある人です。

多くの人や見逃す「知名度」は、言い代えると発信力です。SNSが、コミュニケーションで大きな役割を果たす時代、企業内でも同様なことが起きています。日本の企業も単純な年功序列の人事制度から、だんだん成果主義を取り入れていく方向に変化しつつあります。そんな中、実は今も昔も「知名度」は、昇進・昇格の大きな力です。これまで、部下の「知名度」を上げる工夫と指導をして、多くの部下を管理職に昇格させてきました。そんな昇進・昇格の内幕を紹介します。

管理職昇格者の決定手順と候補者の知名度の関係

年功序列をベースとした企業において、管理職昇格者決定手順は、おおよそこんなです。

① 人事担当が、これまでの人事考課を基に所属長に管理職候補者の推薦を依頼する。
② 所属長は、管理職候補者を推薦
③ 昇格検討会(担当役員、所属長、人事等)にて、候補者の中から昇格者を決める
④ 最終的には、昇格検討会の最上位職位の人が、承認する
所属長は、人事のリストに対して、出来るだけ沿う形で多くの推薦者を出しますので、③の会議には、目標昇格者数を上回る人数の候補者が出されます。この中から、昇格者を絞り込むみます。

会社によって言い方はまちまちですが、昇格検討会(会社により構成員も違います)がひらかれます。この参加者に昇格候補者の名前が知られていなければ、勝負になりません。候補者の所属長は、候補のことを良く知っていますが、他の参加者が知らなければ評価しようがありません。

所属長は、自部署の候補者を強く推しますが、他の部署の長からの推しがないと昇格できません。地方の小規模事業所の候補者は、どうしても知名度が低くなるハンデがあります。

昇格候補者になりそうな人に対して、数年前から
「本社〇〇プロジェクトの委員になってくれ」
「技術者として、営業の拡販キャンペーンの同行してくれ」
「この報告書は、〇〇部長と△△常務にも送っておけ」
などと、上司が気を利かすこともがあります。そんな気遣いも知らず本人は、
「業務で忙しいのに、なんでそんなことまで、俺がしなくてはならないのか」
と上司の気持ちを裏切ってはいけません。
良い評判か、悪い評判かは別として、知名度がないと昇格評価のまな板にのりません。

知名度は、言い代えると情報発信力でもあります。管理職になれば、自部署に留まらず、他部署や社外との関係の中で仕事を進めることが、多くなります。知名度を上げておくことは、単に昇格時に有利なだけでなく、仕事をする上で、基本的な財産になる考えるべきです。

今、コミュニケーションの主体が、直接会話だけでなく、メールや資料、社内外とのリモート会議、SNSと多様化しているなか、いろんな形で知名度を上げることができます。日頃から、気にしておいてもいいことです。

参考:人事考課のやり方について、本部ブログ「意味のない人事考課の改革は、...

「高い専門性や実績を持つ人」スペシャリストの管理職昇格

誰もが、高い専門性や実績を認めたら、管理職昇格の確率は極めて高くなります。実績といっても恵まれた仕事に当たったとか、チームが良かったといった面があるかもしれません。しかし、この手の人は、人事にとって昇格させる理由が明確なので、まず問題なく昇格させようとします。

課長クラスであれば、少々人間関係に難があろうと実務能力が飛びぬけていれば、昇格させる価値があると判断することが多いようです。業界トップの技術力をもっているエンジニアや研究者、会社の数字をすべて把握している経理マン、トップクラスの売上を上げる営業マンなど、定量的な評価が容易です。

若くして、昇格する人の大半がこのタイプです。いわゆる「仕事が出来る人」です。課長クラスまでは、この手の「仕事が出来る人」は、昇進・昇格が早いのですが、その後次長や部長へとスムースに昇格できるかどうかは、保証できかねます。それは、日本的なジェネラリスト優位の伝統が幅を利かせるからです。

課長クラス以上になると、自分で仕事をするより、人を使う能力が重要視されます。いわゆる「調整力」なる能力が求められます。

剃刀のようなスペシャリストが、だんだん丸くなって部長や経営幹部になっていくパターンが、これまでの日本企業では多かったようです。

 

「迷う人材」の中から選ばれる「任せて安心な人」の管理職昇格

候補者の2割は、スペシャリストとして当確が出ます。そして、残りの6~7割の候補者は、「迷う人材」です。全員昇格させてもいいし、全員昇格を見送ってもいいとも思えます。検討会で参加者の議論になるのが、この「迷う人材」です。全ての人を昇格させることも据え置くこともできません。空きポジションや社員構成上、目標の人数に絞り込んで昇格させる必要があります。

大抵は、ある候補者に対して、仕事のエピソードなどを付けて、その所属長が推薦します。他部署の所属長が、その候補者を知っていて、同じく推薦してくれたら、昇格の可能性が高まります。この時、候補者の知名度が、ものを言います。

「〇〇君とは、どんな人だっけ」
そう出席者に言われたら、まず昇格の目はありません。しかし、大企業では、そんな場面が珍しくありません。検討会参加者が部長クラスですと、他の部署の候補者と話したことがない人もいます。
「昨年のお客様見学会で司会をしていた奴ですよ」
「そういえば、元気のいいのがいたな」
そんな、上司のフォローを入れて何とか話をつなぐ羽目になります。

良く知られた人

He is well known

「迷う人材」のグループでは、地味に仕事をしていた人が多く、職種も異なるため、候補者を比較しての評価がしにくいものです。職場において実務能力があることが前提ですが、候補者上司が候補者の「任せて安心」をアピールできたら、出席者の昇格賛同が得やすいようです。
「困難な仕事にぶつかって、彼(彼女)は何とかした」
といったことです。

同時多発的にクレームが発生、数か月して問題が沈静化し、皆が忘れかけているころに、
「最後のお客様説明を完了しました。これで全お客様に納得してもらえたことになります。」
そう報告に来たA君がいました。その時、A君に対する信頼「任せて安心」との思いは強くなりました。
調べてみると、A君のの扱う商品は、地味だが不思議と売れ続けています。その後、A君を管理職に推薦しました。

派手ではないが、「任せておくと何とかなる人」がいます。危機に直面して、
「それは俺の責任ではない」
といった言動をとったことがある人物は、まず昇格することはあいません。多くの場合
「その候補者が回りの人の信頼を得れる人材かどうか」
「ことを収める調整力と粘り強さがあるどうか」
で、人物の信頼度を判断する傾向が強いようです。この信頼が、管理職昇格の鍵となります。
スペシャリストは、相撲でいえば、圧倒的な突き押し相撲や投げが得意な力士です。「任せて安心」タイプの人は、いつも寄り切りで勝つ力士です。連勝はしないが、気が付くと8勝して勝ち越しているタイプです。

散々議論しても決まらない時は、会議の最上位者の判断にゆだねられます。ここでも知名度がものを言います。
「最後の残ったA君とB君とCさん。3人のうちだれを昇格させるか。3人を知っている人の意見に従うぞ」
そう最上位者(社長)が発言して、昇格会議が終わった経験が何度もあります。

「可もなく不可もなく」好感の持てる人の管理職昇格

このタイプは、高齢になって、残り1割の候補者の中から、ひょっこり管理職に昇格する人です。昔は、
「定年前に昇格させて、退職金の増やしてやろう」
と言った理由で昇格させることもありました。今は、そんな昇格はないでしょう。しかし、ポストが空いて埋める人材が他にいない、他の社員への励みにするといった目的で昇格させることがあります。

「あの人は、万年平社員と思っていたら、今度昇格したんだって!」
これが、その会社にとって従業員のモチベーションアップとなるか、ダウンとなるかは、その会社の風土によります。

従業員のモチベーションアップを期待するとは、
「コツコツ真面目に仕事をしていれば、いつか報われる」
ということです。ただし、気を付けたいのは、こんな昇格プロセスでも知名度が必要ということです。「知る人ぞ知る」といったマイルドな知名度でもかまいませんが、ある程度の知名度がなければ、昇格事例が従業員のモチベーションアップになりません。
「良く知っている、真面目なあの人が管理職に昇格した」
ことが重要なのです。知らない人がいくら、昇格しても従業員のモチベーションアップにはなりません。

まとめ:管理職昇格は、実力と知名度

年功序列をベースとした人生制度を採用している日本企業は、過去において同期入社大学卒の80%位の人が管理職になっていました。今は、50~60%位でしょうか。これまで、年功序列制度に守られ、大きなミスや失敗をしない限り、大卒なら管理職に昇格できました。世界的な企業競争の中で、年数だけでの管理職昇格がなくなっていく方向です。管理職昇格は実力としての実務遂行能力と知名度が、より重要視されます。実務能力と同じように、知名度(=発信力)を高めることが、昇進・昇格の有利になるばかりか、業務遂行の上でも力となると信じます。

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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