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教科書通りのブレスト4原則(ルール)では、アイデアが出ない3つの理由

2021/12/18
 
ブレストのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

教科書通りのブレスト4原則(ルール)では、アイデアが出ない3つの理由

 

教科書通りのブレストルールは、米国人向け?

人を集めてブレンストーミング(ブレスト)をやり、製品開発や問題解決のアイデアを出そうとしますが、そう簡単にアイデアは出ません。
「なんでもいいから、アイデアを出してください」
そう司会者が呼びかけても皆口を閉ざしています。せいぜい限られた人が、口を開くだけです。私は、そんな光景に何度も遭遇しました。
日本でブレストがうまく機能しない理由が3つあると私は考えています。
1)ブレストルールが、米国人向けだから
2)自分を主役に勝手なアイデアを考えないから
3)現場・現物を見ないから
そもそもブレストは、米国生まれです。話すことが大好きな人達の手法です。日本でブレストがうまくいくときは、話すことに抵抗がない人々が集まったときです。
実際に米国と日本でブレストを経験して気付いたブレストを成功させる方法をご紹介します。

 

4つのブレストルールの他に日本人には「誘導」が必要

ブレストを広く世間に喧伝したのは、米国の著名広告会社バッテン・バートン・ダースティン・アンド・オズボーン(BBDO)の社長を務めたアレックス・オズボーンである。著書『創造力を生かせ』(創元社)の中で「ブレンストーム会議」と称して公開したのがその始まりです。オズボーンがこの「ブレンストーム会議=ブレンストーミング」を初めて実行したのは1939年のことで、戦後これが日本に伝わってきました。

その時のルールが元になり、教科書などで以下のブレスト4原則がルール化しています。
ブレンストーミングの4原則
1)他人のアイデアを批判しない。
2
)突拍子もないアイデア大歓迎。思い切った提案をする。
3
)質よりアイデアの量を目指す。量はやがて質に転換すると心得る。
4
)アイデアを組み合わせる。人のアイデアを改良する。
このルールでブレストを始めるのですが、なかなかアイデアがでません。やっと特定の人がいくつかアイデアを出しても、また沈黙が続きます。司会者が、仕方なく各出席者を指名して何かを言わせる羽目になることがしばしばです。

私は、米国の製造工場に勤務した経験があり、米国人スタッフとブレストをしました。自己PRをしたい気質の人が多いためか、内容は別として、アイデアや妄想がドンドンでます。ブレストの4原則だけで、米国人グループでは、沢山のアイデアを集める会議ができました。
同じテーマを日本でしてみたのですが、うまくアイデアがでません。アイデアを出すどころか、会議そのものが盛り上がりません。その時、自己主張の強くない日本人がブレストをうまくやるには、米国式のルールだけではダメと強く思いました。ブレスト4原則の他に、日本では出席者が発言したくなる雰囲気を作り出すことが必要です。
その一つが、だれかに先人を切って話をしてもらうか、例としての用意したアイデアを披露することなどの「誘導」です。日本人の気質として、誰かが何かを言い出さないと始まらない雰囲気を持っています。これを突破することが、ブレストの活性化になります。

ブレストの4原則に「突拍子もないアイデア大歓迎」とありますか、日本人にはこれができません。むしろ、
「突拍子もない体験談大歓迎」
と言った方が、日本人にはいいかも知れません。日本人の特性でしょうか、何かテーマがあるとそれに固執してしまいがちです。その結果、アイデアの数も少なく、平凡な内容となりがちです。
日本のある工場で「生産性を上げるにはどうするか」をテーマにブレストをしたことがありました。ところが、さっぱりアイデアがでません。生産性向上の方策に行き詰ってブレストをしたのですから、アイデアが出ないのは当然かもしれません。
「なんでもいいから、最近経験した話でもしてください」
と投げかけると、年配社員からこんな話がでました。
「先週の日曜日にデパートに行きました。来年小学校に入る孫に『ここで一番いいランドセルを買ってやる』と言った手前、一つ8万円もするのを買う羽目になりました」
会議そっちのけで皆、興味津々です。
「どんなランドセル」
「色は、デザインは」
そのうちに、年配社員がため息をついてこう言いました。
「ランドセルを背負うのは孫。選んで決めるのは親。金を出すのは婆さんだった」
するとある若手が発言しました。
「内の工場も同じです。機械を使うのは俺たち。選んで決めるのは課長。金を出すのは部長」
急に問題の本質が見えてきたような気がしました。
「使う俺たちが選んで決めた機械ではない」
がキーワードになって、改善のアイデアが沢山でてきました。

 

自分を主役に勝手なアイデアを考えてブレスト活性化

アイデアを考えるとき、自分を主役にすることです。自分が、お客さんの一人、工場長だったら、金持ちだったらと想像して、「あったら便利なモノや仕組み」を考えることです。米国人と仕事をして思うのですが、彼ら彼女らは勝手に自分をヒーローやヒロインにすることが好きです。
「俺が社長なら、この事務所を倍に広げてこうする」
なんて発想です。そして、すぐに「全米一」つまり「世界一」を目指しての話をしだします。
自分を主役にして、「『世界一』を目指すにはどうするか」というアイデアを出す姿勢が、必要です。人の意見を聞く前に、各自が勝手にどんどんアイデアを探しておくことです。集まって会議をする前や会議中に「一人ブレスト」をすることをお勧めします。

ブレストの4原則のうち、「アイデアを組み合わせることや改良すること」は、日本人の得意とするところです。自分を主役に勝手なアイデアが出た後は、どんどん進むことが期待できます。

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現場・現物を見るとアイデアが生まれる

ブレストが盛り上がらない一つの原因は、現場・現物を見ていないことにあります。ブレスト時に自社や他社の製品があると考えが浮かびます。また、一通りアイデアが出た後現場にいくと別の発想が浮かびます。

トム・ケリー著「発想する会社!」という本に、究極のブレンストーミング(第4章)が紹介されています。
よりよいブレンストーミングのためには以下の7つの秘訣。
1) 焦点を明確にする
2)
遊び心のあるルール
3)
アイデアを数える
4)
力を蓄積し、ジャンプする
5)
場所は記憶を呼び覚ます
6)
精神の筋肉をストレッチする
7)
身体を使う
トム・ケリーも米国人ですから、これも活発に話すことが当たり前の人たちへのアドバイスです。それでも、5~6)項にある「場所は記憶を呼び覚ます」、「精神の筋肉をストレッチする」、「身体を使う」は、「現場・現物を見る」と同じことを言っています。

参考までに同書に載っているブレストを台無しにする6つの落とし穴を紹介します。
1) 上司が最初に発言する
2)
全員に必ず発言が回ってくる
3)
エキスパート以外立入禁止
4)
社外で行う
5)
ばかげたものを否定する
6)
すべてを書き写す


発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法

まとめ

日本でブレストがうまく機能しない理由が3つあります。
1)ブレストルールが、米国人向けだから
2)自分を主役に勝手なアイデアを考えないから
3)現場・現物を見ないから
そもそもブレストは、米国生まれです。話すことが大好きな人達の手法です。日本でもブレストがうまくいくときは、話すことに抵抗感がない人々が集まったときです。
ブレストの4原則に加え、いくつかの日本人向けのルールを追加することで、ブレストが活性化します。

参考記事:「決められない」非効率な会議の原因は、日本人の「話し合い絶対主義」の影響

会議の効率化は、「なんのための会議」かを仕分けすることから

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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