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経営のリスクマネジメントとは、リスクとリターンのバランスをとること

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

経営のリスクマネジメントとは、リスクとリターンのバランスをとること

 

リスクマネジメントで考えるべき3つのシナリオ

「転職してうまくいくのか?」
「新規事業に投資して、もし失敗したらどうするんだ!」
「事業を拡大して、生産が追いつくのか?」
人生や事業経営の転機で、決断する場面に遭遇したとき「心配事」が浮かびます。これが、「リスク」です。心配事であるリスクを予想し、これを減らすことやあらかじめ対策をとることを「リスクマネジメント」と呼びます。

経営の教科書やコンサルタントは、体系的なリスクマネジメント手法を解説し、アドバイスします。例えば、想定されるリスクを分解し、起きる予想確率と起きた時の影響度を掛け算して数値化する手法などです。実際にこれをやってみるとわかるのですが、結局起きる確率も影響度も人が「予想」することであり、手間をかけてこれらの手法を実施してもスッキリしません。そもそも「リスク」を正確に予想できたら、「リスク」ではなくなります。すべてのリスクを予想し、すべてのリスクへの対策をとることは、膨大なコストがかかります。結局「何もしないこと」が、最もリスクが少ないことになります。

リスクとリターン(利益)は、一体ものです。リターンを得たければ、リスクを受け入れる必要があります。結婚や転職など人生の転機、新規事業や投資など企業活動におけるリスクマネジメントは、それをすることで予想される3つのシナリオを考え備えることです。

1)最悪のシナリオは何か
2)現時点で最も起こりそうなシナリオは何か
3)すべてがうまくいったときのシナリオは何か

リスクマネジメントとは、漠然とリスクにおびえることではありません。
この3つのシナリオを想定し、対処法を持っていることで、リスクとリターンのバランスの取れたリスクマネジメントになります。
この記事は、人生の転機、経営の転機を前に、どう対処すべきか、どう覚悟を決めるかである「リスクマネジメント」を紹介します。

 

最悪のシナリオは何か

新規事業を始めて、
「売り上げが伸びなかったら、事業を撤退したらどの程度の損失がでるのか?」
「最悪のシナリオで予想される損失が許容できるか、できないか」
これらを判断する必要があります。損失が許容できないのであれば、保険を掛けるか、新規事業計画を見直すかが必要です。

個人のリスクを回避する手段に生命保険があります。もし、病気になったら、死亡したらお金がでる仕組みです。「最悪のシナリオ」を考え、そのリスク(病気や死亡)を許容できるか冷静に考えると、「入院1日7千円最大180日」のために高い保険料を支払い続けることが正しいのか判断できます。

生命保険好きの日本人の個々人に対して、組織となると昔から最悪のシナリオを考えるのが苦手なようです。先の戦争では、結局敗戦まで、最悪のシナリオを考え、手を打つことをしませんでした。「敗戦」を議論すること自体、タブーとされていました。戦後になっても役人の体質はそう変わっていません。人口減少、年金問題、経済の停滞、防衛問題どれも一応心配をしているように見えますが、最悪のシナリオを議論することは避けているようです。

会社の経営でも、とことん悪いシナリオを想定する前に
「そこまで考える必要はないだろう」
「そこまで考えること自体が、問題」
「最悪にならないようにすべき」
との意識があります。「逆説の日本史」の著者井沢元彦氏は、これを「日本人の言霊信仰」と呼んでいます。「悪いことを口にするとそうなるので、議論しない」と述べています。福島第2原発では、巨大津波や非常電源喪失のシナリオはありませんでした。日本国憲法には、国の存亡にかかわるような非常事態の条項はありません。
せめて企業経営では、最悪のシナリオを描くことをタブーとすることは避けたものです。

 

現時点で最も起こりそうなシナリオは何か

多くの教科書やネットで紹介されている「リスクマネジメント」は、このケースでの説明です。これは、いわば「平常時のリスク」です。予想可能な様々なリスクをどう対処するかの話です。

起こりそうなシナリオで考えられるリスクのマネジメントは、その筋の専門家がいます。
1)市場環境変化
2)コンプライアンス問題の発生
3)自然災害
4)設備事故
5)犯罪被害 等々
これらリスクとなりうる要因に対して、KY(危険予知)をしていきます。このとき、リスクとリターンとの関係が重要になります。リスク対応を過大にするとリターンがなくなります。

 

すべてがうまくいったときのシナリオは何か

うまくいったときも実はリスクが存在します。販売を開始して、急にブームとなり品不足。たちまち受注を断って信頼を失った例があります。

最近の日本企業は、新技術で新商品を出しても供給力不足などその後が続かず、中国企業においしいところを持っていかれる例が多いようです。液晶パネル、リチウムイオン電池等々です。この現象を「技術が汎用化し、日本企業の差別化要素ななくなった」と説明するエコノミストが多いようです。しかし。実は日本企業が「うまくいったときのシナリオ」を描いていなかったことが原因ではないかと思う例も多くありそうです。

1941年12月日本海軍は、ハワイの真珠湾を航空機により奇襲攻撃し、すべてうまくいき大きな戦果を上げました。ところが、その後の計画がなく、結局初戦の勝利を全く活かすこともなく敗戦へ進んでいったことを真珠湾攻撃に参加した故源田実氏が悔やんでいます。始めに敗れた相手は、その商品や戦術を模倣し、大きな力を蓄えて反撃してきます。米軍は航空戦法の有効性を認識し、中国は成功した商品や商法を拡大して模倣し成功しています。これらは、「すべてがうまくいったシナリオ」は、リスクを含んでいることを示している例です。

&
今までの経営書には書いていない 新しい経営の教科書
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まとめ

人生の転機、起業、新規事業や投資などの企業活動を決断する際、3つのシナリオを考え、それぞれのリスクにたいするマネジメントをすることが大切です。
1)最悪のシナリオは何か
2)現時点で最も起こりそうなシナリオは何か
3)すべてがうまくいったときのシナリオは何か
漠然とリスクに怯えていてはいけません。何かをするということは、リスクとリターンのバランスです。このバランスをうまくとることこそ、リスクマネジメントです。

参考記事:「ガバナンスとコンプライアンスの違い」とガバナンスの目的

 

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