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若手部下の様々な「キャリアビジョン」と上司として対応方法

 
女性部会に指示をする上司のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

若手部下の様々なキャリアビジョンと上司として対応方法

 

若手部下のキャリアビジョンを知らない上司は要注意

「こんな仕事、俺の将来に何の役に立つの?」
「出世したいわけでもないのに、『この仕事は君の将来のため』と言われても困る」
あなたの若手部下は、こうした不満を抱えているかもしれません。これは、上司が部下のキャリアビジョンを知らないまま指示を出すことで起きる、典型的な反発のパターンです。

そもそも「キャリアビジョン」とは何か

キャリアビジョンとは、「自分がどんな働き方をしたいか」「どんな職業人生を歩みたいか」といった将来像のことです。
採用試験のエントリーシートや面接では、多くの会社がキャリアビジョンを尋ねます。しかし本心では、
「この会社をキャリアステップにしたい」
「とりあえず安定した収入が得られればいい」
と思っていても、そのままは書けません。結局、「貴社の事業を通して自己実現をしたい」「社会に役立つ仕事がしたい」といった無難な文章に落ち着きます(この手の作文は生成AIが得意とするところで、最近では採用側もあまり信用していません)。
一方、配属先の上司は、部下が採用時にどんなビジョンを語っていたかを知りませんし、今どんなビジョンを持っているかも分かりません。結局「今の若い子はこう考えているはずだ」という思い込みで指示を出し、冒頭のような反発を生んでしまうのです。

部下のキャリアビジョンは3つのタイプに分かれる

若手社員のキャリアビジョンは、大きく次の3タイプに分類できます。
1. 明確なビジョンを持ち、表に出しているタイプ:
夢を明言する、あるいは出世への努力が見える部下。ビジョンに合った指示・指導が必要です。
2.明確なビジョンを持っているが、表に出していないタイプ:
独立や転職など言いにくい志向を持つ部下。優秀な人材が多く、本音が分からなくても「君の夢を支援したい」という姿勢が重要です。
3. 明確なビジョンがないタイプ:
本人は「特にない」と言っていても、ワークライフバランス志向や安定志向など、根底には何かしらの価値観があります。寄り添って一緒にビジョンを作る姿勢が必要です。
この記事では、様々な若手のタイプを私の経験と合わせてご紹介します。

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参考:パソナキャリアビジョンとは何か?」

タイプ1:ビジョンを表に出している部下

このタイプは、上司にとって最も分かりやすい部下です。本人が方向性を示しているため、指示や指導を本人の望んでいる方向と合わせ易いのが特徴です。代表的な5つのパターンを紹介します。

1)社内で出世したい
社内昇進を目指し、評価されることを重視するタイプ。行動が分かりやすく、努力が表に出ます。昇進に必要な経験(企画力・調整力・管理力を伸ばす仕事)を計画的に与え、評価基準と期待役割を具体的に伝えます。ただし出世欲が強すぎると周囲との摩擦が生まれるため、協働性を欠く場合は早めの軌道修正が必要です。

2)社内外で専門家として認められたい
技術や専門性を磨きたい志向が強く、若手に多い優秀なタイプです。専門領域を深掘りする業務を与え、資格取得や外部セミナー参加を支援し、専門性を活かせるプロジェクトにアサインします。ただし専門性に固執しすぎると孤立する危険があり、ゼネラリスト経験を押しつけると反発を招くので注意が必要です。

3)とにかく稼ぎたい
収入を最優先するタイプで、成果報酬型(歩合制)の職種に多い傾向があります。(昔は「進んで残業・休日出勤を申し出る人」がいましたが、最近は絶滅したようです。)このタイプには、数字で評価される仕事を中心に任せ、インセンティブ制度を丁寧に説明して、成果を出せる環境を整えることです。上司からすると「使い勝手のいい部下」ですが、過剰労働などのコンプライアンス違反にならないよう気を配ること。本人の金銭目的が強すぎて、短期利益を優先しすぎる場合は早めの軌道修正が必要です。

4)プロとして独立したい
スポーツ選手・音楽家・法律家など、専門技能を武器に個人で勝負したい志向を持ち、会社の仕事への関心が薄い場合があります。専門性を磨ける業務を中心に任せ、独立後の信用につながる成果を出す重要性を伝え、専門領域での成功体験を積ませること。ただし最低限の責務を果たさない場合は配置転換などを考える必要があります。

私は、社内野球部でプロ野球選手を目指していた部下を持ったことがあります。午前中だけ、事務的な仕事を任せていました。仕事といっても、書類の整理など雑用ばかりで戦力としては、全く期待していません。実業団の選手は、入社当初は大抵プロを目指しているものですが、数年するうちに本人も含め限界が見えてきます。ある時、ピッチャーだったK君に、
「野球を辞めたら、営業でもやるか」
と言ったがありました。その時K君は、プロ野球選手への未練があったようで、冗談と受け止めていました。しかし、数年後、野球の引退を考え始めていたのでしょうか、
「なぜ、私が営業に向いていると思ったのですか」
と聞いてきたのでビックリしました。そこで、
「君の人当たりの良さが、営業に向いているかなと思った」
と伝えました。本当は、発言当時どんな気持ちで発言したかなど覚えていませんでしたが。彼は、30歳を過ぎて野球を辞め、本当に営業部に行き活躍しています。
これは、この手のタイプは、夢が必ずしも実現しないときプランBをどう考えるかを偶然にも示唆していた例です。

5)社会貢献・公共性を重視する
社会課題の解決に関心が強く、いわゆる「SDGs世代」に多い理念志向のタイプです。社会性の高いプロジェクトに関わらせ、会社の事業が社会にどう貢献しているかを説明し、社会性と事業性の両立を学ばせること。
「そんな考えは理想に過ぎない」
と頭ごなしに否定すると大きな摩擦が生まれます。理念に偏りすぎて現実とのギャップがある場合は、実務の重要性を丁寧に伝えることが大切です。
かつて部下のMさんを社内の石炭火力発電所建設プロジェクトに選んだことがありました。彼は、環境問題、特にCO2排出の多い石炭火力に拒絶反応を示しました。そこでプロジェクトリーダーから、計画中の高効率石炭火力の説明をさせ、問題は既存の低効率設備であること、将来は石炭とアンモニアの混焼に移行する計画であることを伝え、納得の上で配置転換をしたことがあります。

タイプ2:ビジョンはあるが表に出さない部下

このタイプは、独立や転職など言いにくい志向を持つ部下です。優秀な人材が多く、本音を隠しています。将来を期待した社員が、突然辞めるといったことが起きるのがこのタイプです。以下のようなビジョンを持った者がいます。

1)独立したい
経営者志向が強く、副業解禁で増加しているタイプです。もし、独立したいとのビジョンが分かれば、経営視点を学べる業務(採算管理や企画業務)を経験させるなど、独立志向を否定せず在籍中の成果を重視させます。独立準備を優先しすぎて業務が疎かになる場合は、早めの対応が必要です。
かつて、ある部下に薄々独立志向のあることに気付きました。そこで、意図的に新規事業プロジェクトのメンバーにしました。しばらくして、
「君の夢に繋がったか?」
と尋ねました。
「独立は、諦めましたが、エキサイティングな仕事ができて満足」
との返事が返ってきました。その後も彼には、次々と新規プロジェクトの仕事を与えられています。

2)キャリアを積んで転職したい
自分の市場価値を高めたいという志向で、若手に非常に多いタイプです。市場価値が上がる経験(プロジェクトリードや専門スキル向上)を与え、転職前提を敵視せず在籍中の成果を最大化させます。転職活動に集中しすぎて業務が疎かになる場合は、役割の再定義が必要になることもあります。
ある若手社員に母校訪問のリクルート活動を指示したところ、後日訪問先の大学教授から
「事務的で熱意が感じられなかったが、何かあったのか」
と連絡を受け、ハッとさせられたことがあります。彼は将来の転職・独立を考えていたようで、そのことに社内の誰も気づいていませんでした。
今は多くの若手社員が転職サイトに登録しており、条件のいい話があればいつでも転職、というのが日常茶飯事です。逆に転職サイトから「こんな人材がいます」と紹介を受け、自社よりよほど名の知れた「一流企業」の社員が転職を希望していることに驚かされることもあります。

タイプ3:明確なビジョンがない部下

本人は「特にない」と言っていても、根底には何かしらの価値観があります。寄り添って一緒にビジョンを作る姿勢が必要です。以下にいくつかの根底の価値観のタイプをご紹介します。

1)ワークライフバランスを最優先する
生活の充実を重視する、若手に非常に多いタイプです。バランスといっても、人により仕事と私生活の配分が違います。昭和世代からみると、このタイプは、「要するに楽をしたいだけ」と映りがちです。
上司として配慮すべきは、時間の配分量ではなく、働いた成果が私生活とうまくバランスしているかです。理想的には、短時間働いて成果を出し、充実した私生活を過ごすということです。
上司が成果を中心に評価することを部下が理解すると、期せずして仕事の効率化を進める頼もしい存在になります。

2)社会貢献・公共性を重視する(方向性は未定)
社会性は重視するものの、具体的な方向性がまだないタイプです。社会性のある業務を経験させ、価値観を整理して方向性を一緒に作り、理念と実務の両立を学ばせることです。
気を付けたいのは、このタイプには、自分が会社員でありながら、「会社、特に大企業は悪だ」「世間は、金持ち優先」といった偏見を持っている人がいることです。
私は、そんな部下に労働組合の役職をさせたことがありました。当初、引き受けてくれた組合の委員長まで、
「社会や会社への偏見が強すぎて、扱いにくい」
とこぼしていました。その後、組合幹部との付き合いの中で、会社における自分の位置を見つけていったようで、会社と一般従業員との間のコミュニケーションを取るという役目を見つけています。

3)安定した環境で長く働きたい
変化を好まない、安定志向の強いタイプです。悪く言えば、
「会社にぶら下がっているだけ」
といったところです。安定した業務を中心に任せ、段階的な成長機会を与え、安定志向を尊重しつつ必要な変化を少しずつ経験させることです。変化対応ができない場合は役割固定を検討し、適性に合わない業務は避ける必要があります。

4)好きなことを仕事にしたい
興味や情熱を中心にキャリアを選ぶ、若手に非常に多いタイプです。「好きなこと」は、熱心に取り組みますが、そうでなければ、仕事を拒否することさえあります。
興味領域に関連する業務があり、好きな領域で成果を出す経験を積ませることができれば理想的ですが、そうはいかないのが会社です。
「会社の仕事は遊びではない」
と頭ごなしに否定せず、組織の役割を丁寧に説明することです。また、丁寧に興味と組織貢献の接点を上司と部下が一緒になって探すことも必要です。
会社を辞めた理由として
「この仕事は、自分にあっていない」
と要するに「好きでない」といったことをあげる何人もの若手を相手にしたことがあります。詳しく聞いてみると、多くは自分の職場の仕事しか知らず、他の部署にその人の望む仕事があることに驚いた者がいました。また、
「そんなに○○がやりたいなら新規事業のプロジェクトを申請したら」
というと
「そんな制度があるのですか」
と、これまたコミュニケーション不足を露呈した例があります。

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まとめ

1)上司は部下のキャリアビジョンを正しく把握すること。「部下はこう思っているはず」という思い込みで決めつけないこと。
2)キャリアビジョンを知るには、日頃のコミュニケーションが重要。ワンオンワン面談も有効ですが、日常の会話で価値観を理解することが大切です。
3)
部下のキャリアビジョンに合った指示・指導を行うこと。ビジョンと指示がズレると、反発や離職につながります。
4)
キャリアビジョンを決めるのは部下自身。ただし明確なビジョンがない部下には、寄り添って一緒に作る姿勢が必要です。

参考記事:転職決断をする前に考えて、「職種がイヤ」なのか、「仕事(タスク)がイヤ」なのか

今どきの部下に「成果を出させる」、上司の3つの教育指導ポイント

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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