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「維新」「改革」「リセット」が大好きな日本人の『改革幻想』から脱する方法

 
選挙演説をする候補者のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「維新」「改革」「リセット」が大好きな日本人の『改革幻想』から脱する方法

 

「維新」「改革」「リセット」が大好きな日本人の『改革幻想』

日本では、古くから「維新」「改革」「リセット」といった言葉が政治や行政の場面で頻繁に使われてきました。明治維新は世界史的にも稀な成功例として語り継がれています。しかし、それ以降の大規模な改革は、戦後の進駐軍による改革を除くと、大きな成果を上げた例が、あまり見あたりません。その結果、「黒船来航や敗戦・占領といった外圧がなければ、日本は改革できない」という見方まで出ています。
選挙のたびに「行政改革」「教育改革」「政治改革」など数々の改革が公約として掲げられてきました。党名にも「維新の会」「改革連合」などが使われています。(恥ずかしながら、このブログのタイトルにも「改革」が入っていますが。)
ところが、改革案は、実行されないまま終わるか、実行されても骨抜きで十分な効果が出ないまま時間が過ぎるといったことが繰り返されてきました。
なぜ日本では改革が「幻想」に終わりやすいのか。
なぜ言葉だけが大きくなり、実体が伴わないのか。
そして、どうすれば改革を幻想で終わらせず、現実の成果につなげられるのか。
この記事では、日本社会に根付く「改革幻想」の構造を整理し、企業改革との比較を通じて、幻想から脱するためのポイントを以下の3つで考えます。
1)日本の政治・行政における改革幻想の歴史的背景と文化的背景
2)企業改革と政治・行政改革との違い
3)企業改革が幻想に終わらないための実践的ポイントと実例
これらを通して、改革幻想を脱するための要点をご紹介し、企業/職場の改革に参考になればと考えます。

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財務省亡国論

日本の政治・行政における「改革幻想」

歴史的に「改革」という言葉が過剰に使用されてきた

日本の政治や行政において「改革」という言葉が頻繁に使われる背景には、歴史的な要因と文化的な要因が複雑に絡み合っています。まず、日本では危機のたびに「大きな言葉」が求められる傾向があります。戦前の「新体制運動」、戦中の「国体改革」、戦後の「行政改革」「構造改革」「教育改革」など、時代が変わるたびに新しい改革スローガンが掲げられてきました。これらの言葉は、国民に危機感を共有させ、変革への期待を高める役割を果たします。しかし、スローガンが大きいほど、実体が伴わないということでもありました。改革が「言葉の競争」になり、実行の段階で熱量が失われることが少なくありません。
また、「改革」という言葉が好んで使われる理由として、明治維新の成功体験が「改革神話」となっているのかも知れません。明治維新は、中央集権国家の構築、近代軍の整備、教育制度の整備、産業化など、国家のほぼ全領域を短期間で変革した稀有な成功例です。この成功体験が、「日本は大改革で一気に変われる」という神話を残しました。ところが、現代は、国家に専制的ともいうべき絶対的な権力がなく、また利害関係者が多く社会構造も複雑化しています。そのため、明治維新のような急進的改革がそのまま通用するわけではありません。それでもなお、政治家や行政は「維新」「改革」「リセット」といった言葉を使い続けます。国民もまたその言葉に期待を寄せるため、改革幻想が繰り返される結果となっています。

制度の文化が変革を吸収する

日本の行政文化は「漸進主義」が強く、新しい制度を導入しても旧来の文化が吸収してしまう特性があります。例えば、教育改革では新しいカリキュラムや制度が導入されても、現場の運営方法や教員の働き方が変わりません。結果として改革が形骸化することが多くあります。行政改革でも、委員会制度や新しい組織構造を導入しても、実際の意思決定プロセスは従来のままであることが少なくありません。制度を変えても文化が変わらないため、改革が実質的な成果につながらないのです。

改革の目的が曖昧なまま始まる

また、改革の目的が曖昧なまま始まることも、改革幻想を生む大きな要因です。「改革」という言葉は非常に大きく、何を変えるのか、どこまで変えるのかが不明確なまま議論が進むことが多くあります。目的が曖昧であるため、手段も曖昧になり、成果も曖昧になります。結果として、「改革をした」という事実だけが残り、実際の成果が伴わないまま時間が過ぎていくのです。

利害関係者が多く、妥協の産物になりやすい

政治・行政・教育は利害関係者が多く、調整コストが高いため、急激な改革が実行困難です。教育改革では教員、保護者、自治体、文科省など多くの利害関係者が存在し、行政改革では官僚、自治体、業界団体などが複雑に絡み合います。この場合の利害関係は、金銭的なものだけではありません。金銭的な利害関係なら、条件次第で解決の方法があるのですが、思想的な利害もあります。思想的な利害とは、それぞれ譲れない考え方を持っているということです。(例えば、「農水省の農家・JA絶対主義」「財務省の財政均衡主義」など)
金銭的、思想的な利害の調整ができないまま改革を進めると、妥協の産物となり、改革の実質が薄れてしまいます。「行政改革」といっても組織の名前を変えただけなどといった例が数多くあります。

企業改革と政治・行政改革との共通点と違い

共通点(改革が難しくなる構造は同じ)

企業改革においても、政治・行政改革と同じようなことが起きます。例えば、企業改革でも「会社の危機」を強く訴えます。赤字、倒産リスク、競争力の低下といった危機を前面に出し、改革の必要性が強調されます。危機が大きいほど、改革スローガンが強くなり、組織全体が変革に向けて動き出します。「危機」が曖昧であったり、社内で度々「危機」という言葉に使われたりすると、これに社員が慣れっこになってしまいます。こんな状態での改革は形骸化しやすく、実質的な成果につながらないことにないがちです。
また、企業改革も政治・行政改革同様、利害関係者が実行を困難にします。株主、従業員、各部署、取引先、労働組合など、多くの利害関係者が存在し、改革に対して異なる意見を持っています。関係者の利害調整が不十分なまま改革を進めると、妥協の産物となり、改革の実質が薄れてしまいます。もっとひどいと、改革に対してあからさまなサボタージュさえ起きます。
改革が、単なるスローガンになる問題は、企業も政治・行政も同じです。政治家が、「変革」「リセット」「再生」などの言葉を公約として掲げても、中身がない、実行性ないことはよくあることです。建前として、「改革」「リセット」と言いながら、多くの日本企業の組織風土が保守的で、実行性のある改革が出来ないのは、政治・行政と同じです。

違い(企業改革が成功する余地がある理由)

しかし、企業改革には政治・行政改革とは異なる特徴もあります。企業はトップダウンが可能であり、社長の権限が強いため、意思決定が早く、改革を迅速に進めることができます。政治のように合意形成が必須ではないため、強力なリーダーシップが発揮されれば、改革が成功する可能性が高まります。また、企業は危機が数値で可視化されやすく、改革の必要性が明確になります。赤字、倒産リスク、株価など、危機が具体的な数値で示されるため、組織全体が改革に向けて動きやすくなります。
さらに、改革の成果が数値で測れるため、効果を評価しやすいということがあります。売上、利益、コスト削減など、具体的な数値で成果を測ることができるため、改革の成功・失敗を明確に判断できます。政治・行政改革では成果が数値化しにくいため、改革が成功したのか失敗したのか判断が難しいことがありますが、企業改革ではこの点が明確です。

企業改革の成功/失敗の事例

企業改革の成功例としては、日産のカルロス・ゴーンによる改革、JALの稲盛和夫による改革、アップルのスティーブ・ジョブズによる改革などが挙げられます。これらの改革は、強力なリーダーシップ、危機の共有、権限集中、選択と集中などが揃ったことで成功しました。一方、企業改革の失敗例としては、東芝の不正会計問題後の改革、シャープの経営危機時の改革、ソニーの2000年代の度重なる構造改革などが挙げられます。これらの改革は、旧来文化の抵抗、利害調整の不備、改革の方向性の曖昧さなどが原因で失敗しました。

企業改革が「改革幻想」に終わらないためのポイント

目的(目標)を数値化する

企業改革を成功させるためには、改革幻想に陥らないためのポイントを押さえる必要があります。
まず、改革の目的を数値化することが重要です。抽象的な改革ではなく、具体的な目標を設定し、売上、利益、コスト削減、市場シェアなど、数値で成果を測ることができるようにします。数値化することで、改革の進捗が明確になり、幻想が減り、現実的な改革が進みます。
また、改革の範囲を明確にすることも重要です。全領域を変える改革は失敗しやすいため、「一点突破」から始めることがコツです。小さな成功を積み上げることで、組織全体が改革に向けて動き出し、改革の実質が伴うようになります。
目的(目標)を定めた改革は、スローガンではなく、期限、担当者、成果指標を設定し、改革の進捗を管理する仕組みが必要です。つまり、プロジェクト化です。スローガンだけでは、改革は形骸化します。政治・行政改革に比べ、企業のほうがはるかにプロジェクト化しやすい環境をもっています。

利害関係者との調整

改革をするためには、利害関係者との調整を先に行うことが重要です。いわゆる「根回し」が、効果を挙げます。改革案を発表する前に利害調整を行い、実行段階での抵抗を減らすことで、改革がスムーズに進みます。政治・行政改革でも本来必要なプロセスですが、企業改革より、利害関係者がより複雑に絡み合っていて難しいものです。その点、企業では、事前説明の順番を間違わなければ、スムーズにいきます。例えば、会社のトップや実力、現場のベテラン社員といったキーマンの理解を得ることが大切です。
事前調整で重要なコツがあります。私の実際の経験ですが、どんな改革に対しても、総論賛成各論反対の立場の人(部署)が大半ということです。このため、総論は受け入れるが、自分(自部署)については、例外として欲しいとの要望がでます。政治・行政で、改革案が骨抜きになるのは、大抵このパターンです。この時こそ、
「これは、社長の方針ですから」
「これは、国として進めていることですから」
と社長や国の権威を利用することが有効になります。各論反対者でも、皆が同じように不利益が生じることには反発が少ないものです。ところが、ある人(部署)だけが、利益を得るとなると強い抵抗を受けます。ただし、トップ自身が改革の抵抗勢力の場合、この手法は利きません。何がなんでも、トップに対して「根回し」をすることが重要であるということが、私自身の教訓となっています。

改革のリスクを受け止める覚悟を持つ

改革には、リスクが伴います。リスクを事前に分析し、受け止める覚悟を持つことが重要です。リストラ、事業撤退、権限集中などの痛みを避けるばかりでは、改革は失敗します。リスクを「改革の一部」として計画の中に入れ、受け止める覚悟を持つことで、改革が成功する可能性が高まります。いわゆるプランAとプランBを用意するといったことです。
また、改革成功の最も重要なことは、徹底して危機感を組織員全員で共有することです。JALの改革に取り組んだ稲盛氏が、まず感じたのは危機感が、各社員でバラバラだったことだと言います。そこで、何よりも優先して取り組んだのが、危機感を共有するということを含めた「意識改革」であったと言います。JALに対して会社更生法に適用され、実質倒産状態なのに、「自分とは関係ない」と思っている社員が多いことに驚いたと語っています。
危機感を持ち、「なぜ変わる必要があるのか」を全社員が共有し、危機感を組織全体で共有することが必要です。政治・行政改革でも重要なポイントですが、国や各組織が巨大で危機感の共有ができづらいということがあります。

ある会社の「意識改革」例

私自身が役員として改革を実行した経験を紹介します。私は、社員1200人ほどの試験・分析会社の役員をしていたとき、コロナ禍もあって極度の受注不振に陥ったことがあります。その際、営業改革として「全員営業」を目指しました。具体的には、毎朝リモートで全国7か所にあった分析拠点の所長、各部署の長をリモート会議に召集し、15分ほどで各部署と営業や顧客とのやり取りと対応状況を報告させました。
「他の部署のことなど関係ない話」
「時間のムダ」
との声も多かったのですが、強引に実行しました。すると、他の部署の事例を参考にして新規顧客開拓をする者が出てきたり、他の部署を応援して納期を守ろうとしたりといったことがおき、結果的に受注量を増やすことができました。(単純にコロナ禍の終焉もあったのですが。)必ずしも全員が営業マン化したわけではありませんが、少なくとも多くのメンバーが「営業感覚」を持ち、自分として売上増に貢献できることはないかという視点から、行動するようになったのは事実です。これは、運よくリモート会議という手段が普及したこと、強引なリーダーシップの賜物でした。現在は、全員の会議からチャット活用にスタイルを変えていますが、改革の成果は確実に残っています。この経験から、改革を成功させるためには、強力なリーダーシップ、意識の共有化の重要性を実感しました。

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まとめ

日本は、維新、改革、リセットといった言葉が大好きな国です。しかし、言葉だけでは改革は進みません。改革幻想を脱し、実際に成果を上げるには、改革を実質的な仕組みとして計画し、実行し続けることが必要です。そして、何よりトップの強い意志が重要です。改革は一度で終わるものではなく、継続的な取り組みも必要です。

参考記事:進まない組織の業務改善・改革、「問題意識」と「当事者意識」の不足が原因?

会社の「改革」を進める3つのポイントは、「危機意識」「短期成果」「企業文化」

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