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会社の「改革」を進める3つのポイントは、「危機意識」「短期成果」「企業文化」

2021/11/17
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

会社の「改革」を進める3つのポイントは、「危機意識」「短期成果」「企業文化」

 

会社の「改革」を進める「危機意識」「短期成果」「企業文化」

「働き方改革」
「組織改革」
「デジタル改革(DX)」
職場では、こんな風にいろいろな「改革」が叫ばれています。しかし、そう簡単に「改革」は進みません。「改革」とは、現状を大きく変えることです。ところが、人は誰しも「現状維持バイアス」を持っているためそう簡単に現状のやり方を変えようとはしません。たとえトップの指示で改革を進めても、社員がその気にならず「イヤイヤ指示に従っている」状況では、成果はあがりません。
各種改革を成功させるためには、3つの重要なポイントがあります。
1)強い危機意識
2)短期的成果
3)企業(組織)文化の形成
「改革」として「何をするか」、「どう進めるか」について様々な手法があります。改革チームをつくる、トップダウンで行う、全社員を改革の会議に参加させるなどです。どんな方法であれ、この3つポイントを押さえることが改革の成功と継続には必要です。
ジョン・P・コッターはその著書「企業変革力」で、企業改革には8つの段階があると書いています。上記3つもコッターの8つに含まれています。コッターの改革は、組織内にチームを作って行うやり方を書いています。実際には、会社ごとにいろいろな方法で改革が行われます。実際に会社の改革を進めた経験から、私は上記3つのポイントがどんな方法にも共通する改革成功の鍵だと考えます。

特に「強い危機意識」を全員が共有することは極めて重要です。改革が成功するかどうかは、「危機意識」が持てるかどかにかかっていると言っても過言ではありません。危機意識を持てるかどうかは、企業文化によります。「常に危機意識を持つ」という企業文化を作ることが、どんな改革においても最終の目標であると考えます。

参考までに、コッターの「変革の8段階」を紹介します。
① 危機意識を高める
② 変革推進のためのチームを作る
③ ビジョンと計画を作る
④ 変革のビジョンを周知する
⑤ 従業員の自発を促す
⑥ 短期的成果を実現する
⑦ 更なる変革を進める
⑧ 変革を企業文化に定着させる
ネット記事:「ジョン・コッターの8段階のプロセス: 企業変革は正しい手順で進めよ」から抜粋


企業変革力

すべての改革は、強い「危機意識」から始まる

「このままでは、会社が潰れる!そんな」
そんな強い危機意識が、会社(組織)全体にあるかどうかが「改革」を始めるには絶対に必要です。社長だけ、一部の社員だけが「危機意識」を持っていても、組織は全く変わりません。「危機感」が「現状を変えたくない」という気持ちを上回ったとき「改革」は進みます。

ある大企業で、社員に危機感が生まれない現実を経験した例を紹介します。この製造会社は、長年経営が思わしくなく、社員も赤字に転落することを心配していました。ある年、ついに赤字に転落しました。ところが、何も起きません。次の年も赤字でしたが、社員には赤字の怖さはなくなっていました。ボーナスが少々減ったのですが、「世間も同じ」と危機感がありません。そのうちに会社の株価が下がり、ついに額面割れです。それでも従業員にとって何か変化があるわけでもありません。やがて、経営陣から「7、5,3」の発表がありました。部長7%、課長5%、一般3%の給与カットです。従業員に不満がではじめましたが、それでも自分が解雇されるとの危機感はありません。ところが、そのうちに会社が他社に買収されるとの噂が流れ、退職者を募集する、全く自社と縁のない会社に出向させられるとの話が出てくるようになって、はじめて全社員に危機感が生まれてきたのです。社員の危機感のなさは、もう「企業文化」といってもいいものだと失望させられました。もちろん経営者は、この間大変な危機感をもって会社をなんとか変えようと努力をしていました。ただし、この危機感を持ったのは経営が悪化した後、社員全員が危機意識をもったのは、自分がリストラや倒産といった状況になってからでした。

会社が存続しているということは、それまで「うまく行った」ことを積み重ねているということです。だから「これからも何とかなる」と考え、危機感を抱かないものです。会社の状況、組織の状況を客観的に見ることが重要です。売上高の推移、利益の推移、これらの海外も含めた他社比較などです。会社の危機をデータで訴え、このままではどうなるかを、他社の実例を上げて社員に知らせることが、危機意識を生むのに有効です。会社全体で危機感を共有することができれば、改革は前に進みます。



短期的成果

改革は、時間がかかるものですが、改革としてやっていることの成果が見えなければ、人の気持ちは離れていきます。改革を始めて半年から1年で何らかの成果を出すことが重要です。そのために、改革の計画段階で、最終目標の他に短期的な目標を立て実行することです。

製造部門の生産性向上を目標とした改革を進めたことがあります。最終的には、設備の更新等大掛かりな対策が必要です。しかし、その実行には時間がかかります。まず、職場の3S(整理、整頓、清掃)から始めました。ただし、3Sの目標は、職場を美しくすることではなく、効率的にすることです。とにかく真剣に3か月間整理・整頓をしていくと目に見えて職場がきれいになり、社員の改革参加意識が高まります。その間生産性のデータを取ると不思議に生産性が向上しているものです。その都度データを皆で確認することで、改革の有効性を信じるようになります。

 

企業(組織)文化の形成

改革をすることで、何かの危機を乗り越えたとしても一過性で、しばらくすると元に戻り易いものです。危機を乗り越えてプラスになる成功体験まで改革を進めると企業文化になります。

何度も不祥事を繰り返す会社があります。製品検査違反などコンプライアンス問題が発生し、その後懸命に努力して危機を乗り越えます。その時は、問題にたいする改革を実行しますが、数年たつとまた問題を発生させる会社があります。どうも、そんな会社は、危機を乗り越えるだけ、つまり元に戻すだけの改革だけで、危機を乗り越えるために行った改革が発展して、以前より良くなった「成功体験」まで高められていないようです。
企業文化とは、その企業のもつ「成功体験」が基になっています。「企業文化とは、成功の置き土産」と言った人がいます。「そのやり方でうまくいく」ということが社員に浸透して企業文化になっているのです。改革をしてもとに戻っただけでは、それが企業文化になることはありません。

理想は、「常に危機意識をもっている」という企業文化を持つことです。トヨタは、危機意識をもつとことが企業文化になっているようで、たとえ黒字であっても「会社存亡の危機」があるかのごとく社員は動いています。もう15年ぐらい前になるでしょうか、トヨタの開発部門に行ったとき
「当社のライバルは、他のメーカーだけではありません」
と開発部門の社員が言っていました。
「カーシェアリングですか? それとも新しい電気自動車メーカーですか?」
と尋ねると
「Googleですよ」
と答えが返ってきました。
「我々には、『将来どの自動車メーカーもGoogleの傘下になる』という『危機感』があるのです」
といったトヨタ社員の言葉が今も頭に残っています。

 

まとめ

会社の改革は、誰しも「現状維持バイアス」を持っているため簡単には進みません。
各種改革を成功させるためには、3つの重要なポイントがあります。
1)強い危機意識
2)短期的成果
3)企業(組織)文化の形成
「改革」として何をするか、どう進めるかについて様々な手法がありますが、この3つポイントを押さえることで改革の成功・継続が可能になります。そして、改革の究極の目標は、「常に危機意識をもつ企業文化」を持つことです。

参考記事:業務改革・改善が何度も失敗する理由は、その会社の過去(歴史)をみれば分かる

企業文化がつくられる3つの要素と企業文化を変える方法

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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