「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

「なるはや」(「なるべく早く」)は、「遅くなっても仕方がない」と同じ意味

 
「なるはや」で依頼する人のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「なるはや」(「なるべく早く」)は、「遅くなっても仕方がない」と同じ意味

 

「なるはや」(「なるべく早く」)は、「遅くてなっても仕方がない」と同じ意味

「なるべく早く終わらせること」
上司が部下にこんな言葉で指示を出しても早くはなりません。
役所の窓口での処理待ち、長い時間待たされているとき、担当者に問いただして返ってきた返事が、
「なるべく早く処理いたします」
であったら諦めて待つしかありません。相手は、「これ以上早くなりません」というメッセージを送っているのです。
こんな「なるべく早く」、これを略して「なるはや」と呼びます。英語では、ASPA(as soon as possible)と言ったところでしょうか。この言葉を使ったところで、気休めになる程度の効果しかありません。
そもそも、「なるはや」という言葉を使うとき、その背景には「遅くてなっても仕方がない」という気持ちがあります。誰かに「なるはや」で依頼したときは、相手に対して「『遅くても仕方がありません』と思っています」とのメッセージを送っているのと同じです。
「なるはや」を使うときには、その背景があります。それは、
1)期限が曖昧
2)依頼事項の遂行が困難
3)やる意思がない
といったことです。これらの背景を理解せずに、後になって
「あなたは、『なるべく早くやります』といったのにやっていないではないですか」
と問い詰めても、得るものはありません。むしろ、相手は「やっかいな人」と嫌悪感を抱くのが落ちです。
「なるはや」を付けて依頼するときは、「遅くなっても仕方ありません」とのメッセージが含まれています。依頼された方が、「なるはや」で答えたら、「早くできません」とのメッセージが入っています。「なるはや」を有効にしたければ、具体的に期限や物事の内容を確認する応答が必要です。

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期限が曖昧

相手に依頼する際「なるはや」を使うのは、何かをしてもらうのに期限が曖昧なためです。気分的には早い方が楽だが、「どうしても」と言う期限がないといったときです。
そこには、「相手の都合を考慮する」といった遠慮が働いていることもあります。
宅急便の成功は、「なるはや」を明確に「翌日配達」としたことです。実際に翌日にどうしても配達されなければならない品ばかりではありません。しかし、明確な期限を設定することで、依頼者も配送者にもメリハリがついて、スピーディな業務が行われています。(最近は、配送員の不足や再配送の問題で、「相手の都合を考慮する」必要が生まれていますが。)
国会で、閣僚がよく「なるはや」を使っています。例えば、
「その件は、早急に対処します」
と答弁しているのは、典型的な例です。そんな答弁をした事案が、その後スピーディに進んだためしがありません。閣僚が、「なるはや」を使って答弁をするときは、「政府に具体的なスケジュールがありません」と言っていると理解すべきでしょう。

依頼事項の遂行が困難

依頼すること、依頼されたことを行うのに困難が伴う場合、「なるはや」を使うことがあります。
事故を起こした原発の廃炉作業について問われた東京電力の幹部が、記者会見の場で
「なるべく早く燃料デブリの取り出し作業に入りたい」
と言っていました。記者がすかさず、
「具体的にいつ頃になるのですか」
と突っ込むと、
2040年頃の廃炉完了を目指して、なるべく早く燃料デブリの取り出し作業に入ります」
と繰り返しました。(参考:東京電力「廃炉に向けたロードマップ」
この場合の「なるはや」は、「遂行が困難なので、期限の設定は勘弁してくれ」とのメッセージでしょう。記者側も分かっていますので、これ以上のやり取りはありませんでした。
原発の廃炉ほど困難な仕事でなくても、日常的に「難しい仕事なので遅れても仕方ない」との意味で、「なるはや」を付けた受け答えをしていることがあります。「なぜ難しいのか」「困難が原因は何か」といったことをやり取りできれば、有効なやり取りになる可能性があります。

やる意思がない

「なるべく早く」
と言いながら依頼する側も、依頼された側も全くペースを変えないことがしばしばあります。この場合の「なるはや」は、挨拶言葉と同じです。本気で相手に急がせたいなら、
「いつまでにできますか?」
と問うはずです。あるいは、
「それは、本当にできる見込みがあるのですか?」
との疑問がでるはずです。結局、「いつかできればいい」、あるいは、「出来なくてもいい」という気持ちがあるとき、挨拶替わりに「なるはや」を使っていることがあります。
国会での閣僚の答弁や、企業が不祥事を起こした時の記者会見で使われる「なるはや」は、一種の免罪符言葉になっています。「一生懸命やっています」というポーズを伝えることが、「なるはや」の役目になっています。
「なるべく早く措置します」
と言われたとき、そもそも「措置をする意思があるのか?」、「措置を早くする意思があるのか?」を考えてみることです。後になって、
「何もしていないではないですか」
と問い詰めても後の祭りです。

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まとめ

「なるはや」(「なるべく早く」)を使うときには、その背景があります。それは、
1)期限が曖昧
2)依頼事項の遂行が困難
3)やる意思がない
といったことです。
「なるはや」を付けて依頼するときは、「遅くなっても仕方ありません」とのメッセージが含まれています。依頼された方が、「なるはや」で答えたら、「早くできません」とのメッセージが入っています。「なるはや」を有効にしたければ、具体的に期限や物事の内容を確認する応答が必要です。

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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