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「忖度」(そんたく)という日本的な習慣の持つ3つの危険性

 
上司に忖度する部下
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「忖度」(そんたく)という日本的な習慣の持つ危険性

 

「忖度」のメリットと過剰な「忖度」のデメリット

しばしば社会的な問題となるような役人や政治家の汚職、企業の不祥事は、一概に当事者の直接的な私利私欲で起きるわけではありません。むしろ、組織や上司に対する忖度(そんたく)が原因と思われることが結構あります。
例えば、2017年の発覚した「森友学園問題」では、国有地の売却に関連して政治家や官僚の介入が疑われました。更に文部科学省の文書改ざんや隠蔽などの不正操作が行われ、問題を大きくしました。問題に関わった官僚達は、自分自身の利益の為ではなく、「問題を大きくしたくない」気持ちから、文書の改ざんや隠蔽をしたようです。これは、役人の組織や政治家に対する過剰な忖度と考えることができます。マスコミによっては、安倍政権からの指示を疑う報道が多かったようですが、真相は役人の過剰な忖度による行為であったと考える方が妥当と思えます。
そもそも忖度は、相手の気持ちや意向を察して行動することであり、必ずしも悪いことではありません。むしろ日本らしい「おもてなし」の原点でもあります。忖度することのメリットは、
1)コミュニケーションの円滑化
忖度は相手の気持ちを考慮する行動であり、これによってコミュニケーションが円滑に進みます。相手を尊重し、信頼関係を築く助けになります。
2)集団の調和
忖度が行き渡ることで、集団内での調和が促進されます。個人の感情や立場を尊重することで、対立や緊張を回避することができます。
3)社会規範への適合
忖度はしばしば社会規範や慣習に基づくものであり、これに従うことで個人や組織が社会全体と調和して適切に機能することが期待されます。

このように、忖度には社会や人間関係を円滑に進める上でメリットがあります。しかし、冒頭の例にあるように、過剰な忖度は、不正な行為を生み出すこともあります。
過剰な「忖度」は、3つの大きな危険性を持っています。
1)意思疎通の妨げる
2)創造力の低下
3)倫理的価値観の崩壊
これらが起きると組織の活力を奪い、ときとしてコンプライアンス問題や犯罪にまで発展します。
この記事では、過剰な忖度の危険性について考えます。

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意思疎通の妨げる

忖度が行き過ぎると、相手の本音や欲求を正確に理解することが難しくなり、意思疎通が不十分になることがあります。本音と建前の間にズレが大きくなる可能性があります。このため、本当の意図や問題が見えにくくなり、誤解や課題の解決が難しくなることがあります。
ある従業員が1万人を超すような伝統ある大企業の取締役会後、
「社長が、この提案は『面白い』と言っていたけど、どういう意味だろう」
出席者の一人が、同席した人に尋ねました。
「そりゃ、この提案を進めてもいいということだろう」
提案者は、そう言いました。ところが、古株の役員は、
「社長が、あんな言い方をするときは、『もっと検討しろ』ということだ」
と釘を刺しました。この社長の言うには、社長が
「よーく考えたか」
と言うときは、「NOのサイン」
「その通り」
といった時は、「YESのサイン」
であるというのです。提案者は、納得できず
「直接社長の意思を確認してください!」
と司会役の総務部長に詰め寄ったことがありました。(実は、この提案者は、私のことでしたが。)
出席者が、社長に対して過度な忖度をするために、会議が終わってから、毎回「会議の決定内容をもう一度確認する」なんてバカなことをしていた例です。
過剰な忖度があると、コミュニケーションが難しくなります。相手の本音や要望を正確に理解することが難しく、誤解や誤った判断が生じやすくなります。

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創造力の低下

忖度が強調される環境では、個々の個性や異なる意見が抑制され易くなります。保守的な上司に忖度することで、イノベーションの阻害要因となることがあります。アイデアや新しい視点を提案するにあたって、上司や同僚の期待や評価を気にし過ぎて、従来のパターンにとらわれ、創造力を発揮できなくなります。
また、集団や組織全体で過剰な忖度が行われると、意思決定の遅れや課題の解決が出来なくなる可能性があります。本音では、
「こんなやり方では問題解決にならない」
と思いつつ
「上司や組織のやり方に従う」
というような建前で行動するといったことが起きます。チームメンバーが本音を言いにくくなり、問題が表面化せずに残ることがあります。

倫理的価値観の崩壊

過剰な忖度の最も怖いところは、「倫理的価値観の崩壊」です。過剰な忖度は、時として法律よりも組織を守る方が大切、規則より上司の立場が大切といったことが重視されるようなことを起こします。過剰な忖度が、不正行為を正当化してしまうことが起きます。
倫理的価値観が崩壊した例をいくつか挙げてみます。
1)不正行為の隠蔽
正当な疑いや告発が無視され、不正行為が隠蔽される可能性があります。企業でしばしば発覚する検査データの改ざんや不正、不良品の隠蔽などにこの例が見られます。不正に社員が気付いても、上司や組織に忖度して、見逃すようなことです。
2)組織力の低下
組織全体に忖度が横行すると、不正や腐敗から組織力が低下します。実務能力ではなく、忖度がうまい人材が昇進し、能力や実績のある人のやる気を奪うことにもなります。
3)ハラスメントやいじめ過度な忖度が存在すると特定の個人やグループが優遇され、他の人々が不当に排除されることがあります。これが職場で発生すると、ハラスメントやいじめのリスクが高まります。
4)悪徳なリーダーシップの継続
リーダーが組織内で不正行為を行っている場合、部下が過剰な忖度を示すことで、その悪徳なリーダーシップが続く可能性があります。部下がリーダーに対して批判的でなくなり、問題行動に対する抵抗が弱まることが考えられます。犯罪グループや暴力団のボスは、忖度する部下を集めています。

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まとめ

忖度(そんたく)は、相手の気持ちや意向を察して行動することであり、日本らしい「おもてなし」の原点でもあります。
しかし、過剰な「忖度」は、3つの大きな危険性を持っています。
1)意思疎通の妨げる
2)創造力の低下
3)倫理的価値観の崩壊
これらが起きると組織の活力を奪い、ときとしてコンプライアンス問題や犯罪にまで発展する可能性があり注意を要します。

参考記事:取締役会が形骸化してしまうのは、「空気」という暗黙のルールがあるから

「社長の右腕」を持つことの3つのメリットと「右腕」の選び方

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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