「都合の悪いとき」につくウソの4つのパターンとコンプライアンス違反の例
「都合の悪いとき」につくウソの4つのパターン
「都合の悪いとき」につくウソの4つのパターン
「芸能人のスキャンダルが週刊誌に載る」
「企業が、検査データのねつ造を発表」
こんなことが起きたとき、当事者は、なんらかのコメントを出すことが求められます。こんな重大な「都合の悪いこと」でなくても、遅刻、約束のすっぽかし等々、「都合の悪いこと」を追及されて、言い訳する場面は日常茶飯事です。
そんなとき、人はウソをつくことで、都合の悪いことを正当化したり、ダメージを最小化したりしようとすることがあります。このウソがうまく通って(ウソをついた側からみて)、事態が収拾することもありますが、ウソがバレて状況が益々悪化してしまうリスクもあります。
都合の悪い事態に陥った時、その場を逃れようと、後先を考えずにウソをつきたくなります。そのウソがバレそうになって、更にウソをつくこともあります。ウソをつくことが、良いか悪いかは別として、バレると事態が悪化するリスクがあることを理解しておく必要があります。
一方、相手の都合の悪い事態を追及する立場なら、相手がウソをつくことは、承知の上で対応します。ウソを暴き更に相手を追い詰めることもあれば、ウソを承知で騙されてあげることで、事態が収拾することもあります。
数年前私は、勤務していた会社で、検査データのねつ造など組織としての不正を経験しました。更に旅費精算の不正など社員の不祥事があり、これを調査したことがあります。この中で、気づいたのは、「都合が悪いこと」が起きると、当事者はウソをつくことで、誤魔化したり、ダメージの最小化を図ろうとしたがることです。これによって、真相がわかりにくくなり、調査に大きな労力がかかることになりました。問題を起こした当事者は、名探偵コナンや刑事コロンボの犯人のように、素直に犯行を認めてくれたら楽ですが、様々なウソをつき混乱が生まれます。
不正の調査をする中で、「都合の悪いとき」につくウソには、パターンがあることに気付きました。「都合の悪いとき」につくウソの代表的な4つのパターンをご紹介します。
1)「状況の変化」と言い訳する
2)相手の「誤解」にすり替える
3)「知らなかった」を言い訳にする
4)ウソがばれたら、ウソをつかざるを得なかった「事情」をねつ造する
ウソには、他愛のないものから、犯罪と言われるようなものまであります。しかし、その言い逃れのパターンは似ています。
ウソを追及する立場であれ、追及される立場であれ、このパターンを知っておくと状況を冷静に判断し対応することができます。
「状況の変化」と言い訳する
「不測の事態が起きて、約束が守れなかった」
こんな言い訳をするパターンです。例えば、集合時間に遅れてきて、
「車できたのですが、道路が渋滞していました」
などと言い訳することです。実際には、渋滞などなかったにも関わらず、ウソをつくことでその場を逃れようとします。この手のウソは、「本当にこの時間渋滞があったか」などと、調べればわかります。言い訳する相手が、寛容でなければ、ウソをついても無駄です。
かつて勤務していた工場で、排ガスデータ不正事件がありました。工場の排ガス(亜硫酸ガス)の濃度を市に伝送していたのですが、時としてデータが送られていないことがあり不正を疑われたのです。当事者は、
「伝送装置が、たまたま故障していました」
と不可抗力を主張しました。伝送装置が故障することは、起きうることです。ところが、調べる側は、回数が多いことに疑問を抱き、担当者を追及してウソがバレました。それでも、
「データが送られていないからといって、排ガス濃度が規制値を超えているとは限らない」
とまた言い訳をしたのですが、燃料の使用量など他のデータを調べて、不正が明らかになり、重い行政処分を受けることになりました。
相手の「誤解」にすり替える
相手がウソだと断じてきたとき、それは「誤解」だとすり替えるパターンです。
約束の時間に遅れてきて、
「集合時間を間違って覚えていました」
といったことです。
企業の不祥事では、検査データに誤りがあるとき
「データをねつ造したのでは?」
と追及された企業が、
「これは、誤記です。」
と返すような事例です。データが間違っているのは事実ですが、意図的かそうでないかは、その後の責任が全く違います。実際、データの誤りは、100%ねつ造されたものでなく、単純な誤記なども含まれている例がありますが、表現のし方で人々が受ける印象が全く異なります。
「データのねつ造」というより、「データの不適切な扱い」と言った方が、マイルドになりますが、不正をしたことの本質は、何ら変わらないことを肝に命じておくことです。
「知らなかった」を言い訳にする
これは、「知らなかった」とウソをついて逃げるパターンです。
例えば、仕事の進捗が遅れたとき
「役所の手続きが、こんなに複雑で時間がかかるとは知りませんでした。」
などと言い訳することです。実際には、十分予想できることであっても、「知らなかったこと」にしてしまうのです。
いろいろなトラブルが起きた後、責任者が
「私自身、知らなかったことでした。」
とインタビューに答えていることがあります。本当に「知らなかった」かどうか怪しいものです。大抵のことは、事前に気配を感じているものです。
このウソは、「自分の無能さをさらけ出して逃げてしまっている」とも言えます。責任者は、「知らなかったこと」自体が罪であり、その道のプロとして恥ずかしいウソと思いませんか。
ウソをつかざるを得なかった「事情」をねつ造する
ウソがばれたとき、ウソを使わざるを得なかった「大きな理由」をねつ造するパターンです。
例えば、不正をして発覚した社員が、
「儲け至上主義の会社から圧力があった」
と告白するようなパターンです。ありそうな話であり、マスコミや役所からすると、「好ましい理由」です。「会社の圧力」と言っておけば、責任者も曖昧な感じですみます。関係者は、これはウソであるとわかっていても、当事者側にとっても、追及する側にとってもうまく収まるので、よく使われる理由です。他にも「社会の格差」「人手不足」「性的差別」等々を都合の悪いこと、ウソをついた理由にしておけば、もっともらしく感じられます。これらの「原因」がウソであることは、その後も同様な企業不正が再発することで、証明されている気がします。
企業の不祥事や事件の真の原因は、そう簡単ではありません。企業の不祥事を調べた経験では、真の原因がわからないことの方が多いように思います。「会社として圧力をかけたわけでもない」「個人として、不正することが得になることもない」「会社や個人に恨みがあるわけではない」のに、不祥事が起きるのです。
ちなみに、不正の3要素として、「動機」「機会」「正当化」があると言われています。実際に企業の不正を調べた経験では、「機会」(誰も見てないなど)、「正当化」(誰しもやっているなど)は、明確にわかるものですが、「動機」(個人的利益など)は、いくら調べてもわからないことが多くありました。金銭的な動機は、わかり易いにですが、本当に金に困っての不祥事は多くありません。結局、ウソとわかっていても、もっともらしい動機を作って、話を終わらせていることが多いと考えています。(やや主観的なことは、ご容赦ください。)
まとめ
「都合の悪いとき」につくウソの代表的な4つのパターンがあります。
1)「状況の変化」と言い訳する
2)相手の「誤解」にすり替える
3)「知らなかった」を言い訳にする
4)ウソがばれたら、ウソをつかざるを得なかった「事情」をねつ造する
ウソには、他愛のないものから、犯罪と言われるようなものまでありますが、そのパターンは似ています。
ウソを追及する立場であれ、追及される立場であれ、このパターンを知っておくと状況を冷静に判断し対応することができます。