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「コンプライアンス違反」の防止対策と発生時の対応:コンプラ研修対策(その2)

2022/10/06
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「コンプライアンス違反」の防止対策と発生時の対応:コンプラ研修対策(その2)

 

「コンプライアンス違反」の防止対策と発生時の対応

「コンプライアンス研修」を形骸化させない4つのポイント前回記事で紹介しました。この記事では、前回に続いて、
①「コンプライアンス違反」の防止対策
②「コンプライアンス違反」発生時の対応
について紹介します。

そもそもコンプライアンス違反が起きる原因は、主に3つあると前回紹介しました。
1)二重規範:公な建前」に対して、「この位は許される」と思う「本音」の基準など
2)集団浅慮:タコツボ化した組織において、集団で非合理的な判断をする
3)動機、機会、正当化で構成される「不正のトライアングル」:不正は、動機があり不正出来る機会(環境)があり、正当化(言い訳)がそろったときに行われる
これらの要因をできるだけ低減もしくは消すことが、コンプライアンス違反の防止対策になります。

また、不幸にしてコンプライアンス違反が発生した時のために、違反の防止対策に加え、違反発生時の対応策を準備しておくことが重要です。これまで、公表されたコンプライアンス違反の事例をみると、問題が発覚した後の対応に誤りや遅れにより、コンプライアンス違反をより重大化し強い社会的制裁を受けています。

不正のトライアングルの図

Reason for signal violation

 

コンプライアンス違反の防止対策

コンプライアンス違反を防止するには、
1)違反の発生を未然に防止する
2)違反を早期に発見する
との両面から考える必要があります。健康管理でいえば、「健康生活」「検診」です。「健康な会社」であるためには、ベースとして従業員個人の誠実さ、会社としての誠実な企業文化が重要です。このベースがあって各種対策の効果が発揮されます。健康管理に例えれば、本人が「健康でありたい」と思わなければ、運動も食事管理もうまくいかなのと同様です。

コンプライアンス違反の未然防止対策

① 倫理綱領などの規程整備による「二重規範」の排除
何が正しい仕事の仕方であるがを示すのが、倫理綱領を含めた各種規程です。理想を追求して守れない「建前」だけの規程にしないことです。また、定期メンテを行い実際の業務との乖離を防ぐ必要があります。

② 研修などを通してのコンプライアンス教育
コンプライアンス教育は、とかく形骸化し易い問題があります。「なぜルールを守らなければいけないのか」から脱して、「なぜルールを守れないのか」を学び、共に考えることが重要です。

③ コンプライアンス委員会など統括機関の設置
大企業を始め、多くの企業が社長を委員長にした、コンプライアンス委員会を設置しています。重要なのはコンプライアンス委員会が機能するかどうかです。

④ 不正の「機会」排除
「不正のトライアングル」の内、不正の「機会」排除は、職場環境を考える上で継続的に改善すべき点です。例えば、品質検査業務において、一人作業でデータを手入力する。購買担当者が長年変わらず、納入業者と癒着するなどです。いくら犯罪が少ない地域でも、鍵をかけずに外出してはいけません。

⑤ 健全な企業文化の構築
職場がタコツボ化し、違法なことが慣習化し誰も気付かないで「コンプライアンス違反」を犯し、突然問題として発覚するケースです。日産の新車検査不正や三菱電機の車両空調機器検査問題は、長年「不正」が当たり前になっていて、現場では「問題」との意識さえなかったようです。
職場に配属された従業員や転任してきた管理職は、当初「違和感」を感じるものですが、現状のやり方に従うことで、「不正」が継続されます。

コンプライアンス違反の早期発見

⑥ 監査制度
定期、不定期に業務が適切に行われているか、確認(監査)する制度です。膨大な業務のすべてを監査するなどとてもできません。どうしても、形式的になりマンネリ化を招きます。その都度、重点テーマを決めるなどの工夫が必要です。

⑦ 内部通報制度
職場から組織内外への告発が、「コンプライアンス違反」発覚ルートのかなりを占めています。これを制度化したのが、内部通報制度です。明らかな違法行為だけでなく、疑惑や職場の問題点の相談窓口を兼ねている会社もあります。通報者の匿名性が保たれ、窓口は社内のどの組織にも属さない人が当てられます。

内部通報制度を活かすポイントがあります。
1)内部通報者を探索しない。
内部通報者を探す行為は、「自殺行為」です。通報制度をつぶしてしまいます。

2)通報窓口では、通報者に対して「どうして欲しいか」確認すること。
通報者は、「上司より会社の方が大切」と思っています。自分の部署や会社が「こうあって欲しい」との気持ちがあります。通報の受けての誠意が、問われます。

 

コンプライアンス違反が発生した時の対応

コンプライアンス研修やテキストでは、コンプライアンス違反の防止に力点が置かれています。しかし、現実に内部通報や監査により「問題」が発覚した時の処置を説明するものが少ないようです。「問題」が発覚したとき、当事者やその上司は「コンプライアンス違反」にしたくない、隠しておきたい気持ちが働きます。その結果、地獄を見ることになります。
「『問題』を隠すことは出来ません。公表が遅れるほど『問題』によるダメージが大きくなる」
この認識が重要です。
「自社(自分)にとって、都合の悪い事実に対して誠実であれ!」
これが、実際にコンプライアンス問題を経験し一番強く感じたことです。問題の責任者を処罰する場合、「本人が問題を知った後、誠実かつ速やかに対処したかどうか」によって重みが判断されます。
コンプライアンス違反など「問題」が発覚した時の対応例を5つのステップで紹介します。「問題」は、種類や規模など様々で、個々に対応は異なりますので参考事例として下さい。

① 関係部署、コンプライアンス委員会への速やかな報告
コンプライアンス違反が発覚した場合、速やかに社内関係部署およびコンプライアンス委員会に連絡。コンプライアンス委員会など社内の統制機関は、対応策を各部署に指示します。

② 社外関係機関(公的関係機関、ISO等認証機関など)への通報、社外公表
通報や発表が遅れると遅れたこと自体が問題となります。「全貌が明らかになった時点で発表」ではなく、「違反の事実が判明した」時点で公表し、「詳細は後で」という処置が妥当です。

③ 違反の範囲の特定、関係者の特定、違反の影響を調査
違反の内容の特定や影響の調査は、重要です。時として違反した当事者が、真相究明に消極的で、違反の隠蔽を図ることさえあります。書類のシュレダー処理やPC内データの消去が行われない処置が必要です。
パワハラ、セクハラ、過剰労働など人に関係するコンプライアンス違反の調査では、加害者と被害者とが存在します。調査の仕方によっては、新たな問題が発生する可能性があります。誰がどんな調査をするかなど慎重に進める必要があります。

④ 違反の原因調査及び再発防止対策の実施
「刑事コロンボ」や「名探偵コナン」は、犯人が最後にあっさり犯罪を認めるので、事件はスカッと解決します。しかし、実際のコンプライアンス違反では、当事者が非協力的で違反内容の解明や原因調査が困難なことが多くあります。まず違反が起きた経緯を事実に基づき解明することです。
再発防止対策では、とかく監視体制の強化や規程の厳格化になりがちです。「不正のトライアングル」の各要素に対する対策が重要です。

⑤ 必要により社外関係者への補償、社内関係者の処分
社外関係者や機関に対する説明と補償は、誠実に行うことが基本です。時間、人手、金がかかりますが、企業の信頼回復を優先せねばなりません。また、社内関係者の処分に当たっては、「見せしめの処罰」ではなく、再発防止の観点からの配慮が必要です。


企業法とコンプライアンス 第3版

まとめ

「コンプライアンス」違反防止には、
1)違反の発生を未然に防止する
2)違反を早期に発見する
との両面から考える必要があります。健康管理でいえば、「健康生活」「検診」「健康な会社」であるためには、ベースとして従業員個人の誠実さ、会社としての誠実な企業文化が重要です。
不幸にして、「問題」が発覚したときは、速やかに適切な処置を行うこと。公表の遅れなどで、問題が更に拡大する恐れがあります。

参考記事:「コンプライアンス研修」を形骸化させない4つの教育ポイント(その1)

労働生産性を上げる4つの要素と労働生産性の3つの表現方法

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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