どこでも起きる「パーキンソンの法則」とそこから逃れる3つのポイント
どこでも起きる「パーキンソンの法則」とそこから逃れる3つのポイント
「パーキンソンの法則」とそこから逃れる3つのポイント
「いつも仕事は、締め切りギリギリまでかかる」
「余裕のあったはずのプロジェクト予算が不足する」
会社などの組織で仕事をしていると、必ずと言っていいほど現れる現象です。これは、個人でも組織でも現れる現象です。人によっては、
「子供の頃から、夏休みの宿題は、早めに終わらせていた」
という羨ましい限りの例外的な人もいますが、そんな人が組織にいても、周りに引っ張られてか時間ギリギリの仕事、ギリギリの予算で四苦八苦している姿を見ます。
人や組織は、締め切りまで時間があっても、夏休みの終わり近くになって宿題を必死でやるように、時間いっぱい使います。予算があれば、その限度いっぱいまで、何かに使ってしまうものです。このような習慣を法則としてまとめたのが、「パーキンソンの法則」です。
パーキンソンの法則( Parkinson’s law)とは、英国の歴史学者・政治学者シリル・N・パーキンソンが1958年にその著書「進歩の追求」の中で示した法則です。法則は、2つあります。
第1法則;仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第2法則;支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
これは、英国の官僚を観察した結果から導いたものです。この原因について、パーキンソンは、
1)役人は、部下が増えることを望む
2)役人は相互に仕事を作りあう
と述べています。パーキンソンの法則は、役人を観察して得たものですが、他の組織や個人の感覚にもよく適合するという評価を得ています。
なおパーキンソンの法則は、一般化して、
「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」
というようにまとめられています。
パーキンソンの法則から逃れる3つのポイントがあります。
1)仕事を細分化する
2)適切な予備を持つ
3)最終ルールを決める
これらは、自分が設備投資のプロジェクトや3S(整理整頓清掃)活動の体験で、見出したポイントです。この記事では、実例を挙げて紹介します。
仕事を細分化する
大きなプロジェクトは、完了までの時間が長く、また予算も大きいものです。完了予定時期までの時間が長いと予備調査や周辺調整などあれやって、プロジェクトの肝心な部分への取り掛かりが遅れがちになります。そこで役に立つのが、計画をいくつかに分割することです。2年のプロジェクトなら、3か月程度毎に到達目標(マイルストーン)を決めてしまうことです。同様に予算もいくつかの項目や時間的に分割することで、無計画な使い方から逃れられます。
仕事を人に割り振ると、負荷の過多が見えやすくなります。仕事が少なければ、割り当てる人員を減らすこと。時間に余裕がありそうなら、仕事の締め切りを早めることです。
コロナ禍で仕事が減っているはずなのに「忙しさは変わらない」という職場があったら要注意です。人は、誰しも仕事をつくり出す天才です。チームリーダーが、チーム員一人ひとりの仕事の内容を確認すること、つまり仕事の細分化で、「忙しさ」の正体を掴むことができます。余裕があれば、仕事を積み増す、締め切りを早める、人を減らすことに勇気をもってやることがパーキンソンの法則から逃れる第1歩です。
パーキンソンの法則は、組織が大きくなるほど強くなる傾向があります。つまり、役所や大企業で顕著に表れます。中小企業や零細な商店も同じですが、組織が小さいだけに経営者が勇気をもって仕事や時間、お金の配分に向き合うことで、大組織より容易にパーキンソンの法則から逃れることができます。
適切な予備を持つ
後で時間が無くなるのを想定して、長めの完成予定を立てる。予算不足を想定して、あらかじめ別予算を用意する。これらは、「予備」と言われる手法です。不測の事態を想定した「コンティジェンシー」です。
大きなプロジェクトでは、完了予定時期を守る、計画予算を守るために「予備」が設けられことがあります。2年間のプロジェクトで2か月、予算では10%程度を「予備」として別枠でよく計画した経験があります。
ところが、予備を明確に分離しておかないと、時間的余裕、お金の余裕として、そこにパーキンソンの法則が働きます。つまり、気が付けば、あったはずの時間がなくなる。あったはずのお金の余裕がなくなることが起きます。
そもそも「予備」は、2種類あります。
1)計画段階で内容が詰め切れず「予備」とするもの。
プロジェクトが進行して、内容が明確していく中で、必要により使っていく時間やお金です。
2)不測の事態、例えば工事中の自然災害や資材のインフレに対応する「予備」。
これは、一種の保険です。使わなければ、残すべき時間やお金です。
予備を沢山持つプロジェクト管理者は安心ですが、全体予算が肥大化します。肥大化した予備は、パーキンソンの法則に従い「何か」に使われます。
この2種類の「予備」の性質を明確に意識して、マネジメントすることが重要です。
最終ルールを決める
仕事の工程や工期、予算を細分化してもそれをどう扱うかのルールを決めておかなくては無意味です。3か月ごとに進捗を管理し、予定より遅れていたり、早くなっていたりしても、「最後は何とかなる」と放置すれば、進捗管理の意味をなしません。プロジェクト管理の最も重要なポイントは、進捗を確認したあと「どうするか」を決めておくことです。例えば進捗遅れに関して、
1)遅れを静観する。
2)遅れを取り戻すために人、金などを追加する。
3)計画を遅れに合わせ修正する。
進捗目標の前倒し達成についても、
1)前倒しを静観する。
2)人、金などを削減する。
3)計画を前倒しに修正する。
いずれかのアクションを取ることが重要です。特に進捗が前倒し達成しているときは、パーキンソンの法則そのものの現象が起きてしまいますので要注意です。
3S(整理整頓清掃)活動で、課題になっていた部品置き場を整理したことがあります。ところが、数か月もするとその場所は、またガラクタで一杯になりました。そこで、毎月、置き場をチェックすることになったのですが、チェックしてもガラクタの処理方法を決めていないと、処分していいのかどうかを持ち主と交渉するなど大変な手間がかかりました。そこで、
1)保管物には、管理者の名前を書く。
2)保管物には、3か月以内の保管期間を明記する。
3)毎月、置き場をチェックする。
4)チェック時、保管期間が書かれていないもの、保管期間を過ぎたものは、無条件で処分する。
こんな最終処分まで含めたルールを決めることで、ようやく置き場問題は解決しました。ポイントは、最終ルールを決めておくことです。
何か問題があって国が法律を作ることがあります。こんなとき「○○暫定措置法」と呼ばれるものが作られ対応します。ところが、「暫定とはいつまでか」「暫定終了後はどうなるか」などが曖昧な法律が多く、何十年たっても「暫定」のままになります。また、公共工事では、「△△工事」の為の「△△公団」が、工事完了後も残っている例が沢山あります。
まとめ
パーキンソンの法則は、一般的に
「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」
ということです。具体的には、
「締め切り間際にならないと仕事をしない」
「予算があれば、目一杯使ってしまう」
といったことです。
1)仕事を細分化する
2)適切な予備を持つ
3)最終ルールを決める
この3つのポイントを押さえることで、パーキンソンの法則から逃れることが期待されます。