自分から「行動しない」「報告しない」受け身な部下への指導方法
自分から「行動しない」「報告しない」受け身な部下への指導方法
リーダーは、「部下が悪い」のではなく「指導が悪い」と考えよ
「自分から行動しない」
「自分から報告しない」
「指示を受けてもなかなか行動をおこさない」
こんな「受け身」の部下は、リーダーをイラつかせます。何とかしようと部下に話をしても手ごたえがなく、ついつい強い口調の「指導」をしてしまいます。思い直して、部下から話を聞こうとしても反応がない。こんな、噛み合わない部下との関係における指導法をお伝えします。
積極的に動かない部下に対し、リーダーは「部下の問題」と考え、直そうと指導します。しかし、その考えがそもそも間違っています。「部下の問題」は、「リーダーの指導の問題」と考えるべきです。「受け身」体質などの問題を抱える部下に指導をしているうちに、「やってあげている」感覚の上司になっていませんか。そんな上司の下では、「やらされている」感覚の部下になりがちです。「自分から行動しない」「自分から報告しない」部下への指導には、3つのポイントがあります。
1)リーダーは、「持論」を押し付けるな
2)リーダーとしての信頼を築くこと
3)チームとしての目標を共有すること
これらは、目新しいことではありません。しかし、これが出来ておらずリーダーは、「部下が悪い」と思い込んでしまいがちです。問題は、「指導が悪い」ことです。
この記事は、自分の実体験の中で、「こうすれば、うまく行く」というより、「こうなるとうまく行かない」から出た指導のポイントをご紹介します。
リーダーは、部下に「持論」を押し付けるな
とかくリーダーは、「受け身」の部下に対して
「こうすればいい」
「ああすれば良い」
と指導したくなります。優しく指導しているつもりでも、部下の意見を待ちきれずに、答えである「行動すべきこと」を押し付けてしまいます。しかし、その内容が納得できなければ、部下は聞き流し行動を起こしません。
「私もそのくらいわかっている」
部下は、そう思っているかも知れません。部下の課題に対して、リーダーが陥り易いのは、「持論」を押し付けてしまうことです。自分の成功例を基にした「指導」をしてしまうことです。経験には、成功例も失敗例もあります。また、自分が経験していない事例もあります。ところが、熱心に指導するあまり、自分の成功例から導いたことを不変の原則のように押し付けています。自分の成功例から得たことが、なんでも適用できるように思え「持論」化していくのです。
私は、問題の部下を個別によく「指導」していました。実例を挙げて、
「こうしてはどうだ」
「こう考えてはどうだ」
「自分は、こうしてうまく行った」
とよく話しをしていました。ところが、部下はなかなか変わりません。指導している方は、自分の成功体験を一つの例として、アプローチのヒントを与えているつもりでしたが、部下の方は
「俺のやり方でやれ!」
と解釈、強く強制されているように受け止めていたようです。
「部長は、こう言うけど、この問題は違うんだよな」
部下が同僚にそう漏らしたことを聞いて、自分の指導が自分勝手であることに気づかされました。自分でうまく行ったことを部下に押し付けることが「指導」と考えていたと反省しました。
リーダーは、部下を指導するとき、部下にとって「何が重要か」「何を躊躇しているか」を考え、それに沿って話をすることが重要です。自分の成功経験に基づく「持論」を展開してはいけません。実際、自分に成功経験がなくても理論を学び、方法論を学んでこれを伝えることで指導ができます。選手経験がなくても成功したスポーツの指導者が沢山います。部下は、「リーダーに成功体験がある」から話を聞くのではありません。「正しいことを教えてくれる」から聞くのです。
「正しいこと」は、既に部下は持っているかも知れません。むやみに「持論」を押し付けず、部下から考えを聞きだし、認めてやる指導が大切です。
リーダーとしての信頼を築くこと
リーダーとして部下からの信頼がなければ、「自ら報告する」「自ら行動すること」は期待できません。部下は、「リーダーに成功体験がある」から信頼するのではなく、「自分のことを分かってくれている」から信頼します。「正しいことを教えてくれる」から信頼するのです。
リーダーにどんなにすごい成功体験があっても、信頼にはなりません。プロ野球の監督で選手時代スーパー・スターだった人が、チームをまとめられなかったとの話はよくあることです。
「正しいことを言ってくれる」
「自分の課題を的確に言い当てる」
そう部下が思うことの積み重ねからリーダーに対する信頼が生まれます。一度、信頼が生まれれば、部下はリーダーによく報告するようになります。報告をすることで、安心や有意義なアドバイスが得られることが分かっているからです。
信頼は、組織が機能するための基本です。とりわけ、リーダーに対する信頼は、指導力の源です。
チームとしての目標を共有すること
結果が出せない部下や、たとえ仕事が出来てもチームの成果に結びつかなければ、リーダーにとっては「問題社員」です。「問題社員」の特徴の一つは、チーム内で孤立していることが多いことです。
サッカーなどの団体競技では、
「For the team」(チームのため)
と言う言葉が使われます。子供たちが集まってボールを蹴っているときは、純粋にチームが勝って喜び、負けて悔しがり、もっとうまくなりたいと練習します。ところが、ここに監督やコーチなど「指導者」が入ると、選手の中には違うことを考える者がでてきます。「監督の前で目立ちたい」
「ヘマをして叱られたくない」
「練習しているところを認められたい」等々
いつの間にか、「チームのため」を忘れ、「自分のため」になっています。選手が一生懸命チームの為にプレーすることが大切で、結果としていいプレーもあれば、エラーも出ます。ところが、チームの為でなく、自分の為であれば、責任を回避するようなプレーが出始めます。自分でドリブル突破しようとせず、安易にパスを出す。自分でシュートせず、すぐにパスに変えるといったプレーです。
仕事においても同様です。自分で提案し行動すれば、失敗もあります。失敗は、個人ではなく、チームの失敗と受け止める風土が必要です。報告を怠ると、チームとしての動きに遅れが生まれると認識が共有される必要があります。
人は、自分の為だけなら「頑張り」にリミッターを掛けます。
「うまく行かなくても、自分が悔しいだけ」
そう思うと適当なところで手を抜きます。新しいことにチャレンジしません。チームの目標をチーム員で共有し、その視線で皆が努力することを愚直に訴えることです。
「一人ひとりが頑張るから、チームが良くなる」
というより
「チームのために頑張ることが、人の成長に繋がる」
と考えた方が正しいと経験的に思います。チームのために頑張ることは、責任を感じると同時に、失敗したときは、「指導者の責任」として精神的に逃げ道が作れます。そして、何より有意義なのは、失敗や成功体験が次のリーダーを育てることです。
まとめ
「自分から行動しない」「自分から報告しない」といった「受け身」の部下を指導するには、3つのポイントがあります。
1)リーダーは、「持論」を押し付けるな
2)リーダーとしての信頼を築くこと
3)チームとしての目標を共有すること
部下が思うように動かないと、リーダーは、「部下が悪い」と思い込んでしまいがちです。しかし、部下が悪いのではなく、部下への「指導が悪い」と考え方を変えることが大切。