「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

人材育成のポイントは、スキル、知識、経験をバランス良く身につけること

 
弟子と師匠のイラスト
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

人材育成のポイントは、スキル、知識、経験をバランス良く身につけること

 

人材育成のポイントは、スキル、知識、経験をバランス良く身につけること

「新人を早期に戦力化したい」
「新分野に挑戦するために、社員に再教育をしなければならない」
「後継者の育成をしたい」
企業や組織では、これら人材育成のニーズが常にあります。「如何に会社の将来を託せる人材を育成するか」は、企業の発展のためには極めて重要なことです。ところが、日々の業務に追われて、人材育成を十分にできていないと感じている上司や先輩社員が多いのではないでしょうか。
多くの企業では、入社時に会社概要やマナー、安全など一般的な教育をしたあと、配属先の職場に任せてしまっています。そして、各職場では、特別な育成プログラムを持たず上司や指導先輩によるOJT(On-the-Job Training)ゆだねているという現実があります。OJTには、メリットとして
1)実践的な学習ができる。
2)リアルタイムなフィードバックがある
3)本人の特性や職場のニーズに合わせた学習ができる
といったことがあります。ところが、デメリットとして
1)指導する人の時間を奪う
2)一貫性の欠如
3)学習の効率が悪く育成に時間がかかる
といったこともあります。特に人材育成に時間がかかるというのは、OJTによる人材育成の大きな課題です。
「OJTで教育をしている」
と言いながら、
「先輩に付いて見ておけ」
といった教育方法では、「1人前になるには、最低5年かかる」といった非効率なことになります。
OJTの場合も含めて、人材の育成には3つのポイントがあります。
1)スキルの習得
2)仕事に関する知識を得る
3)経験を積む
人材を早期に戦力化するとは、この3つのポイントをバランスよく速く身に着けるということです。OJTを実施した人材育成においても、この3つのポイントをバランスよく、効率的に習得すること重要です。
この記事では、実例を挙げながら人材育成の3つのポイントについて紹介します。

広告

OJTで面白いほど自分で考えて動く部下が育つ本 ―――「教える」ではなく「能力を引き出す」(ビジネスベーシック「超解」シリーズ)

スキルの習得

技術系の仕事、特に職人になるには、装置や道具の使い方などの技能(スキル)がないと何もできません。新人に対しては、基礎からスキルが叩き込まれます。現場の仕事においてスキルを磨くことは、自分の成長が分かりスキルの向上自体が面白く感じるものです。スキルのランクを明確にして、本人に自分のランクが分かるようにすることで、やる気を出させている例があります。
一方、事務職や企画職といわれるオフィス中心の仕事では、技術系の仕事に就く人ほどのスキル教育を受けることがないのが実態です。ExcelやWordをメールなどPCの関するスキル。社内システムの使い方。社内、社外の人とのコミュニケーションの取り方。様々なスキルが必要なのですが、集中して学習する機会が少ないのが実態です。
事務系のベテラン社員でも、自分の関係する範囲のシステムしか使えないという人が結構います。例えば、管理職で社内の基幹システムの決裁しか使ったことがない、PCをワープロとしてしか活用していないといった例です。
事務的な仕事が中心の職場でも、スキルを高めることは業務の効率化の上で大切です。また、基本的なコミュニケーションスキル、コーチングなどのスキルも専門教育を受けることは人材育成には有効です。
私のいた職場において、新人をPCやIT技術の基礎を徹底的に教える研修に1週間行かせたことがあります。新人自身のスキルが上がったのは勿論ですが、職場において、
PCやシステムのことなら、今年の新人に聞けばわかる」
と先輩社員に重宝されています。そうなると、彼は自主的に更なるスキル学習しています。当初、職場でオドオドしていた感じの新人が、研修後しっかり職場で存在感を出しています。彼は、ITスキルを身に着けたことで、自分なりの社員間コミュニケーションのコツまで得ることができました。

仕事に関する知識を得る

自分の直接関係する知識は勿論ですが、関連する知識をつけさせることが人材育成において欠かせません。
新人や異動してきた人が力を発揮できない原因の一つは、会社や職場の規程やルール、慣習を知らないことにあります。職場の先輩にとっては当たり前のことでも、新人にとっては戸惑うことばかりです。新人に対して、業界用語、専門用語、職場で使われている言葉を教えることから始めることです。
高度なスキルと経験が全てといった職人芸を求められる職種であっても広い知識の習得は重要です。
ある試験分析の会社に半導体の故障解析をするチームがありました。そこでは、持ち込まれた半導体の不良品から、観察用試料を作り、電子顕微鏡で故障原因を特定します。持ち込まれる半導体の線幅は、7ナノメートルクラスです。(現在は、更に細かくなっている)このサイズの故障個所を見つけるには、「試料づくりが全て」と言っていいほどです。不良半導体に通電して出てくる赤外線などで、故障個所を予想します。予想した場所の断面を観察するために、機械的に切断後研磨します。その後、イオンビームを当てることで更に故障個所まで掘り進みます。この職場では、故障の予想個所に印を付けたサンプルを手作業で切断、表面を研磨する工程を一人で行います。
この工程では、ミリ単位の切断機とミクロン単位は研磨機を人の勘を頼りに行っています。切断、研磨というスキルだけに思える工程です。
「この工程をこなす人材は、育成にどんくらい時間がかかりますか」
と担当者に聞いたことがあります。すると
「芸術品を作っているわけではないので、切断や研磨は半年もあればできるようになる。むしろ、半導体の構造や材料の知識、故障のパターンの知識を習得し、実際に経験することが重要」
というものでした。半導体の構造や保護材の材料は、日進月歩で変化しています。故障する場所、パターンも変わってくる。常に最新の知識を知っていないと故障の起こりそうな場所の予想ができない、故障個所への近づき方を誤るといったことが起きるとのこと。一見、スキルが全てと思われるような仕事でも、全体の知識が重要と教えられた例です。

経験を積む

同じ仕事を長く続けることで、様々な経験を積むことができます。経験を積むことで、仕事の全体像を把握できます。トラブルに対して適切に対応することが出来ます。ところが、長く仕事をしていても、特殊な事態に遭遇する機会はあまり多くないということがあります。
例えば、車の運転では、何時間高速道路で運転しても車庫入れがうまくできません。飛行機の操縦でも、飛行時間というより、離着陸回数の方が経験としては重要と聞いたことがあります。実際米国の空母艦載機は、訓練の大半を離着陸訓練にあてているそうです。
技術系社員の能力評価表に仕事の経験年数だけでなく、計画・設計の経験回数、プロジェクトの経験回数を入れている例があります。
経験を積むとは、長く業務をすることに加え、「非定常業務」と言われるような特殊な事態を多く経験することが重要です。
私の勤めていた会社に「プレスの神様」と言われるAさんがいました。この会社は、自動車メーカーに鉄板を納入しているのですが、客先から鉄板をプレスした際に板が割れたときは、決まってAさんにお呼びが掛かります。彼は、材料の特性を確認して問題なければ、プレスの金型や潤滑油などを調整して、100%割れを解消してきます。(もっとも、割れが解消できなければ、帰社しなということもありますが。)自動車工場では、同じ金型で1日1000枚以上プレスすることもあります。ベテラン社員であれば、何十万枚、何百枚のプレス経験があるはずです。一方、Aさんは工場でのプレス経験はゼロです。ところが、プレス割れがおきた時は、必ず自動車会社の現場に出向いていますので、現場経験の全てが「プレス割れ」です。年に10回ほど出動し、それを20年続けていますので、プレス割れの遭遇回数は200回以上ということでしょうか。彼に、
「どうして、自動車工場の人ができないプレス割れ対策をAさんはできるのですか?」
と尋ねたことがあります。彼は、
「プレス工場の人は、プレス割れのときの経験を積み重ねていないのではないですか。」
と言っていました。Aさんが、あれこれとプレス割れを防ぐ条件を探していても、プレス工場の人は、Aさんに任せて「真剣に考えていないのでは」とも言っていました。
トラブル対応できる人材を育成したければ、トラブルの経験をより多く積む方法をとることが重要という例です。

広告

まとめ

職場における人材の育成には3つのポイントがあります。
1)スキルの習得
2)仕事に関する知識を得る
3)経験を積む
人材を早期に戦力化するとは、この3つのポイントをバランスよく速く身に着けるということ。OJTを実施した人材育成においても、この3つのポイントをバランスよく、効率的に習得すること重要です。

参考記事:OJTを使った新人教育で、成果を上げるために指導者がやるべき3つのこと

今どきの部下に「成果を出させる」、上司の3つの教育指導ポイント

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2024 All Rights Reserved.