デジタルマーケティング成功の鍵は、顧客から「信用」を獲得すること
デジタルマーケティング成功の鍵は、顧客から「信用」を獲得すること
「信用」がなければ、デジタルマーケティングも不発に終わる
「HPを見てくれる人はいるけど受注に繋がらない」
「うちのような企業相手のB to Bビジネスでは、HPからの受注はない」
これは、企業のある営業担当が、社長から
「今流行のデジタルマーケティング手法で受注を増やせ」
と指示されたときの言葉です。「DXを進めよう」とのムードの中、デジタルマーケティングや更に自動化を進めたマーケティング・オートメーション(MA)が、もてはやされています。その代表例が、アマゾンや楽天などの通販サイト、会員制の各種サービスです。デジタルマーケティング手法の指導やツール販売をする会社も増えています。
しかし、HPを充実し、メルマガを発信し、各種無料サービスを充実しても実際の受注は簡単には増えません。特に企業相手のB to Bビジネスでは、簡単に成果を出せません。いくら顧客がサイトにアクセスして購入意欲があっても多くの場合、担当者だけで購入の権限がなく上司や購買部門の決裁が必要です。購買に関わるすべての関係者を納得させる必要があります。購入したいモノやサービスの内容説明は、HPや各種関連カタログ、解説で理解してもらえるのですが、
「カタログ通りの性能化か?」
「取り扱い業者は信用できるか?」
「これが正しい選択か?」
といった疑問で、購入に至らなくなる、決定が遅れる、他社に受注が流れることになります。デジタルマーケティングによる受注に絶対必要なのが、
「モノや提供者に対する顧客(ターゲット)の『信用』獲得」
です。同じ商品でも、店が直接サイトにのせるよりアマゾンや楽天経由の方が売れます。それは、知名度の差であり顧客の信用度の差です。B to Bなら取引実績や各種公的認定があるか上場企業であるかなど提供者の信用度がより必要になります。直接、モノやセールスマンに接することがない、デジタルマーケティングの世界では、モノや提供者に対する「信用」が成功の鍵です。
「AIDMの法則」は信用が前提
マーケティングの世界に、AIDMA(アイドマ)の法則といわれるものがあります。消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされています。
1)Attention(注意):モノやサービスを知ってもらう
2)Interest(関心):興味を持ってもらう
3)Desire(欲求):欲しいと思わせる
4)Memory(記憶):覚えてもらう
5)Action(行動):買ってもらう
自分でモノを買う時の状況を思い浮かべると納得がいく法則です。ところが、この法則が成立する裏には、商品や売る手に対する信頼が必要です。この法則が唱えられたのは、米国で大恐慌時代以降です。セールスマンが現品を持って売る時のスタイルが原型です。信用は、セールスマン自身が担っていました。
10年ほど前までは、中国に行くと大きな家電製品を後部トランクに入れ、蓋が閉まらないので紐で縛って走っている車をよく見ました。バイクの荷台に冷蔵庫を載せて走っているのには、度肝を抜かれました。当時、中国人は、家電を買うのに店頭に並んだものしか買いませんでした。倉庫から同じものをダンボールに入った状態で出してきても信用しません。そこで、動かしてから買うのです。ましてや、「後で送ります」と言っても信用しません。今や中国は、通販大国です。これは、売り手や商品が顧客の信用を得たことを証明しています。
「AIDCS(アイドカス)の法則」には、信用が含まれている
最近は、AIDMA(アイドマ)の法則に代わり「AIDCS(アイドカス)の法則」が、より有用だと言われるようになっています。信用の要素が入っていることで、通販などデジタルマーケティングにより適合しています。以下が、AIDCASの法則が示す購買の各段階です。
1)Attention(注意)
2)Interest(関心)
3)Desire(欲求)
4)Conviction(確信):商品、売り手が信用できる
5)Action(購入)
6)Satisfaction(満足):また買いたくなる。人に教えたい。
モノを売っていた時代は、現物で商品を確認できました。実際にセールスマンと接して、モノだけでなく、人の信用性を確認できました。しかし、デジタルマーケティングの時代では、商品に触ることができません。また、商品の多くがソフト化しています。各種コンサルタントやメンテナンスサービスは、触れられない商品です。ソフト系の商品は、今後も増加していきます。いかにして、商品を信用してもらえるかが重要です。
AIDMとAIDCASの違いは、Conviction(確信)とSatisfaction(満足)が入っていることです。どちらも供給者や商品に対する信用が入っています。
PCを通して商品を購入する道筋を想像してみてください。「便利で面白そうな商品」を知ったとします。それが、1万円以上したとして、すぐに購入しますか。商品が本当に役に立つか、取り扱っている業者が信用できるか考えるはずです。あるいは、既に使っている人にその商品や取扱い業者について尋ねます。つまり、商品と提供者の信用を探ります。供給者側から見ると、デジタルマーケティング成功の鍵は、供給者と商品に対する信用をいかにして得るかです。
顧客の信用を得る方法
顧客の信用を得るには、様々な方法があります。以下にその例を紹介します。
1)信頼のある組織、人を活用する
アマゾンや楽天などを利用した出品。ISOやJIS認証なども信頼を得ます。宮内庁御用達、NASA採用品。新刊本の帯に、有名人のコメントを付けてもらうなどです。本来知名度と信用は異なるものですが、テレビに出たことがある、新聞に載ったことがあるなどで、知名度が上がると信用も得られます。結構コストがかかることは覚悟すべきです。
2)お試し品の提供
ソフトウエア会社やサプリでよく使われる手法です。「1か月間無料」「初回半額」など実際のモノやサービスに触れて信用を得ようとするものです。
3)口コミ、SNSの活用
最近とても伸びている信用の獲得方法です。
「○○会社は、信用できますか?」
なんて、直接の書き込みが、ネットに溢れています。ただし、デマやサクラ、過剰表現に注意が必要です。FacebookやTwitterでの広告は、閲覧者の反応が分かり易く、また拡散も速く信用の獲得に有効です。
4)モノやサービスの利用者評価を伝える
顧客は、実際にモノやサービスの利用者評価に重きを置きます。自分の選択が正しいか疑問や不安があるからです。商品を買って満足した人は、人に伝えたくなります。
「お使いになった感想をコメントください」
などと購入後にアンケートが来るのは、この手法です。いい評価ばかりではなく、悪い評価もあります。信用という点では、これを隠すことは逆に損失を招きます。
5)顧客との接点を増やす
かつての営業マンは、顧客訪問の数、どれだけ購買決裁者に近づけるかが受注の成否を決めていました。モノと会社(営業マン)の信用獲得競争です。デジタルマーケティングにおいても同様です。どれだけ、顧客との接点を増やせるかです。HP、メルマガなど顧客との接点(タッチポイント)を増やすことで、信用度が上がっていきます。ただし、メルマガや案内メールが「迷惑メール」に分類されないような内容が必要です。
6)コミュニティとの関係を築く
ボランティアや「志」を同じくして集まったコミュニティにおいて、参加者間の信用度は抜群です。コミュニティは
「商店街活性化の会」「地域の子育ての会」「遺跡を守る会」等々
多種多様です。これらコミュニティに参加する、スポンサーになるなどして関係を築くことで信用を獲得できます。コミュニティにかかわることは、長期的なマーケティングの場所を得たと考えることです。
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まとめ
デジタルマーケティングによる受注に絶対必要なものは、
「モノや提供者に対する顧客(ターゲット)からの信用獲得」
です。直接、モノやセールスマンに接することがない、デジタルマーケティングの世界では、モノや提供者に対する「信用」が成功の上で必須です。これが、「AIDMの法則」から「AIDCASの法則」といわれるようになってきた理由です。
参考記事:日本企業が、DXを推進するために乗り越えるべき3つの壁
職場におけるDX推進方法と「2025年の崖」「レガシーシステム」