労働生産性が上がる職場人数。少なくても、多くてもダメ。(日本の生産性7)
労働生産性が上がる職場人数。少なくても、多くてもダメ。
労働生産性は、職場の人数が関係している
会社には、従業員が、数人から数十万人の規模のものまであります。しかし、巨大企業であっても組織が細分化され、職場前線では数人から、多くても数十人単位のグループで運営されています。伝統的な製造業では、「班長」と呼ばれるリーダーのもと5人から10人程度のグループで仕事をしていることが多いようです。
私は、ある会社において生産性向上活動を担当する機会があり、そこで職場前線のグループ員数により、労働生産性に差がでることに気付きました。同一会社内で1グループが2人から25人の人数で構成された75グループについて、労働生産性の推移を追跡しました。事務的な仕事、生産(半自動、手作業の工場)、試験など様々な職場にて、労働生産性を記録しました。各グループの標準生産性(ベテラン社員が、普通の能率で仕事をしたときの労働生産性)に対する日々の労働生産性の変化を追っていきました。グループ間で仕事の質も量も違いますので、比較は難しいのですが、傾向として職場のグループ員数によって労働生産性の改善に差が生じることがわかりました。
仕事量の変化に対する対応力は、グループ員数で差が生れる
各グループの仕事量は、1日、1週間、1か月、1年の中で変化します。ある職場では、1日の中で夕方3時を過ぎたころから仕事の量が増えます。また、ある職場では、週末や月末。官庁向けの仕事が多い職場では、年度末の1-3月が、仕事量のピークとなります。生産性は、仕事量にほぼ比例しており、裏を返すと、この時以外は、暇な状況です。(仕事量と生産性は、ブログ https://kaikaku-komiya.com/productivity004-volume/ 参照)
75のグループの生産性を評価すると、グループ員数が多い職場程、仕事量のピークにうまく対応していました。もちろん、入ってくる様々な仕事を処理できる能力が必要で、複数の仕事をこなす「多能工」がいるとの前提が必要です。具体的には、大人数の職場では、誰かの負荷が大きくなりオーバーフローすると他の人がこれを助けます。一人の人が、2,3種類の仕事ができれば、相当な力を発揮します。生産性の2要素、「能率」と「効率」のうち、効率の向上効果が大きいと言えます。(生産性における「能率」と「効率」は、ブログ https://kaikaku-komiya.com/productivity003-effiency/ 参照)
ただし、グループが大きいほど単純に生産性が良いものではなく、6~8人が最適でした。(この会社の業務に於いてとの条件で)より大きな人数の職場になると、職場内で仕事の共有ができず、実質的には、内部に複数の暗黙グループができ、実質より小さなグループで仕事をしている状況が生れていました。
労働生産性の高い職場は、グループ員数6~8人
仕事を相互で保管して労働生産性が良くなる6~8人グループは、他にもメリットがあります。例えば、7人で仕事をしていて、1人休むと14%の労働時間が失われますが、これを他の6人で分けると同じ労働生産性であっても1時間10分残業が増えるだけです。現実には、6人に対する一人当たりの仕事量が増えて生産性が上がり、1時間ほどの残業をすれば、こなせます。また、一人が休むのではなく、生産を離れ教育の時間も作れます。グループで会議をしたときは、全員が当事者になって、深い議論が生まれやすくなります。
零細な事業でも、なんとか従業員6人以上の規模にできないかと思います。2人でやっている商売では、一人休むと残った人が倍働くことになります。大きな組織でも、仕事の単位は6~8人、部課長グループも6~8人で階層を分け、ことによったら役員会も6~8人で区切ったら、生産性が良くなるのではないでしょうか。
従業員が何万人もいる大企業や組織において、仕事の分担範囲が小さいために、問題が生じている例が多いようです。ある企業の総務部総務課は、30人近くいました。ところが、仕事は分業化されていて、健康保険担当は2人、給与は3人、採用担当3人、研修担当は3人...といった具合でした。課としての人数は少なくないのですが、実質の職場グループ員数は、2から4人です。仕事のピーク時に、互いに助け合えればいいのですが、なかなかできません、ましてや、部や課を超えて助けることは皆無です。いわゆる「タテ割り」の弊害がでていました。大企業なのに結局零細事業者の集合体になっています。その課では、月間80時間もの残業をする人とゼロの人とが混在していました。更に月によっては、残業80時間とゼロの人が逆転する有り様でした。役所もこれに近いようで、役所の窓口で、特定のところだけが猛烈に混雑している光景はよく目にするところです。
職場前線のグループ員数が不適切、零細事業で従業員が6人以下の状況下では、どうしても就業時間の拘束が強くなります。「有給が取れない」「子供を持った女性が仕事をしにくい」などの問題を生むのは、職場人数か不足しているからです。