仕事量と労働生産性の2つの関係。仕事が少なければ、労働生産性は低い!(日本の生産性4)
仕事量と労働生産性の2つの関係。仕事が少なければ、労働生産性は低い!
仕事量と労働生産性の2つの関係
「仕事がないと生産性を議論しても意味がない」
「急に仕事が増えると混乱が生じ、必ずしも生産性は上がらい」
これは、現場で仕事をしている多くの人が、経験的に知っていることです。
本当にそうなのか確かめようと、生産現場や事務業務現場で生産性に関わる多くのデータを集めたことがあります。これらのデータを分析すると仕事量(売上)と生産性の関係には、2つのパターンがあることが分かります。それは、
1)生産量が増えると生産性が上がるパターン
2)生産性が増えても生産性があがらないパターン
です。この違いは、生産能力の違いです。簡単に言えば、機械化しているか、人手に頼っているかの差です。この記事では、この2つのパターンについて説明します。
生産性のデータは、現場の様々な仕事に標準工数(時間)を設定し、実際にかかった工数と比較することで得られます。データは、作業する人が取るのですが、結構な手間です。作業者の理解を得るのに苦労しました。秘密保持の問題があり、具体的数字を出すことを控えて、結果の概要を述べます。
仕事量が増えると生産性が上がるパターン
工場の現場などで見られるパターンです。人は、仕事量が少ないとそれに合わせたペースで仕事をする傾向があり、このパターンとなります。人は、残念ながら暇なときはチンタラ仕事をし、忙しくなるとシャカシャカ働きます。また、仕事量が増えると「まとめ生産」の効果が出て、生産性が上がります。食堂で、料理を1人前作るのも5人前作るのも同じ鍋で一度にやれば、生産性は5倍です。ただし、どこまでも生産性が向上するものではありません。設備限界や人の限界で、生産性は横ばいになります。鍋に6人前の食材が入らなければ、6人前の料理の生産性は、5人前より低下します。
仕事量が増えると生産性が上がるパターンは、「効率が悪い」のです。仕事をする人、設備を有効に使えていないのです。
実は、日本の多くの企業が陥っているパターンがこれです。人や設備など生産能力に対して仕事量が少な過ぎるのです。はっきり言えば、生産能力に対して「売上不足」「受注不足」です。生産性を上げる特効薬は、仕事を増やすか、生産能力や人を削減することです。小規模事業者でこのような状況にあるところが、多いようです。大企業においても、部署別にみるとこのパターンが結構見られます。
仕事量が増えても生産性が上がらないパターン。
事務処理を主とする職場などで、よく見られるパターンです。仕事量が増えても生産性が、ほとんど上がらない職場です。例えば、最近のマイナンバーカード申請をする人が並んだ役所の窓口を想像してください。人がいくら窓口に並んでいても(仕事量が増えても)、処理スピードは上がりません。むしろ、混乱が生じて、生産性が低下する傾向となります。
仕事量が増えても生産性が上がらないのパターンは、「能率が悪い」のです。人を増やして分業化する、仕事の仕組みを変える、ITなどを整備していくことが必要です。かつて日本企業は、優秀な働き手がおり、QC活動などと相まって、製造業などでは、高い能率にうらづけられた「現場の高い生産性」が評価されていた時代がありました。しかし、コロナ禍で明らかになったように、IT化の遅れ、ハンコ文化、時代遅れの規制や習慣など、仕組みがネックとなって能率が伸び悩んでいる例もみられます。
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デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった デービッド・アトキンソン 「新日本論」シリーズ;
まとめ:
仕事量(売上)と生産性の関係には、2つのパターンがあります。
1)生産量が増えると生産性が上がるパターン
2)生産性が増えても生産性があがらないパターン
この違いは、生産能力の違いです。簡単に言えば、機械化しているか、人手に頼っているかの差です。
機械化している職場では、より仕事量を増やすための施策(拡販、まとめ生産)が有効。
人手に頼っている
一般的に生産性改善と言うと「能率」改善の話が多くなりがちです。働き方改革なども、「能率」ばかり議論されています。しかし、生産性は「能率」と「効率」で決まります。一人ひとりの能率は、世界でみると、日本がそんなに劣っているわけではありません。少々過剰なサービスをしたからと言って、米国人より40%も仕事が遅いわけではありません。(40%は、日米の一人当たりのGDPの差)むしろ、効率の差が、日本の生産性を劣位にしていると考えます。
参考記事:「能率」と「効率」から見た生産性向上対策8つの例(日本の生産性8)