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「値上げしたいができない」、商品価格を上げられない3つの理由

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「値上げしたいができない」、商品価格を上げられない3つの理由

 

商品価格を上げられない3つの理由

エネルギーや穀物の世界的な高騰に加えて円安、その結果原材料価格が上がっています。これを商品価格に転嫁して値上げをしようと考えますが、簡単にできません。東京商工リサーチが行った調査(「企業の4割が価格転嫁できず 価格転嫁した企業の5割で利益率が低下」)があります。これによると、2023年4月に実施したアンケート(有効回答4,424社)において、円安やエネルギー価格の上昇などで調達コストが上昇した企業は87.7%。この内、上昇分を販売価格に全く転嫁できていない企業は42.2%を占め、利益率(粗利益率)が、51.2%の会社で低下しています。また、同調査によると全額転嫁できているのは、わずか5.4%に過ぎないことも報告されています。
実際に経営者の方に聞くと
「値上げしたいができない」
「値上げしても、上がった原材料代の一部だけ」
と言った声が聞こえてきます。調査の通り、商品の価格をなかなか上げられないのが現実です。
商品価格を上げられないのには、3つの理由があります。
1)企業自ら「安売りだけが好きな顧客」を集めている
2)「値上げは悪」という固定観念
3)商品価格設定に対する戦略性の欠如
これらを考慮することで、デフレに慣れ切った日本人にある「値上げに対する抵抗感」を打破することで、「健全な値上げ」ができることが期待できます。
この記事では、日本で商品価格を上げられない理由とその脱却方法を考えます。

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利益を最大化する 価格決定戦略

企業自ら「安売りだけが好きな顧客」を集めている

原材料費や人件費が上昇する中、商品価格を上げることに対して、
「お客さんが逃げるので、値上げできない」
という経営者がいます。値上げしてお客様が逃げるのは、低価格にしか関心のない人達を主な顧客にしているからです。
私の近所に、
「地域最安値」
を売り文句にしたガソリンスタンドがあります。他のスタンドより、常に5円/Lほど安くガソリンを売っていて、いつも給油の車が待っている状況です。ところが、経営状態は良くないようです。ある時期、石油元売りの指導があったのか、安売り率を小さくして他の店と1円だけ安い価格設定をしました。すると、給油に来る車が激減してしまいました。結局、また5円ほど安い価格にしています。このスタンドは、給油に来るのは「安売りだけが好きな客」ばかりであることを証明したようなものです。
商品の一部を特売品として、客を呼んでも特売品しか売れない、ポイント10倍デイを作ってもその日しか売れない。そんな店は、価格以外の魅力がありません。結局、努力して「価格しか興味のない顧客」を選んでいるようなものです。
一方で、「安さ」で勝負する店や企業があります。そんな安さで勝負する飲食店は、「うまい」がなければ、続きません。どの飲食チェーン店も「うまい」を盛んにPRします。ニトリもユニクロも安さが特徴ですが、顧客には「値段以上の価値」を強調したTVコマーシャルをし続けています。
「商品の値上げをしたら顧客の多くが逃げるのでは」
と心配する店や企業は、これまで「安売りだけが好きな顧客」ばかりを集めていなかったか反省する必要があります。

「値上げは悪」という固定観念

長年、デフレ状態が続いた日本では、「値上げは悪」という固定観念ができてしまっています。基本的には、いいものを提供するならば、その対価としてそれなりの金額をいただくことが、ビジネスの基本です。
しかし、「値上げは悪」という固定観念に縛られ、値上げをするときには、
「円安/原料価格の高騰/異常気象等々により、やむなく値上げをさせて頂きます」
といったコメントを付けざるを得ません。
「価値ある商品ですので」
「希少価値がある商品ですので」
と言った本来の価格説明が通らないのが日本です。
ロシアのウクライナ侵攻が始まった2021年頃から、「値上げ」「物価高騰」についてのニュースを度々目にするようになりました。スーパーで主婦がインタビューに答え
「物価が上がって困る」
「もっと節約しなければ」
などと答えているのを見るにつけ、「やっぱり値上げは悪」と思ってしまう人も多いのではないでしょか。
しかし、物価が下落傾向にあるのは、この30年ほどのことです。それ以前は、消費者物価も不動産も賃金も上がり続けていたのが、普通でした。そもそも、経済が成長するということは、人の仕事の対価が増えることです。例えば、散髪の仕事は、明治時代から現在に至るまでパーマや髪染めを除くと基本的に同じです。しかし、散髪料金は、戦後の300円程度から1990年代には、10倍の3000円程になりました。同じ仕事なのに、その対価は10倍です。平均賃金が、10倍になったのです。技術の進歩で、様々な商品の価値が上がる、それを扱う人の賃金が上がる、その人を支える食料価格が上がるといった連鎖が、経済成長です。ところが、日本では1990年代以降散髪料は、横ばいです。簡素化したサービスでは、1000円代の店まであります。正に30年続く「デフレ国家日本」を象徴しています。人の労働価値が下がり続けることが、日本の経済低迷の本質であり、デフレの怖さです。
「値上げは悪」などでは、ありません。事前に告知して、正々堂々とすべきです。「ステルス値上げ」と言われるような、値段を据え置いて弁当や食品の内容物を減らすようなやり方は反感を買います。これらのことが、SNSで拡散されるようなことが起こると、企業の信用を大きく落とす結果となります。

商品価格設定に対する戦略性の欠如

「値上げしたいが値上げできない」
「売上を増やすために値下げする」
などと価格に関する検討するとき、そもそも「今の商品価格は、どう決めたか」という問題があります。
価格設定を戦略的に考えるとき3つの方法があります。
1)コスト思考の価格設定:
文字通り提供するコストに利益を上乗せした価格です。上乗せする利益の考え方によって、いくつかのバリエーションがあります。100円ショップでは、ターゲットの価格を先に決めてコストを検討することがなされます。
2)ニーズ思考の価格設定:
需要や顧客の満足度や嗜好によって決める価格です。ブランド品の価格は、この例です。
3)競争志向での価格設定:
他社の価格を参考に価格設定するやり方です。入札も他社を意識して価格設定がされています。
商品価格は、このような戦略性を持って設定する必要があります。しかし、中小の経営者からは、商品価格を決めた理由として
「他社の同様な商品と同じか、やや安くした」
「自社の従来品をベースに価格を決めた」
といった声を多く聞きます。顧客の満足度やコストから戦略性をもって決めた例は、むしろ少ないのが実情です。
その結果、原材料やエネルギーが高騰したりすると、急にコスト思考で値上げを検討する羽目になったり、他社の値上げや値下げを発表すると急に自社の価格を改定するといったことになりがちです。

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まとめ

商品価格を上げられない理由が3つあります。
1)企業自ら「安売りだけが好きな顧客」を集めている
2)「値上げは悪」という固定観念
3)商品価格設定に対する戦略性の欠如
これらを考慮することで、デフレに慣れ切った日本人にある「値上げに対する抵抗感」を打破し「健全な値上げ」ができることが期待できます。

参考記事:会社が儲からなのは、モノやサービスの価格が安過ぎるから

原材料、部品の低価格を打破する「記号商品化」という考え方

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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