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「地位財」と「非地位財」、いずれも持つことで幸福感を得られるのは「基準」を超えたとき

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「地位財」と「非地位財」、いずれも持つことで幸福感を得られるのは「基準」を超えたとき

 

「地位財」、「非地位財」とは

「同期より早く課長・部長になった」
「高級なSUVを買った」
「50代なのに30代の体力と言われた」
こんなことがあると、ちょっとした満足感や幸福感を味わいます。この満足感や幸福感は、自分の持ち物や置かれた状況が世間の平均的な「基準」を超えていると感じたことで得られます。本当の価値は、課長や部長に昇進したあと「何を成し遂げるか」、SUVや30代の体力を持って「何をするのか」なのでしょうが、その前にその立場や所有者であることに価値を見いだして幸福感を得ます。
米国の経済学者、ロバート・フランクは、人の持っているものを
「地位財」「非地位財」の2つに分けて幸福を考えることを提唱しました。
「地位財とは、周りとの比較により満足を得るもの」
と定義され、資産や社会的地位の他に、家、車、高級な服といった所有物を指します。それに対し、
「非地位財とは、他人との比較とは関係なく幸せが得られるもの」
と定義されています。この例として、健康、自主性、自由、愛情などをあげ、物質的なものは含まないとしています。
フランクは、「地位財」も「非地位財」も人を幸せにすることに変わりはないものの、地位財による幸福感は比較的すぐに消えてしまう。これに対し、非地位財による幸福は長続きすると言っています。
フランクの「地位財の幸福感は長続きしない」という説は、モノが大好きで、低所得層から富裕層まで、大量消費を常とする米国人気質を観察すれば、妥当性があるように思えます。とにかく、借金をしてでも次から次に消費する米国人の行動をみると納得させられます。しかし、貯蓄志向が強く、成金趣味を嫌う日本社会では、単純に「地位財」と「非地位財」に分類して、幸福感を説明するには無理があるように感じます。
「地位財」であれ、「非地位財」であれ、個人の物事に対する評価は相対的なものであり、各自の「基準」をどれだけ上回っているかで、満足感や幸福感が得られるかどうかが決まると考える方が妥当と思えます。
地位や金銭的財産といった「地位財」は、世間の平均といった「基準」があり、自分がどの位置にあるか容易に分かります。車や時計といったモノには市場価格があり価値が金額で表され、これも「基準」が明解です。「非地位財」である健康においても、年代別に検査数値の推奨値が「基準」となります。自由や愛情は、自分の過去や他人と比較で生まれる「基準」あって幸福感を得ています。日本では、過去80年間戦争がなく平和です。その平和を幸福と感じるのは、他国の戦争や過去の戦争と比較するからです。
満足感や幸福感は、「地位財」、「非地位財」に関係なく、「基準」をどこに置くかによって決まります。特に、「非地位財」を評価する「基準」は、曖昧で社会環境や流行、個人の倫理感や置かれた環境に大きく影響されるのが特徴です。
幸福感を得る「基準」には、以下のような特徴があります。
1)モノに対する基準は、周囲の人々と比較である外部基準
2)地位に対する基準は、外部基準と個人の内部基準
3)非地位財は、個人の内部基準
これらの要素で「基準」が設定され、その「基準」を超えたときに満足感や幸福感を得ることができます。
この記事は、幸福感を得るための「基準」について、考えてみます。

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幸せとお金の経済学

 

モノに対する幸福感の基準は、周囲の人々と比較である外部基準

高級車、高級時計、ブランド服などモノの購入は、典型的な「地位財」を手に入れることです。この時得られる満足感や幸福感の基準は、周囲の人々のモノや過去の自分の所有物が基準となります。
例えば、高級車を購入したときに得られる満足感や幸福感は、周囲の人々と自分の車を比較することによって得られます。周囲の人々がより高価な車を所有している場合、その人の満足感や幸福感は低下します。逆に、周囲の人々よりも高級な車を所有している場合、その人の満足感や幸福感は増加する可能性があります。
また、購入したとき、最初はその高級感やステータスに満足感を得ても、時間が経つにつれてそれが「当たり前」になり、さらに上位の車を求めることがあります。これは、満足感の基準が「一般的な車 → 高級車 → 更に高級な車」へと変化し、現在の状態では幸福感が薄れてしまうことを示しています。
ただし、実用性を重視したモノの購入で得られる満足感や幸福感は、絶対値としての基準が存在します。このため、周囲の人の影響を受けることがあまり起きません。例えば、仕事で使う軽トラックの購入では、便利さやコスパといった実務的な満足感はありますが、周囲の人との比較における満足感や幸福感はそれほどありません。
モノを売る商売では、顧客の「基準」をうまく誘導することで、売上を伸ばしています。顧客に他大して、「世間では、高価格帯が当たり前」であることを知らせる。販売する商品群をエントリー品から超高級品まで段階的に用意し、顧客が順次グレイドアップしていくように誘導するといったことです。

 

出世で得られる幸福感は、外部基準と個人の内部基準による

課長や部長への昇格などの出世は、職場での地位や評価を表す「地位財」に該当します。
モノではない「地位財」である金銭や社会的地位から得られる満足感や幸福感は、周囲の人々と比較で生まれる「外部基準」と自分の目標などである「内部基準」を超えることで得られます。
例えば、同期より早く部長に昇格したとき、「外部基準」より早いということで、達成感を感じるでしょう。しかし、同期の人で部長になる人が多くなれば、その達成感は次第に失われていきます。また、出世による達成感や満足感は、個人としてどんな地位を目標(基準)とするかで変わります。上昇志向の強い人は、総じて「基準」が高く、次々と上の地位を獲得し続けなければ、幸福感を得ることが難しいかもしれません。

 

非地位財に対する幸福感は、内部基準による

フランクによれば、健康や自由、愛情などは、「非地位財」に分類され、「他人との比較によっては価値が決まらない」と定義されています。
例えば、健康な人は普段そのありがたみを意識しにくいものですが、一度病気になると「健康であることがどれほど幸せだったか」に気づきます。逆に、病気を克服すると「普通に歩けること」「食事を楽しめること」が、自分の中で幸福の「基準」となり、強い満足感を得ることができます。このように、健康に対して自分としての「内部基準」をおくことで、幸福感を得ています。
しかし、健康に関しても、血液検査のように検査項目ごとに健康な人の値の範囲が示され、その「基準」と比較して気持ちが変化しますので、必ずしも「他人との比較によって価値が決まらない」とは言い切れないかも知れません。ただ、血液検査に「外部基準」があり、これより悪い値でも本人の「これでも良い」という「内部基準」があれば、満足感が得られます。
自由、愛情などは、自分の基準である「内部基準」によって物事を評価し、満足感や幸福感を得ています。この場合、個人の持つ倫理観や宗教が、「基準」に影響を与えます。物質的には、貧困であったり、迫害を受けたりしていても、「神は自分を守ってくれている」といったことを信じることで、幸福感を得ることもあります。儒教の忠義などからくる倫理観も、満足感や幸福感の「基準」となり得ます。

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まとめ

満足感や幸福感は、「地位財」、「非地位財」に関係なく、「基準」をどこに置くかによって決まります。
幸福感を得る「基準」には、以下のような特徴があります。
1)モノに対する基準は、周囲の人々と比較である外部基準
2)地位に対する基準は、外部基準と個人の内部基準
3)非地位財は、個人の内部基準
これらの要素で「基準」が設定され、その「基準」を超えたとき、満足感や幸福感を得ることができます。

参考記事:仕事で幸福感を得るには、マズローの自己実現欲求の上位から満たすこと

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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