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「ニッチ戦略」と「差別化戦略」を混同するな!「ニッチ戦略」は、どの会社も持っている!

 
ニッチ戦略を考える人
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「ニッチ戦略」と「差別化戦略」を混同するな!「ニッチ戦略」は、どの会社も持っている!

 

「ニッチ戦略」と「差別化戦略」の違い

マーケティングに「ニッチ戦略」というのがあります。これは、
「小さな市場において、独占的な立場を確立し、大きな利益を得る」
経営の作戦です。「小さな市場」といっても、相対的で会社の規模によります。乗降客が、1日500人にも満たない駅の前に店を出すことは、まさに「ニッチ市場狙い」と言ってもいいかも知れません。乗客数10人未満のジェット機市場は、航空機産業における「ニッチ市場」ですが、大きな資本と技術力、時間がなければ参入できるものではありません。
「ニッチ」を特に意識せずとも、企業が長年にわたり経営を継続できているのは、その企業に合った市場を持っているからです。言い換えると
「自社のニッチ市場にあった経営をしているから、小さな企業も存続できる」
ということです。「ニッチ戦略」は、どんな会社も持つことができ、持たなければ存続できないということでもあります。
「ニッチ戦略」と混同されやすいものに「差別化戦略」があります。「差別化戦略」は、
「オンリーワンやナンバーワンのモノやサービスを提供して、大きな利益を得る」
という作戦です。相手にしている市場の規模は問いません。提供するモノやサービスが、品質、価格、歴史(「業界初」といったこと)など、他社と異なる特徴を持っていることが必要です。
経産省が、毎年「グルーバルニッチ企業」のランキングを発表していますが、これは「ニッチ戦略」を成功させたものではなく、「差別化戦略」で成功した企業です。リストをみると、各企業が他社の追従を許さない製品力や販売力を持っていることが、分かります。
経営者が、このリストを見て、「ニッチ戦略」と「差別化戦略」を混同し、経営方針を誤ることが起こりそうな気がします。例えば、
「特別なものを持っていない自社はニッチ戦略では勝負できない」
と考えてしまうようなことです。あるいは、ニッチ市場を狙って、特別な製品を開発しようと、リスクを考えずにヒト・カネ・時間をつぎ込むといったことです。
参考:経産省:2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」 選定企業⼀覧
「ニッチ戦略」と「差別化戦略」は、異なります。その違いを理解しないと、大きなリスクを抱えこむ恐れがあります。「ニッチ戦略」は、どんな企業でも立てることができます。
「小さく生んで、大きく育てる」
という言葉があります。「ニッチ戦略」とは、この「小さく生む」に当たります。ニッチ戦略を立て、その後の発展のための3つのステップをご紹介します。
1)「ニッチ市場」を理解する
2)「ニッチ戦略」を作る
3)「ニッチ戦略」を「差別化戦略」に発展させる
小さくても事業が長く継続している会社は、何らかの「ニッチ戦略」を持っていると考えることができます。自社の「ニッチ戦略」を上記のような観点で見直し、発展のヒントを見つけられることを期待します。

 

「ニッチ市場」を理解する

「ニッチ」は、通常「隙間」と訳されていますが、元々の意味は、建造物内部の壁面に設けて神像や装飾品を安置する「隙間」や「くぼみ」の意味があり、元来建築史用語として使われていました。
ニッチ市場を理解する上で、「ニッチ」を「隙間」というより、「くぼみ」と考える方が、妥当ではないかと思います。「隙間市場」というと、
「あることが分かっているけど、入り込めない」
いうイメージが浮かびます。むしろ「くぼみ市場」と表現すると
「あることに気付きにくい。自分の持っている作品が、くぼみにぴったり合う」
といったことをイメージできます。
ニッチ戦略とは、市場のくぼみに、自社が提供できるモノやサービスを当てはめることです。うまく、当てはめて、くぼみに隙間を作らないことです。当てはめた作品(モノやサービス)が、素晴らしいかどうかは、別の問題です。もし、当てはめた作品が素晴らしく、引っ張りだこになるようなら、それは「ニッチ商品」ではなく、「差別化商品」ということになります。
「ニッチ戦略とは、市場のくぼみを見つけて、そこに商品(モノやサービス)を埋め込む作戦」
と理解することです。

「ニッチ戦略」を作る

ニッチ戦略を作るには、2つのアプローチがあります。そのアプローチのいくつかをご紹介します。
1)自社の商品(モノやサービス)が、うまく当てはまる市場の「くぼみ」を探す。
自社の商品(モノやサービス)があって、その市場を探すケースです。
① 地理的に特定の地域に焦点を当てる:
各地域には、気候など地理的条件や人口、地域に特有の文化やニーズがあります。これに対応するような戦略がとれます。特定の地域だけで売られている食材は、その例です。
② 特定の顧客:
特定の顧客や人口集団に焦点を当てて、市場を探すケースです。特定の年齢層、性別、趣味、ライフスタイル、文化的背景、所得レベル、地理的地域などに基づいて区別することができます。
2)市場の「くぼみ」を見つけ、自社の商品をこれに合わせる。
市場(顧客集団)があって、この顧客が求める商品を提供する形です。
① 特殊なニーズや要求:
顧客が、一般的な市場に比べて特殊なニーズや要求を持っていることがあります。これらの顧客は、特定の製品やサービスが彼らのニーズを最適に満たすことを求めています。例えば、身障者向けの器具などです。
② 価格弾力性:
ニッチ市場では、価格の弾力性が必要になります。低価格を求める顧客層を狙う場合と、高価でもモノやサービスにハイクオリティを求めている場合などがあります。

「ニッチ戦略」を「差別化戦略」に発展させる

ニッチ市場で成功し、その後事業を拡大しようとすると、戦略を変える必要があります。あるいは、ニッチ市場に留まるということにしても、ニッチ市場へ進出しようとする会社と競争する恐れがあります。そこで、必要なのが「差別化戦略」です。
「ニッチ戦略」から「差別化戦略」へ移行していくには、要素毎に注意点があります。
1)狙う市場の範囲:
ニッチ戦略では、特定の市場や消費者グループに焦点を当てています。企業は、狭い市場で専門化し、その市場セグメントの特定のニーズや要求を満たすためにモノやサービスを提供します。例えば、「競合のいない○○駅前のスペースを利用した商売」といったことです。
差別化戦略になると、広範な市場を対象とし、モノやサービスを他社とは異なる独自の特徴や付加価値で提供するということです。企業は、消費者に独自性をアピールすることで、競争優位性を築く必要があります。先ほどの例では、「駅前のスペースで、忙しいサラリーマン相手のスピードサービスが売りの商売」といった変化です。
2)モノやサービスの特性:
 ニッチ戦略では、モノやサービスは市場内の特定の需要に合わせてカスタマイズされます。品質や機能の幅は一般的に狭く、深さがあります。この戦略は、少数のこだわりのある顧客に焦点を当てています。
差別化戦略になると、モノやサービスは広範な機能や特徴を備えつつ、他社の製品とは異なる独自性を強調する必要があります。品質、デザイン、技術革新、ブランド価値などが差別化の要因となります。
3)競争戦略:
 ニッチ戦略は、競合他社がニッチ市場に参入しにくい場合に有効です。競争が激しくないため、価格競争にならずマーケティングコストも低く抑えられます。ところが、 差別化戦略になると、高品質や独自性を維持するための継続的な努力が必要になります。競合他社も同様の差別化を試みる可能性があり、競争は激しく、価格競争やマーケティングの創造性が求められます。

まとめ

「ニッチ戦略」と「差別化戦略」は、異なります。その違いを理解しないと、大きなリスクを抱えこむ恐れがあります。「ニッチ戦略」は、どんな企業でも立てることができます。
ニッチ戦略を立て、その後の発展のための3つのステップがあります。
1)「ニッチ市場」を理解する
2)「ニッチ戦略」を作る
3)「ニッチ戦略」を「差別化戦略」に発展させる
小さくても事業が長く継続している会社は、何らかの「ニッチ戦略」を持っていると考えることができます。自社の「ニッチ戦略」を上記のような観点で見直し、更なる発展のヒントを見つけられることを期待します。

参考記事:企業の「差別化戦略」は、「伝説」を作れるかどうかで決まる!

最強の差別化戦略とは、マーケティングの4Pのうち「プレイス戦略」

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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