新規事業や起業の失敗原因となる「確証バイアス」の怖さ
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新規事業や起業の失敗原因となる「確証バイアス」の怖さ
新規事業や起業の失敗原因となる「確証バイアス」の怖さ
「新規事業を立ち上げたが儲からない」
「成果の上がらないサービスをやめられない」
「起業コンテストに入賞したのに事業としてうまく行かない」
こんな「うまく行く」と信じたアイデアをもとに始めたビジネスやサービスが、必ずしもうまく行かない例が世間には沢山あります。「イノベーション」と呼ばれるほどのモノやサービスを開発しても、事業化の段階で失敗することがよくあります。「新規事業や起業は失敗して当たり前」などと簡単に片づけ、「またトライすればいい」「試行錯誤を続けるだけ」という評論家がいますが、トライした本人のダメージは計り知れないものです。
できれば、「うまく行く」と信じたアイデアで始めたビジネスやサービスを成功させたいものです。新しいアイデア、ビジネスモデルで始めたことが、失敗するのは、アイデアそのものが悪いのではなく、オリジナルのアイデアやモデルに拘ることで柔軟性を失い、ユーザーに適応できなかったことが原因となるケースが多くあります。そこには、「確証バイアス」が強く関わっています。
「確証バイアス」(confirmation bias)とは、人々が自分の信念や仮説を支持する情報を選び、反対の情報を無視または軽視する傾向のことです。
例えば、新商品の開発者が、「自分のアイデアが革新的で市場に受け入れられる」と強く信じているため、実際に市場調査を行ったとしても、商品に対する肯定的な意見だけを重視してしまうようなことが起きるのは、「認証バイアス」の影響です。
「認証バイアス」は、新規事業や起業における「アイデアに対する思い込み」からの失敗の他、行政の行っている「効果がほとんどないサービス」をやめられない原因にもなっています。数多くある地方創成の施策、様々な子育て支援策等々は、全体として「ほとんど効果ない」にも関わらず、部分的にでも「効果があった」ことを理由として継続されています。そこには、「認証バイアス」により客観的情報を受け入れることができず、行政側に「自分達の立案した施策は効果がある」という「思い込み」が大きく関わっています。
「確証バイアス」は、新規事業が失敗したり、効果のない施策がやめられなかったりすることの原因になり得ます。それは、以下の3つの理由があるからです。
1)評価の誤認
2)批判の無視
3)専門家や投資家反応の過大評価
これらの認証バイアスによる影響に加え、様々なバイアスが重なることで、新規事業が失敗したり、効果のない施策がやめられなかったりといったことが起きます。
自分のアイデアにほれ込み過ぎて、周囲が見えなくなる「認証バイアス」が、失敗をもたらす怖さを認識しておくことが重要です。
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「認証バイアス」による評価の誤認
創業者や新規事業の立案者が、自分のアイデアに対して「必ず市場に受け入れられる」と強く信じてしまうことがあります。これは、「認識バイアス」が掛かった状態で、実際に市場調査を行っても、自分のアイデアに対して肯定的な反応だけを重視し、否定的な反応や批判的なフィードバックを無視することになりがちです。その結果、実際の市場ニーズとはかけ離れたモノやサービスを開発することになります。
また、会社や行政の様々な施策においても、立案者や担当者が「既存の施策が効果的である」と強く信じている場合、その信念を支持する情報やデータを優先的に探し選ぶことが起きます。例えば、施策の一部がうまくいったケースや、短期的な成果を強調するデータを重視し、長期的な失敗や全体的な効果の欠如を無視するといったことです。
会社内や行政の行っている施策で、「効果のないこと」がやめられない原因も「認証バイアス」の影響していることがあります。
「認証バイアス」が、批判を無視させる
「認証バイアス」の影響で、モノやサービスに対して、ユーザーからの批判や問題点の指摘を無視する状態に陥ることがあります。この結果、モノやサービスの欠陥や改善点を見落とし、最終的にはユーザーに満足してもらえない結果を招きます。
また、「認証バイアス」は、組織の仕組みや役所の様々な施策においても、批判や反対意見に対して、それを無視したり軽視したりさせます。多くの人が、その効果に疑問を抱き疑問を投げかけても、「聞く耳を持たない」ということになります。
組織内において創業者や新規事業の立案者が、自分のアイデアに固執した結果、他のメンバーの異なる意見や批判を排除し続けた結果、他のメンバーが批判することもやめてしまう恐れがあります。そして、多様な視点が失われ、偏った意思決定がなされて行くことになります。
「認証バイアス」を強化する専門家や投資家反応の過大評価
商品を市場に発表したとき、そのアイデアや新規性に対して、専門家や投資家から好意的な反応を得た場合、それが「確証バイアス」を強化することになり、自分のアイデアの正当性を過信してしまうことがあります。しかし、実際には専門家や投資家の意見が市場全体の反応を反映しているわけではなく、商品が商業的に失敗することも有り得ます。
2010年頃のことですが、私の所属していた会社で、画期的な液晶パネル用のアルミ合金を開発したことがありました。従来は、液晶パネルで使用される配線は、スパッタリング装置で2層もしくは3層構造作らなくではなりませんでした。ところが、開発したアルミ合金は、これを1層で達成し、大幅なコストダウンと性能アップが実現できます。この合金を発表すると数々の発明賞や業界のイノベーション賞などを受賞。ビジネスとして大いに期待されました。そして、本格的な販売に乗り出したのですが、ほとんど売れませんでした。数年後、液晶パネルの配線材料の主役は、大型パネル用は高純度の銅、小型パネル用は安価な純アルミと2極化し、何でも使える開発品のアルミ合金は日の目を見ることもなく市場から消えていきました。
数十億円の金をかけて開発し、専門家や業界の評論家から高い評価を受けたことで、すっかり新商品を開発者たちが過信してしまい、市場全体の変化を見逃してしまった痛い経験です。
まとめ
自分のアイデアに対する思い込みである「確証バイアス」は、新規事業を失敗させたり、効果のない施策を続けさせたりすることの原因になり得ます。
1)評価の誤認
2)批判の無視
3)専門家や投資家反応の過大評価
これらの認証バイアスの影響に加え、他の様々なバイアスにより、新規事業が失敗したり、効果のない施策がやめられなかったりといったことが起きます。
自分のアイデアにほれ込み過ぎて、周囲が見えなくなる「認証バイアス」が、失敗をもたらす怖さを認識しておくことが失敗を減らす上で重要です。
参考記事:成功事例の話では、「生存者バイアス」がかかりやすいと心得よ!