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消費大国米国と比較してわかる、日本が「低欲望社会」であることの3つの理由

 
消費する米国人のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

消費大国米国と比較してわかる、日本が「低欲望社会」であることの3つの理由

 

日本が「低欲望社会」であることの3つの理由

「私は、特に欲しいものはない!」
「小さなヒット商品はあっても、高額な消費がない」
こんな現象が、日本の経済を苦しめています。
「大企業は、利益を上げても、大型投資には向かわない」
そんな、状況が長く続いています。
1990年代までは、家電、車、住宅と大きな消費が、経済を牽引していました。ところが、人口減が始まり、大型消費材の普及が一段落すると、わずかな買い替え需要や旅行といった消費ぐらいしか目立ったものはありません。高齢者は、お金を使うことなく、金利がほとんどない銀行預金や郵便貯金として保有しています。
日本全体が、消費をしない状況にあります。
大前研一氏は、これを「低欲望社会」と呼んでいます。日本全体で、年齢に関わらず個人の消費意欲は低く、積極的な投資をする会社も少数派になっています。
更に、SDGsに連動した「持続可能な社会」と言う考え方は、消費や投資を心理的に抑えこんでいるように思えます。
資本主義社会で、「経済が好調」とは、
1)個人が活発に消費する。
2)企業の収益が増え賃金が上がる。
3)増えた賃金で更に消費が増える
  企業増収が投資に向かう
といったサイクルが回ることです。日本の高度成長期や米国の好調期には、正にこのサイクルが回っています。ところが、日本では、この数十年、個人のカネは貯蓄に向かい、企業のカネも内部留保として眠っています。
参考記事:読売新聞オンライン:「企業の内部留保、9年連続で過去最高更新…前年度比2%増の484兆円」
読売新聞オンライン:「個人の金融資産2005兆円、現金・預金が54%…9月末時点」
GDPの内、個人消費の占める割合は、約60%です。個人が消費を増やさない限り、経済が良くなることはありません。ところが、政府の行う景気対策は、
「今、カネを使わないと損だ!」
という感覚が感覚を抱かせるものがありません。例外的に2020年に実施されたGO TO トラベル」は、直接消費を促すものでした。他の施策といえば、苦しい企業の支援、電気、ガソリンの価格抑制費用など消費を促すものではありません。政府が景気対策を打ち出して消費が増えるかどうかは、個人の気持ち次第です。「低欲望社会」である今の日本では、大きな消費拡大が期待できない状況にあります。
日本が、「低欲望社会」であることは、疑いの余地がありませんが、その原因は、様々なようです。日本人の気質と言う人もいれば、賃金が上昇しないから、老後に不安があるからなど、諸説あります。
日本の経済を低迷させている「低欲望社会」の原因を私は、以下の3つを挙げます。
1)将来に対する不安
2)中古資産の低評価
3)消費に対する倫理観
これらは、消費大国の米国と比較して感じることです。米国で暮らし、米国人の平均的な人々の考え方に接して感じたことを記事にしています。大学の先生や経済評論家など経済の専門家とは、やや異なる視点であることを考慮して記事をお読みいただけたらと思います。


低欲望社会 ~「大志なき時代」の新・国富論~(小学館新書)

将来に対する不安

「老後2000万円問題」
が世の中で騒がれたことがあります。これは、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書をきっかけとした老後の資金に関する問題です。報告書の中に「老後20~30 年間で約1,300 万円~2,000 万円が不足する」という試算が含まれていたため、「老後2000万円問題」として注目を集めました。この結果、
「老後のために、無駄な消費は控えよう」
という気持ちが、不安と共に広がりました。
参考記事:朝日生命「老後2000万円問題とは」
いくら資産をもっていても、毎月の収入が横ばいで増えなければ、消費心理が生まれません。残念ながら、日本の賃金は、最近でこそ上昇していますが、基本的には過去30年間上昇していません。むしろ下がり気味でした。また、預金金利が低く抑えられています。
これで、大きな買い物をしようという気にはなりにくいものです。
これに拍車をかけるようにマスコミが、社会不安を煽るような報道をします。例えば、
「インフレ」「少子高齢化」「医療費の肥大」「国債増」「年金不足」
などです。
米国で401Kと言われる確定拠出型年金を月450ドルほど払っていた友人が、30年間働いて、月2500ドルほどの年金をもらっています。この間、米国の株高の影響で年金の運用成績が良かったという幸運にも恵まれていますが、真面目に積み立ていれば、それなりの老後が保証されています。この友人は、中堅企業の平均的サラリーマンでしたが、月々の掛金さえ払えば、あとは全て消費しても、老後の不安は感じなかったようです。
この401Kは、自分の掛け金を自分で受け取る仕組みです。運用成績により支給額は変わりますが、人口の構成変化で年金が将来減るなどの心配は一切ありません。
日本の若い人の「将来の年金支給額に対する不安」のインタビューなどを聞くと、消費が思うように拡大しないことに納得してしまいます。現実の国民年金や厚生年金は、それほど心配する必要がないのですが、支給開始年齢の引き上げや未納者の話で不安を煽っているように思えます。

中古資産の低評価

米国の消費を支えているのが、住宅です。住宅を買えば、家具や電機製品、車も買います。そして、家族が増えるとより大きな家、余裕があれば、別荘を買います。また、子供が独立すれば、少し小ぶりの家にしたり、温暖な地域に家を買ったりします。
米国では、生涯で家を数回買い替えることが普通です。実は、家を買う、車を買う、人によってはボートを買うことは、一種の投資になっています。
全米の平均的である中西部ミシガン州、オハイオ州、ペンシルベニア州において、自分で家を買ったり、友人が家を買うのを手伝ったりしたことがあります。そこで、気づいたのは、日本と大きく違い、買った家の価格が日本のように下落しないことです。
一戸建ての住宅だと、建築後5年から15年経過したものが最も高く、その後もメンテナンス状態によりますが、30年経過してもそれほど、下落しません。数年前の例ですが、建築後30年が経過した家を購入した際、水回り更新と壁紙の張替え程度の改修をした家の価格は、新築とほとんど変わりませんでした。(土地価格を除いて)
これが、日本の一戸建てだと、家の評価は木造なら20年もすれば、ほぼゼロです。土地価格が上昇していた1990年頃までは、それでも全体価格は維持できました。しかし、今は土地価格の上昇がほぼゼロですので、家屋評価額の下落分だけ下がります。
米国人が家を買うのは、快適な生活をすると同時に、資産としての価値があるからです。日本の中古住宅の評価が低すぎます。
「持ち家が得か、借家が得か」
の議論がでるのは、日本ならではです。カネがあれば、家を買い、10年程住んで家族構成が変われば、その家を高く売って、次の家を買うということが、米国では当たりまえです。ニューヨークのような大都会を除けば、米国で借家やアパートを探すと、数が少なく、極めて割高です。米国の不動産屋に
「2~3年住むだけだから借家でいい」
と言っても
「家を買って、2~3年後に転売する方が絶対に得」
と家を買うことを勧められます。
日本でも、「家を買うことは、資産を増やすこと」にならなければ、住宅購入は増えないでしょう。
住宅と同様に、日本では中古車価格が極端に安い状況があります。最近半導体不足で、新車の供給が遅れ、中古車価格も上昇気味ですが、それでもかなりの低価格です。
米国では、新車を買って、1年ごとに5~10%位価格が下がりますが、メンテさえしっかりしていれば、10年後では新車価格の30%程度は維持されています。人気の車種では、逆に値が上がることさえあります。
家、車に限らず、宝石や楽器などの中古市場が充実し、家や車、高級品を買うことが、資産形成の意味を持つようになると「消費」が増大することが期待されます。

 

消費に対する倫理観

「無駄遣いは、悪」
これは、子供の頃から叩きこまれたことです。子供が、小遣いをもらって
「貯金します」
と言うのは、日本位かもしれません。
残念ながら、教育のなかで「カネの使い方」を学ぶ機会はありません。親や友人など周りの人を見ながら、カネの使い方を身に付けることになります。
日本では、家計は奥様が握っていることが多いようです。それが、旦那様だとしても、給料として銀行に振り込まれたカネは、家計を握る人が管理します。その瞬間、自分で稼いだカネであっても、家庭内の公金になります。すると、
「自分で稼いだカネだから、どう使おう勝手」
という理屈が通らなくなります。小遣いの範囲でしか自由がきかず、個人の好みで大きなカネを使うことが出来にくくなります。たとえ、旦那が稼いだカネでも
「家族のため」
といった大義名分がなければ、自由に使えないことになります。
米国の夫婦では、たとえ旦那が家計を握っていても、自分で稼いだカネは、自分で自由にできるという意識があるようです。
どんなプロセスで得たカネであっても、カネの価値は同じです。ギャンブルで得た泡銭でも、長年コツコツ仕事が稼いだお金でも、金額が同じなら同じ価値です。ところが、様々な心理的要因で、コツコツ稼いだカネが尊いような感覚になります。
同様に、カネの使い方も、どう使おうと金額が同じなら同じです。カネの使い方に良し悪しは、ありません。しいて言えば、本人が満足するかどかがです。
落語などでは、長年貯めたお金を一晩で、吉原遊郭で使ってしまう話が出てきます。また、出世し財を成した人が、その財産の多くを公共施設や学校に寄付する方もいます。それぞれ、「見事なカネの使い方」だと思います。
消費に対して、良し悪しを問わないことだと思います。周りに、見事なカネの使い方をする人がいたら、大いに参考にするべきだと思います。
感覚的な話しで、(根拠が薄いかも知れませんが)、見事なカネの使い方をする人の周りには、その影響を受けてか、見事なカネの使い方をします。固定観念としての消費に対する倫理感より、自分が満足するカネの使い方を優先すべきだと思います。
これは、個人の偏見ですが、財務省の役人の計画するカネの使い方は、
「バランス優先のケチ臭さ」
と感じます。明治政府は、途方もないカネを鉄道建設や製糸工場、製鉄所に使いました。これらは、今となっては夢物語でしょうか。

まとめ

日本の経済を低迷させている「低欲望社会」の原因を以下の3つと考えます。
1)将来に対する不安
2)中古資産の低評価
3)消費に対する倫理観
これらは、消費大国の米国と比較して、消費者心理の違いを強く感じるポイントです。これらを克服することが、日本経済復活に繋がると期待します。

参考記事:目を覆いたくなる、日本の低い労働生産性の現実(日本の生産性2)

会社に必要な3つの「強み」は、「商品力」「ビジネスモデル」「適応力」

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