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ビジネスモデルコンテストで入賞することと起業が成功することは違う

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

ビジネスモデルコンテストで入賞することと起業が成功することは違う

 

ビジネスモデルコンテストは経営を評価するものではない!

日本中で、毎年数多くのビジネスコンテストが開催されています。ビジコンDBの「スタートアップビジネスコンテスト一覧 」によれば、2024年の上期だけでも46ものビジネスモデルコンテストが紹介されています。これに記載されていないコンテストを含めるともっと多くの数のコンテストが開催されていることが推察されます。
これらのコンテストでは、応募した個人や団体について、書類による1次審査、プレゼンテーションによる2次審査で、入賞者が決めるといったパターンが多いようです。ネット上には、多くのビジネスモデルコンテストのプレゼン審査動画が公開されています。いずれのコンテストでも、入賞者が行うプレゼンの素晴らしさに感心させられます。入賞者は、着想の面白さ、新規性、差別化など、審査の評価項目を満足しているのですから当然なのかも知れませんが、どのモデルもすぐにでも起業でき成功しそうとさえ思えます。
ところが、その後入賞者が起業したか、起業後順調に業績を伸ばしているかというと、必ずしもうまくいっていないのが実情です。
実際にビジネスモデルコンテストで入賞した方々の経営診断を経営士会のメンバーとしてしたことがあります。コンテストの入賞者だけに、そのビジネスモデル(アイデア)は面白いのですが、経営という視点から見ると
「どこからお金を稼ぐの?」
「運営に必要なスタッフをどうそろえるの?」
「自分自身を含め人件費はどう見ているの?」
といった基本的問題を抱えていることがしばしばです。また、コンテストで発表したビジネスプランに縛られて柔軟性を欠いていることもありました。その結果、コンテストに入賞したけで起業できない、起業したけで経営に行き詰っているということが起きています。
ビジネスモデルコンテストで入賞しても起業や起業後の経営がうまくいかない理由が3つあります。
1)ビジネスモデルコンテストの主催者には、それぞれ目的がある
2)コンテストの審査は、経営力を見ているわけではない
3)起業の目的が失われやすい
これらを考慮して進めなければ、起業して経営を続けることは難しくなります。
ビジネスプランコンテストに関わらず、自分自身いいアイデアを思いつき、起業したり事業化したりしようとするときも、やりたい目的と経営力が必要であることを認識しておくことが必要です。

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ビジコン主催者には、それぞれ目的がある

ビジコン主催者には、コンテストをする目的があります。代表的なものを以下に挙げます。入賞者は、この目的に沿った合致したビジネスモデルを持っていることが評価の大きな要素であることを認識しておく必要があります。
1)行政
地域の経済を活性化させることが主目的です。これに女性活躍や政策目標(DX推進、SDGs推進など)を加味した目的です。
2)大学
大学が主催するビジコンは、学生教育として、起業家精神を養い実践的なビジネススキルを身につけさせる。大学と企業の連携を深め、研究成果の商業化を促進する。研究者や学生に対して研究資金を提供するといった目的があります。
3)金融機関
有望なスタートアップやビジネスアイデアを発掘し、投資先としての候補を見つけるため。新しい顧客(企業や起業家)との関係を築くため。地域経済の発展を支援し、金融機関としての社会的責任を果たすため。
4)一般企業
新しいビジネスアイデアを内部に取り込み、事業化を目指すため。イノベーション文化を社内に根付かせ、企業全体の競争力を高めるため。社会貢献活動の一環として、地域や社会の課題解決を支援するため。企業ブランドイメージの向上のため。

コンテストの審査は、経営力を見ているわけではない

ビジネスプランコンテストでは、主催者のみならず、著名なコンサルタントや大学の先生が審査員になっていることが多いものです。審査員の方々は、その分野専門家ではありますが、必ずしも経営の専門家ではなく、経営の実務経験のない方もおられます。
その結果、どうしてもビジネスモデルに焦点を合わせた審査が行われます。着眼の面白さ、新規性、差別性などから見たビジネスや商品の評価が中心になります。
ところが、実際に起業し経営していくために必要なことは、審査の注目点とは異なることが沢山あります。ビジネスモデルで語られる部分とは異なる、泥臭い部分です。
冒頭の例に挙げた実際にビジネスプランコンテストで入賞した方のコンサルタントをしたときは、企業や団体経営の基本的リソース(ヒト、カネ、モノ、情報)が十分でなく、起業1年後には資金不足に陥る、商品が売れ出したら人手がたりないといった例が見られました。ビジネスモデルと経営とは違うということを十分に認識しておく必要があります。
また、自分のビジネスモデルの拘ることは、成功の為に必ずしも悪いことではありませんが、「確証バイアス」により、他のアイデアが見えない、人に批判を受け入れられないといった弊害が生じることもあります。市場の状況、技術の進歩により、ビジネスモデルを取り巻く環境は、刻々と変化していいます。当初(コンテスト応募時)のビジネスモデルが、今も最適かどうかは、よくよく注意しておく必要があり、モデルを変更するといった柔軟性を失わないようにしておくことです。

起業の目的が失われやすい

ビジネスプランコンテスに入賞するような個人や団体が陥るのが、起業の目的を失うことです。

多くの場合、「自分のビジネスプランを実現すること」が、目的になってしまっています。本来、ビジネスモデルは、起業の目的を実現する手段です。起業の目的は、従来ならば
「金儲け」「社会的地位の確立」
といったことが多かったのですが、今ならこれらに加えて、
「自己実現したい」「貧困を救いたい」「SDGSを実践したい」
といったことを挙げる起業家も増えています。「何のために起業するのか」という起業の目的は、起業プランを作成するときも、起業した後も常に点検する必要があります。ことによったら目的を達成するためには、当初考えたビジネスモデルを捨てる必要が出てくることがあるかもしれないことを覚悟しておくべきです。

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まとめ

ビジネスモデルコンテストで入賞しても経営がうまくいかない理由が3つあります。
1)ビジネスモデルコンテストの主催者には、それぞれ目的がある
2)コンテストの審査は、経営力を見ていない。
3)起業の目的が失われやすい
これらを考慮して進めなければ、起業して経営を続けることは難しくなります。

参考記事:新規事業や起業の失敗原因となる「確証バイアス」の怖さ

歴史的に見て、儲かり続けている5つの普遍ビジネスモデル

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