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「品質」、「コスト」、「納期」(QCD)の優先順は、お客様によって決まるもの

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「品質」、「コスト」、「納期」の優先順は、お客様によって決まるもの

 

「品質」「コスト」「納期」の優先順を決めるメリット

モノやサービスを提供する上で、「品質」「コスト」「納期」は、大きな要素です。この3つを英語では、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)となり、3つの頭文字を並べてQCDと言われます。QCDは、モノやサービスの提供者にとって、欠かすことのできない重要な要素です。提供者は、どの要素も可能な限り向上させようと努力が重ねています。
しかし、すべてを同じように向上させることは困難です。モノやサービスを提供する会社や店は、時と場合によって、QCDの各要素の優先順を考慮しなければなりません。これが、生産や業務遂行の上での重要な管理ポイントです。
QCDの優先順は、モノやサービスの提供者が生産や業務を遂行する上で指針とするものですが、それを決めるのは、お客様の要望です。
例えば、100円ショップ」では、100円という価格(C)内で、よりよい品質(Q)が求められます。客にとって、そこに品物があること(言い換えると「納期」)(D)も大切ですが、なければ、他で買うこともできます。「100円ショップ」のお客様は、CQDという優先順を求めているのです。店側は、お客様に要望に沿って、品揃えをすることになります。
QCDの各要素の優先順を明確にし、社内外にアピールすることには、大きなメリットがあります。
1)競争力強化
2)社内方針の共有化
3)お客様への「言い訳」効果
といったことです。
近年は、従来のQCDを進めて、更なる要素を付加した考え方があります。例えば
QCDS:Sは、Safety(安全)やService(顧客対応)
QCDE:Eは、Environment(環境)
といったものです。これらのケースも含めて、QCDの優先順は、モノやサービスの提供者が一方的に決めるものではなく、お客様の求めている優先順によって、決めていくことが大切です。


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お客様の要望が決めるQCDの優先順の例

「うまい、やすい、はやい」
は、牛丼チェーン吉野家のキャッチコピーです。これをQCDの要素でみると、うまい(Q)、やすい(C)、はやい(D)の順になっています。
ところが、これは店側が決めたものではありません。当初は、
「はやい、うまい」
が売りだったとのこと。つまり、D、Qの順です。それは、吉野屋が東京・日本橋市場が創業の地であり、もともと河岸の職人に牛丼を提供する店だったことに由来します。当時、牛肉は高級食材だったため「やすい」という感覚はなかったようです。加えて、お客様である河岸の職人は舌がこえ、値段よりも「はやい」と「うまい」を求めていたことから「はやい、うまい」が売りになったとのこと。
その後、日本が高度成長期に入り、吉野家の牛丼は「モーレツ社員」と言われるサラリーマンに支持されていきます。牛丼が大衆化する中で、
「うまい、やすい、はやい」
というキャッチフレーズが生まれました。このフレーズは、吉野家が決めたものではなく、お客様が言い出したものであるとのことです。
参考記事:(「吉野家流パーセプション戦略」

自動車会社を顧客としている材料メーカーのスローガンに
「品質と納期を守って、コストミニマム」
というのがあります。この会社が納める材料に不良品が出たり、納期遅れを出したりして、自動車の生産ラインを止めてしまった痛い経験があります。その結果、品質(Q)、納期(D)、コスト(C)という優先順が確立しました。
不良材料を出荷して、車に組み込まれ、それが原因で事故を起こすことが一番怖い。納期遅れで、自動車工場のラインを止まるのが、その次に怖い。儲かるかどうかは、最後という訳です。

 

QCDの優先順を明確することによるメリット

QCDの優先順を社内外に明確にしておくことにはメリットがあります。そのいくつかを以下に紹介します。

1)競争力強化

QCDの明確な優先順を持つことで、製造プロセスや業務プロセスを最適化する方向性が明確になります。これにより、無駄なコストを削減し、リソースの効率的な活用が可能となります。
また、販売においても「何が強み」なのか明確にできます。高級なブランドであれば、品質(Q)優先です。「100円ショップ」であれば、安さ(C)が売りです。修理であれば、はやさ(D)が、優先順1位です。

2)社内方針の共有化

QCDの優先順を定めることで、目標設定や業績評価が明確になります。組織内で一貫した方針を持つことで、メンバーは目標に向かって連携しやすくなります。
また、どの要素に優先順位を置くかが明確であれば、トラブルが生じたときなど、リスク回避のための判断がシンプルになります。
例えば、先ほど例に挙げた材料メーカーで、いつも使っている原料が入手できない事態に陥ったことがありました。他の代替え原料もありますが、品質や価格に不安があります。この時、作業責任者が決断したのは、「品質と納期を守ってコストミニマム」というスローガンに基づくものです。自動車会社のラインを止めないために、実績のある原料(自動車会社が認めている)で、納期が間に合うものを使いました。コストは、後から交渉するということで、代替えの原料で難局を切り抜けました。もし、このスローガンがなければ、製造部門、原料の購買部門、営業部門で重きを置く要素が違うので、調整に手間取ったと想像できます。

3)お客様への「言い訳」効果

「当社の製品は、少々お高いですが、厳選された素材と時間をかけた製法で、高品質の鞄をお届けします」
このメーカーは、明確にQDCという優先順をお客様にアピールしています。言い方をかえれば、
「いい品ですので、高いですよ」
と「言い訳」しているのですが、初めに宣言しておけば、お客様は大いに満足してくれます。
鉄道会社など輸送関係では、QCDSという要素があります。安全(S)で、ダイヤ通り(D)、安く(C)、快適(Q)に乗っていただくのは、通勤電車における優先順でしょうか。大雨や地震などトラブルがあったとき、
「安全を優先して電車を止めます。」
とアナウンスされれば、乗客は納得せざるを得ません。「ダイヤ通り」、「安く」が優先していますから、不快な混雑も我慢してもらえます。ただし、体調を崩すほどの不快感は、許容できませんが。(むしろ「安全」優先に反します)

まとめ

モノやサービスを提供する上で、「品質」(Q)「コスト」(C)「納期」(D)は、大きな要素です。QCDの各要素の優先順を明確にし、社内外にアピールすることには、大きなメリットがあります。
1)競争力強化
2)社内方針の共有化
3)お客様への「言い訳」効果
といったことです。
QCDの優先順は、モノやサービスの提供者が一方的に決めるものではなく、お客様の求めている優先順によって、決めていくことが大切です。

参考記事:生産性の向上に役立つ「測定できないものは計測できない」という「MORSの法則」

仕事の「ムダ」を見つけて、業務効率化を図る3つのポイント

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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