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すんなり就職した日本の若者が、アイデンティを確立しにくい理由

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

すんなり就職した日本の若者が、アイデンティを確立しにくい理由

 

日本の若者がアイデンティを確立しにくい理由

「仕事が自分と合っていないようなので辞めます。」
「人と関わる仕事がしたいので転職します。」
入社後数年の内に、こんなことを言って辞める社員がいます。入社前に会社での仕事の概要は説明し、本人も納得して入社したのに
「今の仕事は、自分がやりたいことではない」
と言って会社を去っていく社員が、毎年のようにいます。就職難の時代なら少々の不満でも我慢して勤務を続けるのでしょうが、景気が良くなり求人が多い時代になると転職者が増えます。
退職届を出した社員と話をすると
「会社そのものに、不満があるわけではない。でも、今の仕事は自分に向いていない。」
「自分のやりたいことではない。」
といった声が出ます。
「今の仕事が嫌なら、異動を考えようか」
「勤務地を変えてもいいよ」
と提案しても、曖昧な答えしか返ってきません。今の職場や人間関係が嫌なのは事実のようですが、
「本当は、○○がしたい。」
「自分は、○○な人間なので、転職したい。」
といった主体的で具体的な言葉はあまり出てきません。カウンセラーをお願いしている先生によれば、
「まだ、自分のアイデンティティ(identity)が、確立していないのですよ」
との話。
アイデンティティとは、ごく簡単に言えば「自分とは何者なのか」「これこそ自分であると言える何か」「自分らしさ」ということです。
自分が、米国や中国で仕事をしていた経験での話ではありますが、日本の若者が他の国の若者と比較して、
「自分が何をしたいのか」
「自分は、何者であるか」
といったアイデンティティに関わることが曖昧であると感じます。
日本の若者が、アイデンティティを確立しにくい理由がいくつかあります。
1)大学選択や就職先選択の問題
2)学生時代の勉強が会社で活かされない
3)キャリアパスが分からない会社
日本で教育を受け、順調に日本企業のサラリーマンになった人ほど「自分が何者であるか」「自分らしさとは何か」を考える機会が少ないかも知れません。
アイデンティティを確立できていないと、仕事や生活において、
「何か、本当の自分とは違うことをしている」
との思いで過ごすことになります。その結果、離職者が増加に繋がることになります。
この記事では、日本の教育や会社の採用方法のアイデンティ確立に及ぼす影響を考えてみます。

 

大学選択や就職先選択の問題

文科省が中心になって高校の多様化が叫ばれ、様々な科目が教育に取り入れられています。しかし、「進学校」と言われる高校では、大学受験を中心とした勉強が中心です。どんなカリキュラムが用意されていても
「受験科目以外は、どうでもいい」
というのが実態です。履修科目は大学受験に合わせたものが選ばれ、物理や日本史など難しいと言われる科目を避けることが多くなっています。(最近の高校での物理履修率が、15%程度のとの報告があります。文科省:「高等学校生の文系・理系の選択状況について」
大学を選択するにあたり、医学系を希望する生徒を除くと
「合格できそうな大学、学科を選ぶ」
という高校生が多いようです。
「合格できそうで、最もブランド力のある大学を選ぶ」
というのが、学習塾や予備校の指導方針です。
大学や大学院の卒業/修了後、就職先を選択するときにも、大学選択と同様なことが起きます。特に文系の学生にとっては、
「入れる会社に入る」
「まず内定をとって、その中から選ぶ」
といった選択の仕方になりがちです。
「社会人として○○をしたい」
なんて贅沢は言ってはいられません。
「入れそうな会社で、世間でより高い評判会社に入る」
ということが選択の基準になっています。
こうして、大学を選び、会社を選んでいく中で、どの段階においても自分のアイデンティティを確立することなく、企業に入り仕事を始めるということになります。

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大学の勉強が会社で活かせない

日本企業は、終身雇用年功序列制が基本にあるため、大学や大学院を卒業/修了した学生に対して「専門性」よりも、「適応力」「伸びしろ」を期待して採用します。理想を言えば、素直で明るく、コミュニケーション力と理解力のある学生が理想です。あとは、
「入社後なんとでもなる」
と考えています。
「私は、こんな人間である」
なんて妙なアイデンティティを持った人は、扱いにくい人間としてあまり歓迎されません。企業は、新入社員が大学や大学院で学んだ専門性を活かすなど期待していません。
米国人に対して、日本の採用基準は、
「学生時代に何を勉強したかより、どんな部活やサークル、バイトやボランティアをしたかということが、大きな比重を持っている」
と説明したことがありましたが、全く理解できないといった様子でした。

キャリアパスが分からない会社

採用活動をする企業は、会社の事業内容や社員の待遇を必ず説明します。しかし、その会社に入って、どんなキャリアパスがあるかを説明することは、ほとんどありません。
「どんな職場を経験し、何年目で管理職になるか」
「どんな基準で、管理職に昇進するのか」
そんな入社後のキャリアを説明する会社はまずありません。せいぜい、入社後どんな職場に配属される可能性があるかぐらいかを説明する程度です。それでも、
「希望は、聞きますが、最終的にどこに配属されるか分かりません」
といった程度の回答をする企業が大半です。
説明しないのではなく、説明できないというのが本当のところかも知れません。年功序列制が基本の昇格・昇進ですので、順調なら入社何年目ぐらいで、管理職や部長になるといった目安はあるのですが、それ以外は企業自体プランがないという会社の方が多いのではないでしょうか。学生が、
「どうしたら、出世できますか」
と会社に訪ねても答えようがないのが本当のところです。もし、
「こんな実績を挙げれば、30代でも部長に成れます」
「専門技術や技能があれば、部長並みの処遇を用意します」
といったことが会社から説明できれば、働く人の気持ちは違ったものになるかも知れません。

まとめ

日本で教育を受け日本企業に就職し、サラリーマンの道を順調に歩んできた人ほど「自分が何者であるか」「自分らしさとは何か」といったアイデンティティを確立する機会が少ないものです。
日本の若者が、アイデンティティを確立しにくい理由がいくつかあります。
1)大学選択や就職先選択の問題
2)学生時代の勉強が会社で活かされない
3)キャリアパスが分からない会社
アイデンティティを確立できていないと、仕事や生活において、
「何か、本当の自分とは違うことをしている」
との思いで過ごすことになり、離職者が増加に繋がることになります。
参考記事:挑戦せずに「何もしない方が得」なのは、日本の制度や暗黙のルールのせい

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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