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イノベーションとは、「これまでなかった指標」を見つけること!

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

イノベーションとは、「これまでなかった指標」を見つけること!

 

イノベーションとは、「これまでなかった指標」を見つけること!

「走行距離あたりのCO2排出量」
「お客様のリピート率」
「ホームページのクリック率」
こんな具合に世の中、様々な指標が溢れています。指標は、提供されるモノやサービスの質や量を表し、消費者の購買の参考になったり、提供者の指針になったりします。
例えば、かつて車の燃費は、「定地走行燃費」がカタログに載っていました。時速60Kmで走行したときの燃費です。メーカーは、この数値の向上を目指し、消費者は購入の参考にしました。ところが、実使用時との差が大きいとの批判が出て、「モード走行燃費」(10モード、10・15モード、JC08モードなど)が使われるようになりました。モード走行燃費には、加速、減速、停止などの条件が入っています。これで、アイドリングストップや減速時のエネルギー回収技術が評価されるようになりました。各自動車メーカーは、この指標を向上させるためのイノベーションを繰り返しています。
クロネコヤマト(ヤマト運輸)は、「翌日配達の達成率」の高さを売りにしてイノベーションを起こして、「宅配便」というジャンルをつくりました。
イノベーションについて、提唱者のシュンペーターは、
「既存知と既存知の新結合」
と定義しています。既存知から新しい組み合わせを見つけ、新しいものを生み出すには、視点を変えることが必要です。視点を変えるとは、新しい「指標」を見つけることです。ヤマト運輸は、お客様への「物が届くまでの時間」を指標にして、「翌日配達」を達成しています。
「測定できないものは、カイゼンできない」
とQC活動のテキストにはあります。同様に、
「イノベーションとは、『これまでなかった指標』を見つけること」
と言えます。新しい指標で、モノやサービスを定量的に評価し、これを向上させていくことが、ビジネスの成功に繋がります。
指標を見つけるには、3つの視点があります。
1)お客様の不満を指標にする
2)供給側の問題を指標にする
3)世の中のニーズを指標にする
例えば、コールセンターへの繋がり易さ、メールの処理時間、SDGsへの寄与などを定量的な指標にすることです。これらの指標を向上させることが、イノベーションに繋がります。
この記事では、イノベーションを指標という切り口で、実体験を基に考えます。

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お客様の不満を指標にする

「コールセンターが混雑していて、電話がつながらない」
「チャットによる問い合わせをしてみたら、受け答えがトンチンカン」
こんな経験が多くの人にありませんか。お客様には、モノやサービス自体の不満のみならず、その周辺サービスへの不満があるものです。ところが、周辺サービスへの不満は、供給者に気付かれにくく放置されがちです。この不満をモノやサービスの提供者に「見える化」し、改善することが、ビジネスを大きく変化させる可能性があります。場合によっては、イノベーションと言える変化にまで発展する可能性があります。この「見える化」が、「指標」を作るということです。
試験・分析会社のKは、毎日100件以上の引き合い(問い合わせ)が、営業部にあります。
「希望する試験・分析ができるか?」「納期は?」「金額(見積)は?」
といった内容です。営業部は、これを各試験場の担当者に連絡し、回答をもらった後、顧客に返事をします。技術的検討、試験機や必要な材料の確認、外注先の納期確認等で、回答には時間がかかります。業界でも、回答に数日かかるのは当たり前です。ところが、ある時、
K社さんは、『試験ができるか出来ないか?』だけの回答に1週間もかかるのですか」
と顧客から社長に直接クレームが来たことがあります。
「他社なら見積りも含めて3日もあれば、回答がくるのですが」
とのこと。あわてて調べてみると、K社では、引き合いから回答まで、即日から3週間の幅があり、平均で10日もかかっていることが判明。そこで、「回答待ち日数」という指標を作りました。そして、
「『試験が出来る、出来ない』は、即答」
「納期、見積りは、3日以内に回答する」
という目標を定め、毎日フォロー会議を開催しました。「回答待ち日数」を関係者全員が意識して処理するだけで、平均10日が6日になりました。しかし、それから短縮できません。そこで、過去の実績を素早く検索できる仕組み、必要部材の在庫管理システム、協力会社との連絡網を整備するなどを行い標準化していくことが必要になりました。これらに相当な労力と費用をかけることで実現しました。その後、
「試験・分析業界の『クロネコヤマト』を目指そう」
というスローガンの元、「回答待ち時間」の短縮が進んでいます。現在、「納期/見積り」の80%は、翌日までに回答できています。これによる売上増もありますが、最も大きな成果は、お客様のイライラ解消です。
「回答待ち日数」のように、お客様の不満を「見える化」する「指標」ができ、その目標を達成することが、イノベーションと呼ばれるようになることがある例です。

 

供給側の問題を指標にする

モノやサービスの供給側(会社)には、原料の過多過少、人員の過多過少、注文の過多過少、設備の故障、不良品、資金繰り、人間関係等々多くの問題が常にあります。本業に関することには、設備故障率、良品率、在庫量、定員、注文残など指標があります。これらの指標を30%、50%、100%向上させようとすると、それはイノベーションとなります。従来から使われている指標、例えば時間当たりの生産個数などを分解して、「新たな指標」を見つけることがカイゼンやイノベーションには有効です。
かつてトヨタは、プレス時間の短縮に当たって、金型の取り換え時間を「指標」にしました。当初、5時間以上かかっていたのが、1時間になり、10分になり3分と短縮されていきました。(「外段取り」の手法による)これが、生産方法のイノベーションとなりました。
現在、AI機能を搭載した監視カメラがあり、工場で働く人の動線の長さ、特異な動きを指標とすることができます。極めて稀な設備トラブルの発生頻度をも指標化できます。
AIを使わなくても、工場の従業員に万歩計(スマホの万歩計機能)を使って、1日の歩数を指標としたことがあります。小型機械の組み立て工場でしたが、部品置き場、組み立て場、工具置き場などレイアウトを変えては、組み立て作業に関わる歩数を計測しました。すると、製品の種類やレイアウトにより指標(歩数)が大きく変化することが分かりました。結論は、製品の種類によって、最適レイアウトがあるということでした。歩数30%減が、生産性20%向上に繋がった例です。
本業以外に使われる時間、たとえば、会議時間、メール対応、急な問い合わせ、人間関係の相談などは、長い時間を使っている割には、管理指標を設定している会社は少ないようです。その結果、全体としての労働生産性を下げてしまっている例が見受けられます。労働時間を以下の3つに分けて指標化すると生産性が上がる可能性があります。
1)直接労働時間:生産、販売の面談(リモートを含む)時間など
2)準直接労働時間:生産準備、手待ち、在庫整理、販売資料作成、見積り作成など
3)間接労働時間:給与・福利厚生関係時間、安全会議など

 

世の中のニーズを指標にする

「当社のプラスチック使用率を半減、3年後はゼロを目指します!」
「製造時のCO排出量を5年後に半減します!」
世界中で環境悪化や温暖化が問題になり、その原因としてプラスチックごみ、COが取り上げられています。そんな中、大手ファーストフードチェーンは、素早く容器やストローの脱プラスチックを宣言し、プラスチック使用率「指標」として掲げました。消費者や投資家に対する大きなイメージ作戦にしています。
「プラスチック使用率」「再生可能ジェット燃料(SAF)使用率」「CO排出量」「車の電動化率」等々、新しい指標が登場しています。これらの指標を使った目標を掲げ、達成しようとするとモノやサービスだけでなく、生産や提供方法などもプロセスを含めて大きく見直す必要が出てきます。正にイノベーションが必要です。SDGsなどは、必ずしも経済合理性に適合しているとは言えませんが、「エコな取り組みをしている会社」といったPR効果は絶大であり、PRをしない活動はマイナスだけが残ることになります。

 

まとめ

「イノベーションとは、『これまでなかった指標』を見つけること」
と言い換えることができます。新しい指標で、モノやサービスを評価しこれを向上させていくことが、ビジネスの成功に繋がります。
指標を見つけるには、3つの視点があります。
1)お客様の不満を指標にする
2)供給側の問題を指標にする
3)世の中のニーズを指標にする
新しい指標をつくり、モノやサービスを定量的に評価し、これを向上させていくことが、ビジネスの成功に繋がります。

参考記事:イノベーションの定義と中小企業における「イノベーション経営」

カイゼン活動から「イノベーション」を起こす3つのステップ

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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