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中小企業こそチャンスあり。「フルーガル・イノベーション」と「リバース・イノベーション」

2022/11/15
 
リープフロッグとゆでガエルのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

中小企業こそチャンスあり。「フルーガル・イノベーション」と「リバース・イノベーション」

 

「フルーガル・イノベーション」のすすめ

「売上が長い間伸びずにいる」
「じりじりと利益が下がっている」
そんな停滞期にある企業が現状を打開し、再び成長路線に乗せるには、イノベーションが必要であるとよく言われています。ところが、日本では、「イノベーション=技術革新」という認識があり、イノベーションを起こすには、技術開発が不可欠、大企業しかできないのではと思われがちです。
しかし、GAFAのやったような大規模で高度な技術を使ったイノベーションではなく、「フルーガル・イノベーション」「リバース・イノベーション」といわれる小規模で地域性のあるイノベーションが、世界の注目を集めています。フルーガル・イノベーションは、お金を掛けない、シンプルなイノベーションです。リバース・イノベーションは、インドなどのインフラが不十分で所得の低い人が多い地域でフルーガル・イノベーションが起き、これが逆に先進国に戻ってくる現象です。
手持ちの技術が、使い道や使う場所を変えることで、イノベーションを起こすのです。これなら日本の中小企業でもできます。日本の企業には、高い製造技術や世界の人々を魅了するサービスを持っている会社が沢山あります。
「そんなものはない」
と思っていても日本の市場で事業をしているだけでも、技術やサービスは世界レベルといえます。その技術やサービスを「どこで」「だれに」「どう使ってもらうか」「何かと組み合わせられないか」などを従来と違った視点で考え実施することが、イノベーションです。これを小さく、シンプルにやろうとするのが、フルーガル・イノベーションです。リスクを抑え、身の丈で行うフルーガル・イノベーションは、中小企業にぴったりの考え方です。


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フルーガル・イノベーションとは

フルーガル・イノベーション(Frugal Innovation)を直訳すると「安あがりなイノベーション」ということになります。
予算や時間、エネルギーなどのリソースが限られた中で、より多くのビジネス・社会的価値につながるソリューションを生み出すこと」
「ぜいたくな装飾や機能を排し、実用に徹して低価格の製品を開発すること。主として今後の成長が期待される新興国市場向けとされてきたが、消費の低迷する先進国市場向けにも適用されはじめている」
などといった解説がなされています。これは、新興国などその土地の課題をシンプルな手法で素早く解決するタイプのイノベーションです。例えばアフリカでは、中国企業が、洗剤を1回分単位の小分け袋にして、数円/袋で売っています。購買力のない現地の人向けです。インドでは、電気を必要としない冷蔵庫や1人で操作できる綿詰みマシンがあるとのことです。
最近の日本の例では、コロナ禍で生じた遠隔医療に対して、フルーガル・イノベーションの考え方を使ったモノとサービスが生まれています。㈱シェアメディカルは、長時間の聴診器の使用で耳の痛みを訴える医師向けにデジタル聴診デバイス「ネクステート」を開発していました。これは、Bluetooth接続を利用したヘッドフォンやスピーカーを使った聴診器です。そこに、新型コロナウイルスが流行。遠隔医療のニーズがうまれ、この機器を遠隔聴診器として使えるのではと思わぬ注目が集まっています。つまり、患者と離れたところにいる医師が聴診しようということです。シェアメディカルの峯 啓真社長は、インタビューで
「フルーガル・イノベーションの精神を製品開発において大事にしていた」
との主旨のことを語っています。参考記事:「豊田医療センターと連携協定締結、ネクステートを新型コロナウイルスの診察へ活用」
医療の話では、新興国向けに簡易型の血液検査キットを作った話があります。人間ドックで受けるような、100項目にも及ぶ検査ではなく、数項目の絞り込んだ検査キットです。これが、けっこう人気です。一つのフルーガル・イノベーションです。その後、このキットは、先進国に持ち込まれ、家庭で気になる項目だけ計れる血液検査キットとして売れているとのこと。これが、リバース・イノベーションです。(残念ながら、日本では規制があって、この手のキットは、家庭では使えまえせんが)

世界に目を向ければ、「リープフロッグ」のチャンスに満ち溢れています。
新興国では、しばしばリープロップ現象が起きます。「リープフロッグ現象」とは、既存の社会インフラが整備されていない新興国において、新しいサービス等が、先進国の歩んできた技術進展を飛び越えて一気に広まることです。例えば、1990年代に固定電話が不十分だった中国では、いきなり携帯電話が普及し、日本を上回るペースで広がりました。最近では、インドにおけるキャシュレス決裁の利用率は先進国をしのぐ勢いです。これら「リープフロッグ」を支えたのは、最新の多機能携帯電話でも、多機能スマホでもありません。極シンプルな機能機器によるフルーガル・イノベーションです。

 

フルーガル・イノベーションを起こす3つのポイント

フルーガル・イノベーションを起こすには、3つのポイントがあります。

1)消費者を徹底的に観察する
フルーガル・イノベーションはミクロな視点で生活者の行動を観察し、彼らの問題解決の手法を考えることから始まります。ある商品を思わぬ人が買っている、思わぬ時期に買っているなどは、提供する側が想定していない使い方をされている可能性があります。
消しゴムは、鉛筆の字を消すだけではありません。頑固な壁の汚れも落としに使っている人がいます。消しゴムを彫ってスタンプにした人もいます。これらから、発想した製品も世の中にでています。これらもフルーガル・イノベーションでしょう。

2)今あるツールやアプローチを生かす
フルーガル・イノベーションでは、投資の前に手持ちの資産に目を向け、予算だけでなく、時間の節約をはかることが大切です。大きなリスクをとらないことが、イノベーションのハードルを低くします。
多機能だが高価なモノ、大規模なモノを単機能で小さくするだけで、買ってくれる人が出てくることがあります。先に挙げた簡易血液検査キットもその例です。

3)仲間をつくること
イノベーションを初めて提唱したシュンペーターは、イノベーションのことを「既存知と既存知との新結合」と定義していました。自分の持つ知識と、他の人、他社、他組織の持つ知識、経験と結びついて、イノベーションが生まれます。仲間を作る、他組織と提携することで、イノベーションが起きることが期待できます。自分の提供できるモノやサービスを他の人に知ってもらい、異なる視点で見ることで、新しい価値や用途が見つかります。他のモノやサービスと結合することで、イノベーションが生まれます。イノベーションは、仲間を作ることが大切です。

 

まとめ

フルーガル・イノベーションは、「安上がりなイノベーション」のこと。手持ちの技術で資金や時間をかけず行うイノベーションであり、中小企業に有効な考え方です。フルーガル・イノベーションを起こすには、3つのポイントがあります。
1)消費者を徹底的に観察する
2)今あるツールやアプローチを生かす
3)仲間をつくること
世界の新興国でおきる多くの「リープフロッグ現象」は、フルーガル・イノベーションが引き金になっています。
参考記事:イノベーションの定義と中小企業における「イノベーション経営」

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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