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「同調圧力」がつくる、日本にあるある「世間のルール」の特徴と対処法

2022/11/05
 
新人を叱る上司のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「同調圧力」がつくる、日本にあるある「世間のルール」の特徴と対処法

 

「同調圧力」がつくる「世間のルール」の特徴

「忙しく仕事をしている人をおいて、定時帰宅をしていたら『我がまま』と言われた」
「コロナ禍の中、深夜まで営業し、非難された飲食店」
これは、就業規則や法律に違反をしていなくても、日本では「世間」から非難の声が出ます。会社の就業規則や法律は「タテマエのルール」で、実際は「世間のルール」に従うことが、求められます。「世間のルール」の代表的なものが、
1)他人に迷惑をかけない、
2)他の人と違った行動はしない、
3)「ムラ」を守る、
です。
日本では、家族、近所、学校、会社などそれぞれに「ムラ」社会があり、それぞれが「世間のルール」を持っています。そのルールが、山本七平いうところの「空気」であり、「空気」に従った行動が求められます。これは、心理学上「同調圧力」といわれるもので、一般には、少数意見をもつ人を抑えこもうとする力と説明されています。
「同調圧力」は、日本だけの現象ではないのですが、日本社会では、これが飛び抜けて高いようです。同調圧力が高いことで、「犯罪が少ない」、「自主規制が通用する」、「行列を守る」などいいことがある反面、「個性が出せない」、「陰湿なイジメが多い」、「イノベーションが生まれない」などの原因となっているといわれています。
簡単に「世間のルール」を変えることは、難しいものです。しかし、同調圧力を過剰にかけない、過剰な同調圧力に屈しないために、「世間のルール」の理解を深めておくことが重要です。
この記事は、長年大企業と言われる「ムラ」社会にいた経験と阿部謹也著「『世間』とは何か」 (講談社現代新書)、山本七平著「『空気』の研究」 (文春文庫)、佐藤直樹著「『世間教』と日本人の深層意識」(さくら舎)を参考にして書いたものです。

「世間」とは何か (講談社現代新書)

ルール1:「他人に迷惑をかけない」

日本では、子供のころから
「他人に迷惑をかけてはいけない」
と親や先生から言われて育ちます。ゴミ屋敷に住んでいる住人が、
「誰にも迷惑をかけていない」
と言い訳をします。
「いや、匂いが広がり近所迷惑である」
と反論する自治会。「迷惑」が、まるで法律のようです。
「迷惑をかけない」ことが、会社などの組織においても、重要な「世間のルール」になっています。これを守らないと、
「我がまま」「自分勝手」
といったレッテルが貼られるという制裁が待っています。これを無視できる精神的強さがあればいいのですが、余計な摩擦を避けたい心理がはたらき、「同調」することになりがちです。
社会で人が生きていくということは、他の人と関係を持つことです。関係を持つ以上、互いに迷惑をかけることを避けることはできないと考えることです。深刻な迷惑ならば、法律や社内規定をつくるべきです。法的なルールがないのに、「世間のルール」で規律を守ろうとするには、無理があります。「世間のルール」に対して、最近は、外国人だけでなく、若い世代の日本人にも「何で?」と疑問がでます。自分の中に、過度な「他人に迷惑をかけない」意識がないか、注意することです。


「世間教」と日本人の深層意識 ―みんな一緒でラクがいい

ルール2:「他の人と違った行動はしない」

他人に迷惑をかけないようにする一番簡単な方法は、「他人と違った行動をしない」ことです。また、判断に迷ったとき「他の人と同じことをする」のが、最も楽な意思決定方法です。昔から「出る杭は打たれる」と言いますが、違った行動を取ることには勇気が必要です。
会社で何か新しい提案をするとき、
「これは、他社でもやっています」
というのは、説得力があります。過去の実績や他社の例を出して、「違った行動をしていない」ことを示すと同意が得られ易いものです。米国で仕事をしていたとき、米国人幹部に「他社で実績のある方法です」
と言って説得しようとすると、
「いい考えだが、他社と同じでは、つまらない。違うことをやれ!」
と言われて、ビックリしたことがあります。「他と同じが、正しい」と考えるのは、日本人の特徴だと強く思った事例です。
他の人と同じ行動をすることは、楽なことです。昼食で、他の人と同じものを注文する、店側もランチセットを用意するといった具合です。制服なら何を着るか迷う必要はありません。こんな日常のことなら、「楽」することで許容できますが、会社の命運を左右するようなこと、人生に関わるようなことを、「他人に合わせた判断」をすると後で後悔する羽目になります。
重大な会議で、「合理的でない」と思える決定が、その場の「空気」で決まることがあります。山本七平著「『空気』の研究」に出てくる話ですが、終戦間際、燃料も護衛もないまま単独で戦艦大和を沖縄に派遣する決定が下されした。その結果、予想通り戦艦大和は、沖縄にたどりつく前に、なすすべもなく撃沈されます。会議の出席者達は、戦艦大和を出すことが無意味であることを知りつくしていました。しかし、
「『空気』が、派遣の決定をした」
と語っています。
日本の「世間のルール」の中で、「他の人と違った行動」や「発言」をすることは、困難を伴います。しかし、会社は合理性を欠いた経営を続ければ、いつか破綻します。リーダーと言わる人の役目は、時に「他とは違った」判断や行動をとることです。

 

ルール3:「ムラを守る」

日本では、ウチとソトが明快です。社員は、「ウチの会社」と呼び、労働組合も企業別です。業界のウチとソトが明確で、農業、漁業も含め、新規参入は容易ではありません。このウチ、ソトの区別は、「ムラ社会」と言われています。
「世間のルール」では、「ムラを守る」ことが重要です。会社で法に触れるような不正行為があっても、
「会社の為にやった」
ということであれば、一定の理解が得られます。(もちろん褒められたことでは、ありませんが。)もし、これが私利私欲での行為であれば、袋叩きになり、法以上の制裁を受けることになります。
会社においても、全社の利益より、自部署の利益を優先するようなことが時としておきます。「ムラを守る」とは、「セクショナリズム」と同様ですが、より自分のムラ(組織)そのものを守ることが重要になっています。時には、不利益になったとしても組織を守る方が優先されます。
「組織の構成を変える」、「『生え抜き社員』を外に出す」ことは、その組織からではなく、上からの指示でなければ実現しません。「不正を隠蔽する」行為も会社というムラを守りたいとの思いから起きると言われています。
「ムラを守る」意識は、チームワークにおいて力を発揮します。生産性向上活動などをチームで競って大きな成果を挙げた実績があります。かつて、製造現場において、4チームで生産性の競争をしたことがあります。すると、あるチームがやり易い仕事ばかりを集めて高成績を上げ出しました。すると他のチームも真似をし出し、手間のかかる注文ばかりが残って困ったことがあります。
「ムラを守る」意識は、組織運営の上で強力な武器となります。しかし、本末転倒した考え方に陥る危険性をもっています。これを見抜くのは、上司の眼です。あるいは、ムラにいても、俯瞰できる眼をもっていることが必要です。

まとめ

日本には、会社の就業規則や法律は「タテマエのルール」で、実際は「世間のルール」で運営されています。「世間のルール」の代表的なものが、
1)他人に迷惑をかけない、
2)他の人と違った行動はしない、
3)「ムラ」を守る、
です。日本では、家族、近所、学校、会社などそれぞれに「ムラ」社会があり、それぞれが「世間のルール」を持っています。そのルールが、「空気」であり、「空気」に従った行動が求められます。これは、心理学上「同調圧力」といわれるものです。

参考記事:理想のリーダーは、万能選手ではなく、自分のスタイルを確立している人

ライバルを一瞬にして葬り去る「レッテル貼り」の怖さと有効活用術

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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