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イノベーションなどの新技術や芸人の人気は、「ハイプ・サイクル」に乗っている!

2022/10/25
 
ハイプ・サイクルのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

イノベーションなどの新技術や芸人の人気は、「ハイプ・サイクル」に乗っている!

 

イノベーションなどの新技術や芸人の人気は、「ハイプ・サイクル」に乗っている!

「開店当初に押しかけた客が去ってしまった飲食店」
「人気が沸騰した芸人も、1年でどこかに消えてしまう」
「イノベーションといえるサービスが、低迷している」
話題を集めた店、人気沸騰の人や商品は、時間とともにブームが去り、その後世の中に定着していきます。その過程は、店であれ、人であれ、商品であれ、同じようなパターンで変化します。最近は、従来からのマスメディアに加え、SNSの影響が強くなったことなどで、ブームの山は高くなり、時間軸は短くなってきているようです。
新技術が生まれ話題になり、その後衰退や安定していく過程をパターン化したものに「ハイプ・サイクル」があります。ハイプ・サイクルは、AIや自動運転など新技術の話題が先行し、その後「期待外れ感」がでて、その後に本格的に普及するパターンがあることを示しています。技術の成熟度や普及度などの時間的変化を扱ったものですが、店の繁盛度、芸人の人気など、人と世間が絡む全般についても適用できます。
もし、新商品、新サービスのイノベーションを起こせば、必ずこのサイクルを通ります。イノベーションというほどの変化でなくても、新規開店した飲食店がどう繁盛していくか、新商品がどう売れていくかも教えてくれます。
この記事では、ハイプ・サイクルを基にイノベーションなど新しい商品(モノとサービス)の時間的推移を考えます。

 

ハイプ・サイクルとは

「ハイプ・サイクル」とは、米国の技術系コンサルタント会社ガートナー社が、新技術が登場した後の動きを視覚的に説明したものです。
ハイプ(hype⦅動詞⦆)という言葉は、製品やイベントなどについて、多くの人に興味を持たせようと、宣伝やマスコミなどで話題にするなどの「誇大宣伝」の意味のスラングです。新たに登場した技術に過剰な期待が寄せられている状況の中で、それがハイプ(誇大な宣伝)なのか実用化が可能なものなのか。この技術に投資したら回収できるのか。ガートナーのハイプ・サイクルは、技術と実用化の成熟度と普及状況の予想を図示したものです。

ハイプ・サイクル

hype-cycle

出典:ガートナー社HP

ハイプ・サイクルは次の5つの段階から構成されます。
1)黎明期(Innovation Trigger)
革新的技術が学会や科学雑誌、専門誌などで公表されると情報が拡散し、注目が集まり始めます。まだ使用可能な製品は存在せず、実用化の目途がたっておらず期待が先行します。

2)「過度な期待」のピーク期(流行期)(Peak of Inflated Expectations)
新技術による商品が生まれ、数多くのサクセスストーリーが紹介されます。現実には、事業として失敗を伴うものも少なくありません。多くの企業は、行動を起こさず様子見の段階です。

3)幻滅期(Trough of Disillusionment)
実験や実装で成果が出ないため、関心は薄れます。技術は過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、「幻滅のくぼ地」に入ります。メディアは、その話題を取り上げなります。新技術による新規事業者は、再編されるか事業の中止が多くなります。

4)啓発期(回復期)(Slope of Enlightenment)
ディアでその技術が取り上げられなくなりますが、生き残った事業者は、顧客の満足がいくような自社商品の改善や投資を継続します。新技術が、顧客や企業にもたらすメリットを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まります。第2世代と第3世代の商品が登場します。また、新規参入する企業が増え始めます。

5)生産の安定期(安定期)(Plateau of Productivity)
新技術が定着し、安定した供給が始まります。供給者の評価基準がより明確に定義されます。新技術の適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されていきます。

 

ハイプ・サイクルからみた中華料理店の未来予想

ハイプ・サイクルを技術の発展ではなく、飲食店の繁盛度について適用してみました。我が家の近くに開店した、本格中華の店は、当初店の前に行列が出来るほど繁盛していました。開店前の工事中の頃から派手な看板や旗を立て、更にSNSなどを使ってPRしたのが効いたのでしょう。ところが、2か月もすると店に来る人は、まばらです。全国チェーンの店なら知名度もあり、客の落ち込みも小さいかもしれませんが、独立系の店はそうはいきません。店主いわく、
「今は、辛抱してウチの「味」にほれ込んで来店してくれるお客様が増えるのを待つだけ」
と言っています。店主は、派手なPRの賞味期限を知っています。これからが、本当に客を掴むための努力が必要だと思っているようです。
これを、ハイプ・サイクルに当てはめて考えてみます。
1)黎明期
店主が新規中華料理店を計画。家族でリーズナブルな価格で食べられる「本格中華」が売り。SNSを使ったPRを企画。
2)流行期
店の開店に合わせて、実施したPR作戦。SNSの投稿で、開店後2か月は好調を維持。SNSでブームになる。
3)幻滅期(Trough of Disillusionment)
本格中華を売りにしたのに、注文はラーメンと餃子ばかり。客が急速に減少し、「失望」の声も。SNSの反応も鈍る。
4)回復期
本格中華を組み合わせたランチメニューやディナーメニューを充実。「美味しい」本格中華を客に推奨。月3回までの定額メニュー(サブスク)を用意。(今は、この段階)
5)安定期
店主の目指すは、本格中華の「味」にほれ込んだ安定客。

この中華料理屋の店主は、今を「幻滅期」から「回復期」にあると思っているようです。目指す安定期は、「味」にほれ込んで来店する客であることから、定額メニューに力を入れています。


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ハイプ・サイクル批判と使い方

ガートナー社は、1995年以来毎年「先端テクノロジのハイプ・サイクル」を発表しています。一見もっともらしく感じられますが、詳細に見ていくと同じ技術でも会社や開発者により違った見方がでます。また、技術のトレンドについては「日経コンピュータ」などにも掲載されており、同じ技術でも違った見方がされています。ちなみに2022年発表のハイプ・サイクルを示します。

2022年ハイプ・サイクル

hype-cycle(2022)

出典:ガードナー社HP(2022年)

個々の技術は、開発のスピード、ブレークスルーの有無などにより、予想外の進展や停滞が起きます。また、技術開発の状況は、すべて公開されているわけではなく、それぞれ人の持っている情報には偏りがあります。業界などで、個々の技術の位置づけについてハイプ・サイクルを批判していたらキリがありません。ハイプ・サイクルは、新技術の注目度の変化パターンをモデル化しているだけとみるべきでしょう。

ただし、新技術やこれを使った商品の登場順が入れ替わることはありません。注目度のピーク高さはわかりませんが、サイクルの形は変わりません。そこ点に注意して、利用していくことです。

まとめ

新技術が生まれ話題になり、その後衰退や安定していく過程をパターン化したものが「ハイプ・サイクル」。ハイプ・サイクルは、新技術の話題が先行し、その後「期待外れ感」がでて、その後に本格的に普及するパターンがあることを示しています。技術の成熟度や普及度などの時間的変化を扱ったものですが、店の繁盛度、芸人の人気など、人と世間が絡む全般についても適用でき、ビジネスや投資に応用できます。

参考記事:イノベーションの定義と中小企業における「イノベーション経営」

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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