「あったらいいな!」からイノベーションの「ネタ」を見つける4つのステップ
「あったらいいいな!」からイノベーションの「ネタ」を見つける4つのステップ
イノベーションの「ネタ」は、「あったらいいな!」から
「イノベーションを起こすアイデアがない」
「うちにはイノベーションのための技術がない」
そう思っている方に、イノベーションの「ネタ」を見つける方法をご紹介します。
これまで、私は製造工場でカイゼン活動を指導してきました。沢山のカイゼン「ネタ」を出し、これを「改善提案」として完成させてきました。小さなカイゼンから、大きなカイゼン、時には新たな設備投資を伴うものもあります。カイゼンの中には、「ストレッチ」を超えた「チェンジ」と言ったほうがいいものがあります。「チェンジ」は、成果の大小ではありません。「やり方」を変えたもの、「発想」を変えたものです。これは、一種のイノベーションともいえるものでした。
イノベーションの「ネタ」を見つけるとは、多くのカイゼンの中から、「チェンジ」に当たるものを見つけ、そこに新機軸を見出すことです。
イノベーションの「ネタ」を見つけるには4つのステップがあります。
1)100の「あったらいいな!」を挙げる
2)「あったらいいな!」から「そもそも何だろう?」を考える
3)バックキャスト、フォアキャストからもう一度考える
4)イノベーションの意味を短い言葉にする
イノベーションを初めて提唱したシュンペーターは、イノベーションを
「既存知の新結合」
と定義しています。必ずしも世紀の大発明がイノベーションになるものでもありません。身近な「あったらいいな!」からイノベーションのネタを見いだすことが期待できます。
100の「あったらいいな!」を挙げる
イノベーションは、
「こんなモノがあったらいいな」
「こんな仕組みがあったらいいな」
から生まれます。映画などを配信するNetflixの創業者リード・ヘイスティングスは、「アポロ13号のレンタルDVDの延滞料が高すぎて、延滞料のないDVDレンタルサービスを作ろうと思った」という逸話があります。(真偽のほどは、定かではありませんが)
その第1歩は、「あったらいいな!」と思うことを一人100件挙げてみることです。100件などとんでもない数字に見えますが、解決策など考えず、
「こんな困ったことがある。こんなモノがあったらいいな」
と考えていきます。
100件挙げることは、大変なように思えますが、できるものです。私は、製造現場で生産性向上活動において、「一人1日1件60日間にわたり、『あったらいいな』を見つけてもらう」活動をしたことがあります。ことをしてもらったことがあります。10人のメンバーですと、実に600件です。はじめは、無理と思われたのですが事業部70チームのほぼすべてが、この目標を達成しました。その後、この中から改善案を作り、1/3程度が実施されました。
100の「あったらいいな」を見つけるには、「コツ」があります。
1)大きな問題は、小さく分ける
「雨の日、事務所の入口が水浸しになる」ことに対して、「入口の水はけをよくしたい」「傘立てがもっとあったらいい」「雨よけひさしが大きかったらいい」「隣の棟と雨よけ廊下があったらいい」「現場から事務所に来る必要がなければいい」等々と分けていくことです。
2)「不便」「不満」「不足」などとにかく「不○○」を集めること
3)「ムリ」「ムダ」「ムラ」の視点で探す。
4)他職場、他社、他業界などから、徹底的に「パクる」
一人で考えてもブレストーミングを活用してもいいのですが、要は自分が当事者(生産者、販売車、お客様など)になったつもりで、「あったらいいな!」を探すことです。100にはこだわりませんが、とにかく多くの「あったらいいな!」を見つけることです。
「あったらいいな!」から「そもそも何だろう?」を考える
「あったらいいな!」を実現すれば、それは立派なカイゼンです。イノベーションになるには、チェンジが必要です。そこで、「あったらいいな!」について、「そもそも何だろう?」「そもそも何のためにしているのだろう?」と考えることが重要です。
先ほど挙げた、「事務所の入口が水浸しになる」問題に対して、多くの「あったらいいな!」は、「雨を持ち込まない」「水を入口に飛散させない」という提案でした。その中に「現場から事務所に来る必要がなければいい」という提案がありました。これが、「そもそも何だろう?」に繋がるヒントを持っていました。
「現場から事務所に来る必要がなぜあるのか?」と考えると「現場から製品サンプルを事務所に運ぶため」。「サンプル保管場所が事務所に設置されているから」「事務所にサンプル保管場所があるのは、お客様に見せるため」、そんな調子です。要は、サンプルをお客様に見せることが、本当の仕事でした。最後的には、現場にサンプルを保管し、サンプルの写真及び動画を作って、お客様が見ることが出来るというサービスに行きつきました。コロナ禍もあってこの仕組みは、ちょっとしたイノベーションとなったのです。
バックキャスト、フォアキャストからもう一度考える
バックキャストは、「こうありたい」という未来からから考えることです。フォアキャストは、今現場で起こっていることに対する「やるべきこと」です。
「あったらいいな!」は、バックキャスト的発想です。しかし、「こうあったらいいな」も実際は足元の問題に対して、いきなり結論から考えているだけです。
イノベーションを成功させるには、「こうありたい」と思うバックキャスト的発想をする人と「やるべきこと」から考えるフォアキャスト的発想する人が、コミュニケーションを取ることが大切です。実際、バックキャスト的に考える製造や販売の現場とお金や人を握っている部署に多いフォアキャスト的な発想人が、対立してイノベーションが実現しないことがあります。
イノベーションを進めようとすると、
「そうは言うけど、カネはどうするんだ」
「本当にうまく行くのか」
こんな声がでるものです。丁寧にやり取りするうちに、両者が納得できる案が生まれます。
イノベーションの意味を短い言葉にする
鉄道の改札機を製造しているオムロンでは、駅を従来の「鉄道の入口」と考えていたのを、「街への入口」と短い言葉で言い換えました。
改札機を「街への入口」と考えることで、オムロンでは子供が改札口を出たことを親に知らせるシステムを作ったとのことです。(竹林一著「たった1人からはじめるイノベーション」日本実業より)
他にも「街への入口」という言葉から、発想が湧きます。ICカードでどんな人が、どのくらい街に入ってきたか分かります。タクシーの数、出迎えの自家用への連絡、商店の品ぞろえ等々、街の受け入れ準備に使えそうです。
沢山の「あったらいいな!」から、イノベーションのネタを選び、それを短い言葉で表すことで、イノベーションの本当意義がうまれます。
先ほど例を挙げた、サンプルの画像、動画発信は、
「お客様が自社から立会ができるしくみ」
ということで活動しています。
たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか
まとめ
イノベーションの「ネタ」を見つける4つのステップ。
1)100の「あったらいいな!」を挙げる
2)「あったらいいな!」から「そもそも何だろう?」を考える
3)バックキャスト、フォアキャストからもう一度考える
4)イノベーションの意味を短い言葉にする
このステップで、身近な「あったらいいな!」からイノベーションのネタを見いだすことができることが期待できます。