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PDCAサイクルのデメリットと有効に使いこなす2つのコツ

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

PDCAサイクルのデメリットと有効に使いこなす2つのコツ

 

PDCAが有効に働かない理由

PDCAは時代遅れ」
PDCAは、イノベーションを生まない」
「今や、PDCAは日本しか通じない」
一世を風靡したPDCAも日本経済の低迷と共にネット上では、その評価を落としています。ちなみにPDCA時代遅れ」と検索すると多くの記事を目にすることになります。もうPDCAではなく、OODAループの時代」といった記事も多いようです。これらは、日本経済の低迷、とりわけイノベーションの少なさが、あたかもPDCAにこだわるため」と解釈されているからです。
そもそも、1990年代までの日本企業の快進撃は、必ずしもPDCAを活用していたからではないと私は思っています。当時の日本企業は、挑戦意欲や開発意欲が旺盛で、スピード感を持っていました。それらと中国経済の大躍進前などの条件が重なって日本企業の快進撃を生みました。日本企業発展の理由を「PDCAの活用」と考えるには無理があります。当時、本当にPDCAをうまく使いこなしていたのは、トヨタグループの企業など一部の会社だけではなかったかと思います。
教科書では、「PDCAサイクル」は、何度も回すことが推奨されていますが、
「本当に何度も回したことがあるか?」
と振り返ってみてください。「計画→実行→検証→修正」を一度は回してみるものの、それで終わりということが多いのではないでしょうか。自分自身「計画→実行」だけで、その後の「検証→修正」にまで行きついていない事例を沢山思い起こすことができます。こんなことで、安直に、PDCAサイクルは役に立たない」と言っているのではないでしょうか。PDCAサイクルは、
「速く、何度も回す」
ことで、成果が得られます。アイデアがありイノベーションとして何かを実現するのには、PDCAサイクルは有効です。しかし、実行せずに計画に留まっていれば、「役に立たない」「イノベーションを起こせない」ことになります。
PDCAのデメリットを克服して、有効に働かせる2つのコツがあります。
1)「やるか」「やらないか」に時間をかけ過ぎない
2)PDCAを小さく高速で回す
今、「PDCAの時代」ではなく、「OODAループの時代」とネット記事などで発信されていますが、どちらも「すぐやる」ことをしなければ、有効に使うことはできません。
この記事は、PDCAを品質管理などで使った経験から、PDCAを使うコツを紹介したものです。


世界最強の現場力を学ぶ トヨタのPDCA

 

「やるか」「やらないか」に時間をかけ過ぎない

PDCAのデメリットとしてよく言われるのが、「改善するために時間がかかる」という点です。PDCAを忠実に実行しようとするあまり、改善アイデアを思いついてすぐ実践し更に改善するのではなく、計画・実行・評価の各プロセスを踏むことで、時間がかかりがちになります。
また、PDCAはあくまでも、過去に実施した施策や行動を評価して改善案を生み出す考え方です。そのためどうしても前例主義が多くなりがちで、「新しいアイデアが生まれにくい」と言われます。
これらPDCAの問題点として指摘されているのは、計画(P)から実行(D)に移るのに時間をかけ過ぎることに原因があります。計画段階で十分な検討が必要ですが、どんなに検討しても必ずしも正解がでるものではありません。「やるか」「やらないか」を迷って時間をかけてしまうことが問題です。肝要な点は、「やる」と決めたら、すぐに実行することです。実行なきところに進歩はありません。PDCAの本質は、やったあとの素早い「修正力」です。
トヨタの生産をリードした大野耐一氏は、
「どちらの案がいいか迷った時は、両方やってみろ」
と言っていたそうです。小さく、早く試してみることが、長い時間検討を重ねるより遥かに効率よく答えに近づけるというわけです。勿論、この際、結果の検証(C)と改善(A)が含まれます。Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスの著書「ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた (PHPビジネス新書)に
実験の回数を100回から1000回に増やせば、イノベーションの数も劇的に増える」(198p)
とあります。イノベーションは、数多く「やってみること」から始まります。PDCAで「やってみたこと」を素早く検証し、改善を見つけられれば、「PDCAからイノベーションは生まれない」と安直に言うことができないでしょう。

ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた ネットビジネス覇者の言葉 (PHPビジネス新書)

PDCAを小さく高速で回す

PDCAサイクルをうまく回せない原因として多いのが、「PDCAサイクルを計画すること自体が目的になっている」というケースがあります。
大企業や役所おいては、厳格な品質保証が求められ、ISO9000シリーズの認証取得が、取引条件になっていることが多くあります。ISO9001(JISQ9001)規格には、冒頭にPDCAサイクルについての記載があります。品質管理を行うのにPDCAサイクルを回すことを謳っています。そして、同規格では、「品質監査」を定期的に行うことが義務付けられています。つまり、品質計画(P)をたて、実行し(D)、品質監査(C)を行い、改善(A)を行うと記述されています。ところが、問題は多くの会社が、品質監査を審査機関による外部監査を年1回、内部監査を年1,2回としていることです。これでは、PDCAサイクルが、年に1,2回しか回りません。実質的に品質の維持向上にPDCAが役に立っているというより、「外部審査機関に対して、PDCAサイクルに従っていることを示すこと」が目的になっているという方がいいかもしれません。実際にISOの審査機関の方から、「形骸化したPDCAになってしまっている会社」の話を聞くことが多々あります。
実際の品質管理において、年に1度や2度PDCAサイクルを回していては、日々の生産状況や市場の変化についていけません。製品自体のサイクルも短くなり、世の中の変化も速くなっているのです。
何事も変化のスピードが速くなっている今、PDCAを有効に使っていくには、PDCAサイクルを速く回すことが重要です。日々検証と改善を繰り返すことが必要です。速くPDCAを回せれば、これほど有効な実行手段はないと思います。
PDCAサイクルをうまく使っている例を紹介します。その職場は、車の部品などの強度試験を行っている現場です。毎回、試験する部品が異なりやり方も変わります。その職場リーダーであるの女性班長の1日は、こんな具合です。
1)朝、チーム員の当日の仕事を指示する(P)
2)昼間、仕事を行う。仕事の進捗を確認する(D)
3)夕方、仕事の結果をチーム員に聞く。また、自分で確認する(C)
4)仕事の結果を踏まえて、改善点を翌日の計画に反映する(A)
つまり、毎日PDCAを回しています。毎日のように改善点をみつけ、翌日の計画に活かし上司や依頼会社の信頼を厚くしています。
このようにPDCAを有効に使うには、小さく速くサイクルを回すことがコツです。彼女は、このサイクルとは別に、毎月、1年に一回、上司と仕事の振り返りをして、翌月や翌年の計画を立てています。つまり、PDCAを複数の層にして使っています。

 

まとめ

PDCAサイクルは、使い方によって成果が大きく変わります。PDCAのデメリットを克服して、有効に働かせる2つのコツがあります。
1)「やるか」「やらないか」に時間をかけ過ぎない
2)PDCAを小さく高速で回す
「PDCAサイクル」でも「OODAループ」でも「すぐやる」ことをしなければ、有効に使うことはできません。

参考記事:「CAから始めるPDCAサイクル」で、PDCAサイクルの欠点が克服できる

「報連相」がうまくいかないのは、「仕組み」になっていないから

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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