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企業の「人材育成」を「投資」と考えると見えてくる4つの課題

2021/10/26
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

企業の「人材育成」を「投資」と考えると見えてくる4つの課題

 

「人材育成」を「投資」と考えると見えてくる課題

「時間がなくて人材育成できない」
「人材育成をする人材がいない」
「人はいても、人材がいない」
こんな「人材育成」の悩みをかかえている企業や管理職の方が多いのではないでしょうか。病気や退職で職場に穴が開けば、なんとかカバーするために即席にせよ代替えの人に仕事を教えて業務を続行します。起業したばかりの会社は、ほとんどの人が未経験の社員です。でも何とかなります。
「人材育成ができない」のは、人材育成をしていないからです。人材育成ができないとは、人材育成を漠然と考えて、具体的な指導など行動になっていないからです。そんな人材育成が出来ない企業や上司は、人材育成を一般的な学校教育と混同しています。
文部科学省の公式文書では、(教育基本法人材育成に関する各種文書)以下のようなまとめ方がされています。
教育:どのような世情の中においても、良識と健康を兼ね備えた人物となることを目指して行われる営み。
人材育成:特定分野の振興や経済活動への寄与を期して行われるもの。
要約すれば、「育成」は「教育」のうちに含まれ、知識や教養ではなく、「ある分野にふさわしい人材に導くこと」ということです。つまり、人材育成は、どんな人材にしたいかのビジョンがあっての教育です。ビジョン(目標)がないままに人材育成をしているのは、人材育成をしているとは言い難いということです。

私は、「人材育成」とは、目標とする人材像に向かっての教育「投資」であると考えています。人材育成を「投資」と考えると以下のようなポイントが見えてきます。
1)育成目標を明確にする
2)育成方法のリスクとリターンを考慮する
3)成果を継続的にフォローする
4)成果を評価する
人材育成を「投資」だとすれば、学校などで行われている一般的な教育は、「貯蓄」です。貯蓄自体は、リターンをほとんど生みませんが、投資の原資としてお金が沢山あると安心です。例えば、難関校に入るということは、沢山の「知識の貯蓄」があるということです。しかし、その知識をうまく使えるかどうかは別問題です。人材育成とは、リターンを期待して教育に投資することです。投資の方法が様々なように、人材育成の方法は様々ですが、リスク管理等共通で考えることできます。


会社を強くする人材育成戦略 (日本経済新聞出版)

人材育成目標を明確にする

どんな人材を育成するのか、明確でないのに
「人材育成が出来ていない」
と嘆く管理職がいます。「後継者としての人材を育てたい」と漠然と思っていても人材育成にはなりません。「お金が増えたらいいな」と思ってなんとなく貯蓄しているのと同じです。(正確には、多少増えるかも知れませんが?)
IT技術者育成、資格者育成などは、明確に目標設定できる人材育成です。ところが、「次期管理職を育成したい」「やる気のある社員を育てたい」といった目標が漠然とした人材育成は、うまくいきません。まずは、目標を明確にすることです。
製造業の職場では、よく技量シートが作られます。縦方法に業務に必要な技量を書き出し、横方法にメンバーを書いて、職場ごとの人材の充実度を見る図表です。空白を埋めることが、人材育成の目標になります。例えば、フォークリフトが運転できるとか、アーク溶接ができるとか具体的に必要な技量とレベルが書きだせます。
ところが、営業や企画職、ましてや管理職になると必要な技量が曖昧になりがちです。「交渉力」とか「調整力」などは、必要な技量ですが、具体的にレベルを表すのが困難です。それでも、営業マンの技量を表すのに、「アポが取れる」「製品の説明ができる」「単独で価格交渉ができる」「顧客ニーズが聞ける」「顧客に提案ができる」といった要素に分解して、〇×を付け、人材育成の目標設定をしている営業部長がいて人材育成の成果を上げていました。



育成方法のリスクとリターンを考慮する

投資には、リスクとリターンがセットでついてきます。人材育成としての教育に時間と金をかけても成果がでないことが有ります。投資では、ハイリスク・ハイリターンが常識です。人材育成も同様に思えます。

OJTと言われる先輩社員と一緒に仕事をすることで、人材を育てる方法がよく使われます。指導する人に大きな負担をかけず確実に人は育ちますが、時間がかかります。典型的なローリスク・ローリターンな方法です。昔は、よく先輩社員が、
「後ろで俺を見ていろ!」
というようなOJTをしていましたが、あまりに非効率的です。
人材育成で大きな成果を上げるのは、育成される人が業務を実践することです。
「やってみろ」
と背中を押す方法です。未経験者に、新規プロジェクトのマネジメントを任せる、支店を任せるなどは、大きな人材育成のチャンスになります。ただし、大きな失敗のリスクがあります。まさにハイリスク・ハイリターンです。会社の幹部になったような方の多くが、若い時に未経験でありながら、大きな仕事を任されたことが、自分にとって最高の「育成」であったと語っています。
日本経済が好調なころMBAを取得するために海外留学を推進した大企業が多くありました。ところが、留学半ばで挫折してしまう人、MBAを取得後退職する者が多く出で、現在ではあまり行われなくなりました。人材育成法として、リスクとリターンのバランスが悪いと考えられるようになったのでしょう。

人材育成の成果を継続的にフォローする

どんな投資でも、投資しただけでフォローをしないことは危険です。長期投資と短期投資があるように、人材育成も短期で成果の出るもと長期で成果の出るものとがあります。人材育成にかかる時間を考慮して、成果をフォローし、必要なら方法等を修正していくことが重要です。
考慮すべきは、方法が正しかどうかより、育成方法と育成者とが合っているかどうかです。丁寧に指導する上司だからといって必ずしも人材が育つわけではありません。いつまで経っても自立しない人材にしかならないこともあります。
人材育成方法は、フォローをする中で、適時修正していくことが重要です。

投資の成果を評価する

投資は、評価することが重要です。人材育成でも育てた人材に対する評価はもちろんですが、人材育成した人の評価も同様に重要です。学校の先生やスポーツのコーチは、指導者としての評価がされ、次の人選や指導方法に活かされます。しかし、企業において部下の人材育成の評価が不十分なことがあります。リーダーや管理職の仕事として「人材育成」を人事評価項目としてあげるべきです。
1)部下の育成に適切な目標を持っているか
2)人材育成のための時間をとっているか
3)育成するスキルがあるか
こんなチェックポイントで評価してはどうでしょうか。人材育成者として十分か、人材育成方法は有効だったかなど、その後の人材育成にも活用できます。

まとめ

「人材育成」とは、目標とする人材像に向かっての教育「投資」と考えることができます。人材育成を「投資」と考えると以下のようなポイントが見えてきます。
1)育成目標を明確にする
2)育成方法のリスクとリターンを考慮する
3)成果を継続的にフォローする
4)成果を評価する
人材育成を「投資」だとすれば、学校などで行われている一般的な教育は、「貯蓄」です。投資の方法が様々なように、人材育成の方法は様々ですが、リスク管理等共通に考えることができます。

参考記事:リーダー育成は、部下に「面白い仕事」「やりがいのある仕事」を任せることから

「理想の上司」とは、「部下を成長させ幸福にしてくれる人」のこと

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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