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労働生産性を妨げるハンコ文化。脱ハンコでクリック文化になった?(日本の生産性14)

2021/05/22
 
ハンコ文化からクリック文化へのイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

労働生産性を妨げるハンコ文化。脱ハンコでクリック文化になった?

 

労働生産性を上げるはずの脱ハンコのシステムで、「スタンピングマシン」から「クリックマシン」になったAさんの例

日本のあらゆる場面にハンコ文化が生きています。企業、役所などで、毎日どれだけのハンコが押されているか想像できません。

Aさんは、大手製造会社の課長。いわゆる中間管理職です。毎日、山のような書類にハンコを押しています。今日も、購買要求書に承認のハンコを押しています。現場から上がってきた書類は、Aさんがハンコを押した後、部長に回り決済のハンコをもらい、購買担当に回りまたハンコが押されます。書類は購買要求書から発注書、受領書、検収書、支払い関連書類等に変わりますが、ハンコのリレーが続きます。Aさんは、毎度内容の確認をしますが、手続き上の問題は、まず発見されません。ただただハンコを押すだけです。いつしか自分のことを「スタンピングマシン」と自虐的に言うようになっていました。ところが、ある日部長が、内容の矛盾点を見つけ

「〇〇〇バンを押すな!」(〇〇〇は、目の不自由な人のこと)

と怒鳴られました。それからというもの内容確認を丁寧にするようにしました。当然、生産性が、下がります。こうして、朝1時間以上ハンコを片手に書類に目を通している風景が出来上がりました。

やがて、会社としてもハンコ文化が問題になり、購買業務は脱ハンコの為にシステム化されました。ところが、ハンコ文化を踏襲したシステムは、何も変わっていません。今、Aさんは、自分のことを「クリックマシン」と自虐的に言っています。脱ハンコのシステムになっても、ハンコ欄がクリックに変わっただけ。書類を回す手間は無くなりました。しかし、紙を見て承認のハンコを押すことが、スクリーンで内容を確認しては、承認クリックをくりかえす作業に変わっただけです。悪いと分かっていても、内容を十分確認する時間がなく、承認クリックをしています。これを「〇〇〇クリック」と呼んでいます。

そもそも何のためにハンコを押しているのか

ハンコの役目は、「誰が」「内容を承知した」ことの証拠を残すものです。しかし、実際は、「誰の」「目の前を通過したか」の記録になっています。もっと言えば、トラブルが起きたときの責任逃れに、沢山のハンコを並べているようなものです。沢山のハンコを並べれば、責任はそれだけ分散されます。日本的な発想です。

そもそもハンコの本来の役目である「内容を理解し承知した」とは、どんな行為なのでしょうか。購買要求の例では、「購入するモノの仕様は、適切か」「価格、購入先は適切か」「購入は、突発かそれとも予定されていたものか」「今年の購入予算は、どのくらい残っているか」などの点を確認してハンコを押します。ハンコを押すとは、責任を取るべき項目に関して、適切かどうか判断して承認することです。

その後、この会社では、承認者の意見を入れて、ちょっとした脱ハンコのシステムを改造をしました。合い見積もりの有無、前回購入時の価格表示、購入後の予算残額などが見られるようになりました。Aさんは、「いくらか、ましになった。いっそコンピューターで、購入リコメンドも付けられないか」と若いシステムエンジニアに言いました。

「その機能を入れたら、どこかの『価格比較サイト』と一緒です。それなら、どこかの価格比較サイトと連携した方が早いですよ」

これを聞いたシステム課長が、すぐさま言った言葉です。

「外部と連携するシステム化か。おれは、悪くないと思うが、他の人はどうかな。案をまとめて稟議書を書き、各部署のハンコをもらってから検討を始めてくれ」

まとめ:ハンコがクリックに代わるだけでは、労働生産性は変わらない!

ハンコ文化とは、つまり責任を分散させていく仕組みです。生産性という点からみれば、皆が同じことをくり返す「重複」という悪しきやり方です。この考え方のままシステム化しても、ハンコがクリックに代わるだけです。書類がなくなる分の生産性は上がるでしょうが、責任の分散は同じです。皆が全範囲を確認しているようで、実は誰も見ていない状況が生れてしまいます。菅内閣では、ハンコの廃止を積極的に推進しようとしています。ハンコがクリックに代わるだけにならないことを願います。

参考記事:労働生産性を上げる脱ハンコ、課題は「承認」作業

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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