「仕事を教える」と「スポーツを教える」に共通する5つのステップ

「仕事を教える」と「スポーツを教える」に共通する5つのステップ
「教える」の5つのステップ
「新人に仕事を教える」
「バイトの人に仕事を教える」
こんな風に、誰かに仕事を「教える」立場になることが時としてあるものです。自分が普段やっていることを他人に教えるのは、案外難しいものです。特に体の動きを伴う技術を教えるのは、知識を教える以上に難しいものです。
例えば、子供に自転車の乗り方を教える。泳げない子を泳げるようにするといったことは、どんなに自分が自転車に乗れても、水泳が上手でも、教えることは容易ではありません。結局、何度も自転車で転んだり、水を飲んだりしながらも手足を動かしているうちに、突然本人がコツを掴んで、できるようになったなんてことが多いのでないでしょうか。
仕事でも、帳簿の記入やPCの入力等は、知識として「教える」ことができます。ところが、身体の動きを伴う接客や訪問による販売、工場での仕事となると「教える」ことの困難さが増します。特に伝統的な職人技を「教える」となると何年もの時間が必要と言われています。
ところが、「教える」プロは、子供に何度も転倒させることなく自転車の乗り方を教えます。何回かのレッスンで、どんな子供も泳げるようにします。教え方には、教える人ごとに特徴がありますが、うまく教える人には、共通するステップがあります。
そのステップとは、以下の5つと考えます。
1)動機付け:(なぜこれを学ぶのか)
2)説明(見本を含む):(手順を示し、見本を示す)
3)実践:(本人にやらせる)
4)フィードバックと再実践:(できた点・改善点を伝え、やり直す)
5)結果の確認:(成果を共有し、成長・達成感を感じさせる)
これらは、身体の動きを伴うことを教える場合に共通したステップです。職場教育だけでなく、ゴルフなどのスポーツトレーニングにも適応できます。
この記事では、職場での「教え方」を例にして、この5つのステップをご紹介します。
動機付け
「教える」ことにおいて、最も大切なのは動機付けです。本人が、何のために「学ぶ」のか明確でないと学ぶ気にはなりませんし、技術の習得や学習継続も難しくなります。
職場で「仕事を教える」とき、その作業をすることで、会社や組織にとってどんなメリットがあるか。例えば、その作業を正しく速く行うことが、いかに「安全・品質・納期」に貢献するかといった説明が大切です。
日本人には、「このチェックを怠ると、不良品が出て全体に迷惑がかかる」とか、「この手順は、安全第一のために決められている」といったような、チームやお客様への影響を強調することで学ぶことの意味が納得されやすくなります。
また、個人的にその作業ができるようになることで、昇給・昇格が期待できるといったことも動機付けになります。個人としての動機付けでは、中高年の人に対して
「70歳を過ぎた方でも、スマホアプリ開発ができるようになった人がいます」
「65歳過ぎて、ドライバーの飛距離を30ヤード以上伸ばした人がいます」
をといった言葉で、「自分にもできる」との思いを持ってもらうことが、動機付けを助けます。
説明(見本を含む)
「教える」上で重要なのは、全体から部分へと説明することです。
例えば、ドライバーのレッスン動画で、いきなり「正しいグリップ、バックスイング、トップ、ダウンスイング、インパクト・・・」などと分解して解説しているものがあります。全体像がイメージできている視聴者にはいいのでしょうが、初めてレッスンを受ける人には、何がポイントかさっぱり分かりません。
職場において、仕事を教える場合でも、まず相手に仕事全体がわかるように、見本としてやって見せることです。このとき、余計な説明は不要です。作業スピートも通常でします。これによって、仕事のイメージができ、スピード感も分かります。
次に部分として、仕事を分解し、解説しながらやって見せます。動作は、ゆっくりと分かり易くやることが重要です。この時、手順書や図解があれば、これを使います。また、「良い例」「悪い例」を提示することで、悪いクセが付かないようにすることができます。
実践(本人にやらせる)
説明が済んだら、実際にやってもらいます。最初から仕事を全部やるのではなく、仕事の一部から始めます。仕事もスポーツも同じですが、いきなり本番ということでなく、仕事ではサンプルの加工やロールプレイなど、プレッシャーのかからない状況での繰り替えし練習がお勧めです。スポーツでは、練習なしにいきなり試合に出ることはありませんが、仕事では練習なしにいきなり、本番ということがあります。「OJT」(=オンザジョブトレーニング)と言いながら、実際は「ぶっつけ本番」ということで、褒められたことではありません。
スポーツや仕事の技能習得では、ゆっくりと正確な動作をすることです。「下手を固める」と言う言葉がありますが、悪い動作の癖がつくと後で修正に苦労します。
フィードバックと再実践
実践したら、その出来栄えをフィードバック、つまり本人に知らせます。この時、できた点と改善点を伝えることになります。このとき、スマホなどで写真や動画を撮って、見ることは、大変効果があります。例えば、スポーツのフォームやプレゼンの動画をみれは、良い点、悪い点が良く分かります。
できた点を伝えると達成感が得られます。完璧ではなくても、出来るようになったこと、進歩した点を伝えることです。
一方、改善すべき点は、たとえ沢山あっても、1つか2つに絞って伝えます。沢山伝えても、再実践して修正できるのは限りがあるからです。もし、沢山の修正点があれば、仕事やスポーツの動作を分解して、再実践してもらうことです。
仕事やスポーツで大切なのは、復習です。後で自分だけでやってみて、学んだ知識、学んだ動作が、再現できるかを試すことです。自分で、再度やってみたらうまく行かない、そこで「何が問題か」を自分で考える修正できれば、本当に「技術を習得した」と言えます。
結果の確認
「教える」の最終段階では、実践した結果を確認することです。
仕事であれば、生産した品の品質、量など客観的なデータが成果としてでます。この成果を、教えた側と教わった側が共有し、成長と達成感を感じることが重要です。
スポーツでは、試合中のプレーや結果を振り返ることが、結果の確認になります。
客観的な評価と教える人の承認の言葉が、教わる人の「成功体験」となります。
得られた結果をもとに、教えた人と教わった人が、次なる目標に向かっての同期付けができると成長のサイクルが生まれます。
まとめ
身体の動きを伴うことの「教え方」には、5つのステップがあります。
1)動機付け
2)説明(見本を含む)
3)実践
4)フィードバックと再実践
5)結果の確認
これらは、身体の動きを伴うことを教える場合に共通したステップです。このプロセスは、職場教育だけでなく、ゴルフなどのスポーツトレーニングにも適応でき成果が期待できます。
参考記事:人材育成のポイントは、スキル、知識、経験をバランス良く身につけること
仕事を通して成長できることは、スキルアップだけでない3つのこと