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「人事評価結果」を有効に活用するために注意すべき3つのポイント

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「人事評価結果」を有効に活用するために注意すべき3つのポイント

 

「人事評価結果の使用目的」による「絶対評価」と「相対評価」の使い分け

「人事評価は、絶対評価が良いか、相対評価がよいか」
こんな議論が昔からあります。小学校の成績評価は、相対評価から絶対評価に変わりました。かつての5段階の相対評価から、今は3段階の絶対評価です。
絶対評価と相対評価は、それぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いと言えません。それよりも重要なことは、人事評価の結果を何の目的に使うかということです。
例えば、資格試験のように、試験結果で一定の技量を満たしていることを判断するなら絶対評価です。大学の入学試験のように入学定員が決まっていれば、試験結果は相対評価されます。金銀銅メダルを争うオリンピックは相対評価です。
つまり「評価結果の使用目的」によって絶対評価と相対評価を使い分けるのが賢明です。冒頭例に挙げた小学校の成績は、生徒の能力が基準のレベルに達していたかどうかの判断ですから、3段階の絶対評価で十分であるという考えです。
ところで、日本企業で行われている人事評価では、社員のパフォーマンスを絶対評価や相対評価して、その評価結果を様々な目的に使っています。主な目的を挙げてみると以下のようなものがあります。
1)昇進や報酬の決定
昇進や報酬を決める手段として、社員個人のパフォーマンスを評価します。
2)組織目標に対する貢献度評価
社員のパフォーマンスが、組織の目標に対してどんな貢献をしたかを評価します。いくら高いパフォーマンスを示しても、会社に貢献しないことは評価できません。職場のムードメーカーになっている人は、仕事の成果の他に評価されるといったことです。
3)人材育成
人事評価を通して、社員個々の強みや改善の余地を見つけることができます。これに基づいて、各人がパフォーマンスの向上に励むことができます。あるいは、組織として教育訓練の場を提供します。
4)コミュニケーション
 人事評価そのものではありませんが、評価プロセスと通じて、一般社員と管理者の間でコミュニケーションの場が提供されます。その結果、上司と部下とが相互理解を深める機会となります。
「人事評価の結果」を活用する上で、注意すべき3つのポイントがあります。
1)評価結果の利用目的を明確化する
2)評価の方法や基準をオープンにする
3)評価する人のレベルを高く保つ
これらは、評価方法が「絶対評価」「相対評価」に関わらず注意すべき点です。人事評価は、評価自体の「確からしさ」と同等以上に評価結果の有効活用が重要と考えます。

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評価結果の利用目的を明確化する

人事の評価結果の利用目的は、大きく3つあります。その利用目的に応じて、評価方法や基準を適切に選ぶことが重要です。
1)昇進や報酬を決めるための評価
昇進と報酬は、人事評価を基に行いますが、決め方に考え方は異なります。
昇進を決めることは、社内のポジションを決めること。ポジションの数は、限られています。どんなに優秀な人材がいても、ポジションに着ける人は限りがあります。逆にこれといった人材がいなくても、誰かをポジションに着けることになります。そこで、昇進を決めるための人事評価は、相対評価で行うことになります。
一方報酬は、社員に対する利益配分です。ポジションによって与えられる報酬成果による報酬があります。ポジションによる報酬は、毎月の給与に反映し、仕事の成果に対しては、ボーナスに反映するという方法を取っている会社の例があります。
歩合制の給与体系をとる職場では、成果に応じた報酬が支給されます。まさに絶対評価です。ただし、歩合制が実施できるのは、成果が明確にわかる職場に限られます。
役員や部長クラスを成功報酬制にしている例もあります。例えば、その期の収益に応じて報酬を決めるというやり方です。外資系企業の役員報酬などに多くみられますが、これも絶対評価です。ただし、これはその人の働きもありますが、市場動向など運にも左右されることを覚悟しておく必要があります。
2)組織目標に対する貢献度評価
社員のパフォーマンスが、組織の目標に対してどんな貢献をしたかを重視する評価があります。この評価では、絶対評価が有効でしょう。
プロ野球選手の評価に「チーム貢献度」にウエイトをおいたチームがありました。2023年シーズン、阪神タイガースの岡田監督は、
「フォアボールもヒットもチームにとっての貢献度は同じ」
ということで、フォアボールの評価を上げることを球団に認めさせ、その結果かどうか分かりませんが、リーグ優勝、日本シリーズ優勝を成し遂げています。少なくとも、年間のフォアボール数や得点数は、劇的に増加しました。
会社に対して貢献したことを優先して評価することで、組織のパフォーマンスが上がります。また、チームワークが良くなることも期待できます。
また、売上や利益に貢献したことに限らず、チームのコミュニケーションを良くした、ムードを良くしたといったことも評価する価値はあります。
逆に個人的に資格を取得しても会社に貢献しなければ、評価しないということでもあります。趣味のスポーツで活躍したことも、それを組に何らかの形で組織に貢献できたら評価することができます。
3)人材育成
人事評価を通して、社員個々の強みや改善の余地を見つけることができます。この場合は、絶対評価がいいようです。
上司と一緒に自分の強みや弱みを見つけることで、強みをより強くしたり、弱みを改善したりすることに繋がります。人事評価が、社員にとって、今の自分のレベルや上司の期待度を知る機会になります。人事評価の結果を基に、具体的に社員が自己研鑽をする、組織として教育訓練の場を提供する等が人材育成の上で望まれます。
人事評価の面談で、上司に言われたことが、その後の仕事や考え方に大きな影響を与えることが時としてあります。上司は軽い気持ちでの発言が、大きな影響を残すことがあります。このことを評価する上司は、自覚しておくことが大切です。

評価方法や基準をオープンにする

人事評価をどんなやり方で行うにしても、その方法や基準を社内でオープンにすることこが重要です。
人事評価のあと昇進や報酬が決まると
「どうして彼が昇進して、自分はできなかったのか?」
「仕事で成果を上げたのに、なぜ給料が下がるの?」
といった不満が出易いものです。その結果、
「自社には、派閥があって、彼はその派閥にいる」
「上司の好みで、評価が変わる」
など社員が勝手に想像したり、その噂が広がったりします。特に注意したいのが、昇進を逃した社員や報酬が下がった社員を納得させることです。このために、評価基準を明らかにすることが有効です。
管理職などに昇進した社員には昇進の事実だけ伝え、昇進を逃した社員には「逃した理由」を説明することがあります。昇進を逃した社員に対して、その理由を説明することは上司として辛いことですが、明確に昇進の評価基準と本人の評価結果を示すことが本人の成長を促します。しかし、「本社の意向」などと評価基準を誤魔化したり、「運が悪かった」と慰めの言葉で済ませたり、あるいは「何も伝えない」といった上司もいます。どう伝えるかは、相手の性格や行動パターンにもよりますが、社員の成長を期待して評価結果を伝えることです。
個人の成果に基づく評価は、多くの人にとって比較的分かり易いのですが、組織目標への貢献度を人事評価に入れ場合、その評価方法や基準を組織内でオープンにすることが大切です。
組織目標への貢献度が人事評価に繋がると分かれば、本人のやりがいが生まれ「組織の為の行動」がより強化されていきます。また、組織としてチームワークが向上し、同じように「組織の為」に行動する人がふえます。先の例に挙げた2023年の阪神タイガースは、「フォアボールを評価する」との基準が知れ渡ることで、ほぼすべての選手のフォアボール数が前年比で大きく増加しています。

評価する人のレベルを高く保つ

人を評価することは、とても難しいことです。
同じ職場内の社員を相対評価することはできても、職場をまたがっての評価となると相対評価であっても難しいものになります。評価する人は、普段から注意深く各職場を見ておく必要があります。
ある会社の事業部長は、管理職昇進が決まる時期になると、すべての候補者の職場を訪問し、当事者やその上司と面談をしていました。その理由を聞くと
「評価する者が、その時に直接職場や本人と接しないで人物の評価はできない」
と答えていました。その方は、評価する人が、候補者の今の職場や仕事ぶりを知らず、昔のイメージや噂で人物評価をしてしまうことを戒めていました。
昇進者を決めるなど相対評価が重視される場合、客観的データを並べたり、評価者がすべての被評価者に会ったりなどをすることで公平性が担保されます。
ところで、絶対評価をしようとすると評価する人のレベルが問われます。
「人は、自分より優れた人を評価できない」
ということがあります。視野が狭かったり、知識や経験が不足していたりすると、被評価者の表に出ない優れた点を見逃します。
ある職場にいたAさんは、大まかな性格のせいか、業務上のミスが目立ちます。そんな理由からか、それまで低い人事評価にされていました。ところが、異動してきた新上司は、Aさんの着眼点の良さに注目、この点を高く評価しました。その後、Aさんは企画系の部署に異動をして成功しています。
人事評価に実施する上司や人事担当者は、人事評価の方法と基準を共有するとともに、被評価者の隠れた才能や行動を見いだす視点・努力が必要です。

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まとめ

人事評価の方法には「絶対評価」と「相対評価」があり、「評価結果」の活用方法により使い分けられています。
「人事評価の結果」を活用する上で、3つのポイントがあります。
1)評価結果の利用目的を明確化する
2)評価の方法や基準をオープンにする
3)評価する人のレベルを高く保つ
人事評価に関連するプロセスでは、評価自体の「確からしさ」と同等以上に評価結果の有効活用が重要です。

参考記事:意味のない人事考課の改革は、上司との給与を決める真剣勝負の面接から

管理職昇格に必要な実務能力の他に「知名度」という発信力の重要性

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