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「ガバナンスとコンプライアンスの違い」とガバナンスの目的:コンプラ研修対策(その3)

2021/09/12
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「ガバナンスとコンプライアンスの違い」とガバナンスの目的

 

コーポレートガバナンスとコンプライアンスの関係

「『ガバナンスとコンプライアンス』の違いがわからない」
「『コーポレートガバナンス』と聞くと、『ちゃんとやらないと怖いことになる』とのプレシャーを感じるが、どうするのかわからない。」
そんな疑問に答えます。コーポレートガバナンスは、「企業統治」と訳されていますが、企業内でうまく説明できていないためか、よく理解されていないようです。その結果、冒頭のような反応がでます。

東京証券取引所から「コーポレートガバンス・コード」*注(2021年6月版)が出されています。これは、上場企業に対する「ガバナンス」(企業統治)の指針です。その目的は、企業の透明性を示し、日本の株式市場へ国内外の投資家を呼び込むことです。粉飾決算などコンプライアンス違反の防止に力点が置かれています。このためか、コーポレートガバナンスとコンプライアンスとが、絡みあい複雑で厄介なイメージができています。コーポレートガバナンス(以下、単に「ガバナンス」と表現)とコンプライアンスとの違いを整理し、有効なガバナンスとは何かを考えます。そのために理解すべきは、以下の2点です。

1.ガバナンスとコンプライアンスの違い
2.ガバナンスの目的は、「継続的な企業価値向上」

これを理解できれば、ガバナンスがすっきり分かります。ガバナンス体制を対外的な体裁だけのものから、真に意味あるものに変えられます。

* 注)コードには、法律のような拘束力はありませんが、東証の上場条件として位置付けられています。

 

ガバナンスとコンプライアンスの違い

コンプライアンス(compliance)とは、企業活動における「法令遵守」と訳されていますが、コンプライアンスが遵守するのは「法令」だけでなく、業務規定や社内ルールである「社内規範」、社会常識や良識による「社会規範」、企業理念や社会的責任(CSR)といった「企業倫理」なども含まれます。このコンプライアンスを維持・改善するための「管理体制」がガバナンスです。これを概念図にしたものを示します。

ガバナナンスとコンプライアンス

Corporate governance and compliance

 

ガバナンスの目的は、「継続的な企業価値向上」

東京証券取引所発行の「コーポレートガバンス・コード」は、上場企業に対する「ガバナンス」(企業管理)の指針です。コードの目的が、主として粉飾決算など法令違反防止のため、ガバナンス本来の意味が、わかりにくくなっています。このコートの副題には、「会社の継続的な成功と中長期的な企業価値の向上のために」とあります。これが、本来のガバナンスの意味です。ガバナンスとは、「継続的な企業価値向上」のための企業経営管理のことです。

コーポレートガバナンス体制の例を図に示します。

コーポレートガバナンス体制の例

Example of corporate governance system

 

目指すは、「自立的に課題解決のできる」ガバナンスの確立

企業のガバナンス体制は、会社法の規定やガバナンス・コードに示された機関を設け、組織にすれば形は整います。しかし、これが機能しているかどうかは別です。ガバナンス体制を整備している会社においても、コンプライアンス違反は起きています。そのたびに、「ガバナンスが弱い」と、更なる社外取締役の増員、監査体制の強化、リスク管理強化が叫ばれます。その結果、柔軟性を欠いたガバナンス体制が生まれ、企業活力が低下し、利益率が低下するような弊害さえ起きます。

本来、ガバナンスとは、「企業が直面する様々な課題解決を推進するエンジン」であるべきです。企業内の各部署は、その部署の目的にそって、生産や営業活動をしています。必ずしも、様々なステークホルダーに対して好ましい方向で業務を行ってはいません。それは、ステークホルダー間で利害が対立するからです。

株主からみて、利益を上げ配当を増やすことは好ましいことです。しかし、地域社会から見ると配当ではなく、地元の雇用を増やし地元の環境改善にも金を使って欲しいと思うかもしれません。

これらの課題を自立的に解決していくのが、ガバナンスです。コンプライアンス委員会や監査部門が、社内の警察や役所の出先のようになっては、課題解決体制にはなりません。残念ながら、監査部門は問題を告発するだけ。コンプライアンス委員会は、問題の解決を迫るだけ。各部署は、コンプライアンス委員会に言われた通りをするだけのガバナンス体制なっている企業が見られます。

本当のコーポレートガバナンスとは、自立的に企業自身が立てた規範に従い、良き企業となるための課題解決をしていくことだと考えます。


これならわかる コーポレートガバナンスの教科書

まとめ

コンプライアンスを維持・改善するための「管理体制」がガバナンス。ガバナンスの目的は、「継続的な企業価値向上」である。企業内の各部署は、それぞれミッションがあり、それは様々なステークホルダーに対して好ましい方向で業務を行ってはいません。それは、ステークホルダー間で利害が対立するから。
これらの課題を自立的に解決し、好ましい企業にしていくエンジンが、ガバナンスである。

参考記事:「コンプライアンス研修」を形骸化させない4つの教育ポイント(その1

「コンプライアンス違反」の防止対策と発生時の対応:コンプラ研修対策(その2)

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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