進まない組織の業務改善・改革、「問題意識」と「当事者意識」の不足が原因?
進まない組織の業務改善・改革、「問題意識」と「当事者意識」の不足が原因?
「問題意識」と「当事者意識」が、改善・改革を進める原動力
「赤字ではないが、長いこと売上高が横ばい」
「優しい社員ばかりだが、どうも覇気がない」
そんな会社にあって、
「『これは問題である』、なんとかしなくては!」
と思う人と、
「望ましくはないが、仕方ない」
と思う人がいます。あるいは、そもそもそんなことに気付かない人もいます。
同じ事象に対して、問題と考える人と問題と思わない人、あるいは問題の存在すら気付かない人という3種類の人がいます。これは、「問題意識」の違いです。
会社や組織を維持・発展させるためには、問題を見つけ、解決策(改善案、改革案)を見いだし、実行することが必要です。ところが、組織内にある「問題」を見つけられなければ、解決策など存在しようがありません。
会社の経営者や管理職は、「問題」を見つけることが、重要な仕事です。ところが、日々の業務に追われていたり、明確なビジョンを持っていなかったりすれば、「問題意識」が希薄で、「問題」に気付きにくくなります。例えば、毎日製品を千個生産している工場で、目標が1万個/日であれば、「生産力不足」が問題となりますが、目標がなければ問題とはなりません。
また、「問題意識」があっても、
「自分がそれを解決しなくては」
という「当事者意識」がなければ、解決策を考え、実行に移すエネルギーが出て来ません。
会社や組織を発展させる力は、「問題意識」と「当事者意識」から生まれます。勿論、実行に当たっては、これにカネ、ヒト、モノ、技術、情報といったリソースが必要になりますが、その前の問題を発見し、「なんとかしなくては」と思わなければ始まりません。
リーダーやチーム員が、「問題意識」や「当事者意識」を持てないのには、いくつかの理由があります。
1)組織の目標や方針が曖昧
2)責任の所在が曖昧
3)時間やリソースの不足
4)評価制度の問題
組織において、改善・改革を進める必要性があっても進まないのは、これらの要因があって、組織員に「問題」を発見する能力と「実行力」がないことが根底にあります。改善・改革の旗振り役である組織幹部、リーダーは、「問題意識」や「当事者意識」といった組織員の「意識」に目を向け変えていくことが重要です。
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組織の目標や方針が曖昧
組織の目標やビジョンが明確でないと、
「何が問題で、どこを改善すべきか」
を認識できません。目標やビジョンとは、目指す「ゴール」なのですが、これが見えないと、足元の業務にばかりに目が行って大局的な課題に目が向きません。
また、組織としての目標やビジョンが曖昧だと、各個人が自分抱える課題にだけにしか興味がないということになります。たとえ「問題点」と気づいても、組織としての問題ではないということになります。組織全体で問題意識が共有されなければ、意味のある問題を抽出できません。
組織の目標やビジョンが明確でなければ、
「このままでいい」
という現状維持バイアスがかかります。すると問題があっても問題と気づかない、たとえ気付いたとしても
「『変えること』のリスク」
を恐れて、「問題が存在しない」ということになります。リーダー層が、過去の成功体験に固執し、現在の問題や課題を軽視するといったことも起こります。
責任の所在の曖昧さ
日常業務を遂行することが、仕事上の責任の全てと思っていると「問題意識」が生まれてきません。業務を改善(改革)することも仕事であり、責任があると考えることが重要です。特に管理職などリーダー層の仕事は、組織の問題を発見することであり、解決策を実行することに責任があると認識すべきです。
管理職層が、組織の課題に対して、
「自分には責任がない」
と考え、問題解決を部下や他部門に押し付けるようであれば、改善・改革は進みません。大きな組織で責任の分散が強いと、構成員の多くが何かあっても
「放置しても誰かが、何かをする」
と感じ、問題として捉えることがないという事態になり易いものです。
組織として、「管理職には、業務の改善・改革を進める責任がある」ということを業務規程に織り込む位のことが必要な場合もあるかも知れません。
時間やリソースの不足
管理職層が日々の業務に追われ、課題を深く考える余裕がない場合、「問題意識」が薄れていきます。何か気になることがあっても、リソースが不足している状況では、
「どうせ解決できない」
と感じ、問題そのものを軽視することがあります。
また、組織員が問題解決に必要なスキルや知識を持っていない場合、「問題意識」があっても行動に移せないため、最終的に無関心を装うことがあります。特に、
「問題を発見した者が、問題を解決すべき」
との組織風土が強い場合、自分の限界を認識してしまい、
「できないことは、問題でない」
ということが起きます。
ある工場で、古い設備から漏電でボヤが起きたことがあります。設備の担当者に聞くと、
「老朽化で、ケーブルを交換する時期が来ているのは分かっていました。しかし、『予算がないので、もう少し持たせろ』と言われるのは分かっていたので、問題リストから外していました。」
という現場班長がいてあきれたというか、会社として猛反省をしました。
「問題を上げるのが、班長の仕事。カネ(リソース)を見て判断するのは、リーダーの役目であり責任である」
と結論づけた例があります。
評価制度の問題
管理職層が、「問題意識を持つことや、課題解決に取り組むことが評価されない」と感じている場合、「当事者意識」が生まれず行動に結びつかないことがあります。
リーダーの評価は、「結果が全て」という極端な結果重視の評価制度の場合、部下のパフォーマンスやチーム全体の成果に無関心となり、問題意識も希薄になりがちです。たとえ、組織の人間関係や結果を得るまでのプロセスに問題がありそうだと気づいても、見て見ぬふりする方が効率的だと判断することもあり得ます。
例えば、結果を重視するあまり、過剰な残業を見て見ぬふりをする。コンプライアンス上、問題となるような手抜きを見過ごすといったことがあります。
また、制度というか組織文化として、
「問題を指摘すると責任を問われる」
とうことが広まっていると管理職層が問題意識を持つことを避ける傾向が出易くなります。
「問題点を見つける」
ということも重要な評価項目として定着させることが大切です。問題点を指摘してばかりの人に対して、
「問題点を指摘するだけで、何もしない人」
と批判される側は言いたくなりますが、恐れないで、「出来ることはやる」という姿勢があれば、指摘を評価したいものです。
まとめ
組織の改善・改革を進めるには、リーダーやチーム員が、「問題意識」と「当事者意識」を持つ必要がある。これを持てないのには、いくつかの理由があります。
1)組織の目標や方針が曖昧
2)責任の所在が曖昧
3)時間やリソースの不足
4)評価制度の問題
改善・改革の旗振り役である組織幹部、リーダーは、「問題意識」や「当事者意識」といった組織員の「意識」に目を向け変えていくことが重要です。
参考記事:研修成果に大きな差が出る「当事者意識」の有無とリーダーの役目
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