「目的志向型」社員と「問題回避型」社員の特徴と対応方法
「目的志向型」社員と「問題回避型」社員の特徴と対応方法
「目的志向型」社員と「問題回避型」社員の違い
「あなたは、なぜ仕事をしているのですか?」
こう社員に問いかけると、様々な答えが返ってきます。
「仕事が、楽しいから」
「社会に貢献したいから」
「昇進して給料を上げ、豊かな暮らしをしたいから」
「家族の生活のために給料をもらうため」
「仕事はつらいが、辞めたら暮らしていけない」
こんな具合に「仕事をする理由」は、様々です。それらを分類していくと、仕事に対する姿勢が2つのタイプに分かれることがわかります。
それは、仕事を「やりたいこと」と捉えるタイプと「やらなければならないこと」と捉えるタイプです。この姿勢の違いにより、仕事の効率やイノベーションに大きく影響を与えます。
人の動機は、以下の2つに分類できます。
1)心地よくなりたい(目的達成)
2)不快を避けたい(問題回避)
心地よくなりたいというタイプを「目的志向型」と呼びます。不快を避けたいタイプを「問題回避型」と呼びます。
仕事を「やりたいこと」と捉える傾向が強い人は、「目的志向型」と言うことができます。仕事を「やらなければならない」と捉える傾向が強い人は、「問題回避型」と言えます。
その人が、「目的志向型」か「問題回避型」かの違いは、一概に優劣をつけることはできません。ある種、考え方の癖のようなもので、そのタイプに合った仕事の進め方があります。また、その上司も部下のタイプに合った仕事の与え方、フォローの仕方といった対応が必要です。
一般的に日本では、「問題回避型」の社員が多いかも知れません。毎年、話題となる米国のギャラップ社の報告「グローバルワークプレイスの現状」では、日本の従業員エンゲージメント(engagement=従業員の会社に対する「愛着」や「思い入れ」)は、常に調査対象の140余の国で最低水準レベルです。例えば、同調査の2023年版によれば、仕事や会社への熱意や貢献意欲などが高い「エンゲージしている社員」の割合は5%で、グローバル平均の23%を大きく下回っています。
狭い範囲ですが、私が海外(米国、韓国、タイ、中国、オーストリア)で実際に仕事をした経験からすると、自社の対する「愛着」や「思い入れ」について、こんな差がでることが不思議に思えます。接した範囲では、むしろ日本人社員の方がはるかに「会社のため」に頑張っているように感じます。ただし、仕事に対する考え方として、「やらなければならない」と考える「問題回避型」の考えを持つ人が多いのは確かです。これが、アンケート調査では、「会社に愛着があるから」仕事をしているのではなく、「やらなければいけないから」仕事をしているということになり、「日本の社員は、エンゲージメントが低い」という結果になっているのではと推測します。
この記事では、「目的達成型」の人と「問題回避型」の人の特徴と対応についてご紹介します。
目的達成型の社員の特徴と対応
「目的達成型」の社員には、
1)目標達成に向けた高いモチベーションがある
2)目標に向かって計画的な行動ができる
3)成果を重視し、高いパフォーマンスを発揮できる。
といった長所があるがある反面
1)目標の達成を急ぐあまり短期的な視点になり易い
2)目標達成に対する強いプレッシャーによるストレスを受ける
といった短所があります。
こんな目標達成型社員には、
① 明確な目標設定をする
② 成果に対する報酬
③ 進捗のフィードバック
をハッキリさせることが、益々モチベーションが上がり成果が期待できます。仕事をする上で、目標達成型の社員は、仕事に前向きな積極的であり、上司として扱い易い存在です。むしろ、欠点としての短期的な成果を急ぎ過ぎたり、頑張り過ぎたり、一人よがりになったりすることに注意が必要です。
問題回避型の社員の特徴と対応
「問題回避型」社員には、
1)リスクを避ける能力がある
2)慎重なアプローチ、安定性の確保ができる
といった長所がある半面
1)リスクを避ける傾向が強いため、革新的なアイデアや新しい挑戦に対して消極的
2)リスク回避するためビジネスチャンスを逃すことがある
3)慎重過ぎて変化への対応が遅い
といった短所があります。
こんな「問題回避型」社員は、上司から見ると短所が目立って、「動きの鈍い社員」と見られがちになります。上司として、このタイプの社員と接するときは、以下のポイントを押さえることが有効です。
① リスクに対する恐れを除く
「問題回避型」の社員が一人で計画を策定すると、どうしても慎重になり過ぎたり、リスクを恐れ過ぎたりする傾向が出ます。上司は、リスクに対する責任を部下が一人で負うものではないことをあらかじめ理解させておくことです。
更に、
「もし問題が発生したらサポートします」
といった安心して仕事に取り組めるようなサポート体制を用意しておくことが効果的です。
「もし困ったことがあれば、上司に相談すること」
と上司が口でいっても相談することができないのもこのタイプの社員です。普段から、
「どんな調子ですか?」
と声をかけるなどのサポートしていくことが重要です。
② 段階毎の目標設定
このタイプの社員には、大きな目標を掲げるのではなく、段階毎の目標を与える方が良いでしょう。徐々にステップを踏んで目標を達成する形の方が、過度なプレッシャーを感じずに仕事を進めることが出来ます。
まとめ
会社や組織において、仕事を「やりたいこと」と捉える傾向の人と「やらなければならないこと」と捉える傾向の人に分けることができます。
前者を「目的達成型」社員、後者を「問題回避型」社員と呼ぶことができます。
「目的達成型」社員は高いモチベーションを持つ傾向があり、「問題回避型」社員はリスクを避ける能力に優れる傾向があります。それぞれのタイプには長所短所があり、上司はこれに対応した接し方をすることが大切である。