「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

障害者向けの製品、施設のバリアフリー化は、障害者や介助者のニーズを掴むことから

 
車椅子の乗った女性のイラスト
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

障害者向けの製品、施設のバリアフリー化は、障害者や介助者のニーズを掴むことから

障害者や介助者のニーズを掴む方法

バリアフリーを謳った公共の建物でも、実際に利用した車椅子の障害者から、
「もうちょっと配慮してもらえたらいいのに」
との声が挙がることがあります。(福祉団体の方の話)
例えば、車椅子に乗った障害者が図書館に行って検索用PCを操作しようとしたら机が高過ぎる、書棚の間が狭いといったことです。せっかく入口やトイレをバリアフリー化しても、障害者のニーズが十分に把握できておらず中途半端になっています。
令和6年(2024年)4月1日に施行された「改正障害者差別解消法」では、国や自治体だけでなく民間の事業者も、障害のある人から困りごとなどについての申し出があった場合に合理的な配慮を行うことが義務づけられました。改正された法律では、国や自治体などだけではなく、民間の事業者に対しても、障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務づけられました。この法律を受けて、民間の事業者でも製品の提供や施設で、障害者に対する配慮が必要になりました。ところが、冒頭の例に挙げたように、実際に製品や施設を利用した障害者や介助の人からは、「もう少し」という声が聞こえてきます。
これは、事業者が製品や施設を計画する際、障害者のニーズを十分に掴んでいないことが原因の1つです。障害者向けの製品や施設を作るのに「障害者に聞くこと」が十分できておらず、事業者の想像で設計してしまっていないかということです。
障害者に限らず一般的に顧客ニーズを掴む方法として、以下のようなものがあります。
1)アンケート調査
2)インタビュー
3)顧客データの分析
4)行動観察調査(エスノグラフィー調査)
それぞれに、メリットとデメリットがあります。例えば、アンケート調査では、広い範囲の意見を集めることができますが、そもそも回答率が低くかったり、表面的な質問しかできなかったりといったことがあります。インタビューは、相手の感情も深く意見を聞くことができますが、時間とコストがかかることや狭い範囲の相手にしか聞けないということがあります。
特に障害者のニーズを掴もうとするとき3つのポイントがあります。
1)ニーズには、障害者自身のニーズと介護(介助)者のニーズがある
2)障害者が未経験では、ニーズがわからない
3)障害は同じではない
これらを考慮して、障害者にインタビューしたり、行動を観察したりすることで、本当のニーズを掴みより使いやすい製品や施設を作ることが期待できます。
ただし、分かっていても障害者のニーズを聞くことは、難しいことです。対象の方をどう選び、どうアクセスするのか知っている方はあまりおらず、障害者団体などに問い合わせるといったことが行われています。

障害者のニーズを聞けるサービス

最近知ったのですが、広島市にミコクラースという会社があり、障害者のニーズを教えてくれたり、対象となる障害を抱えた人や保護者を紹介したりするサービスを提供しています。この会社では、障害者とその親を登録してあり、障害者向けの製品や施設を計画する事業者(自治体を含む)に対して、ノウハウの指導や、障害者に対するヒヤリングを行う場合の人選・紹介をしています。
このサービスでは、障害者のニーズを聞く際のハードルを大きく下げています。

広告

3町のバリアフリー ハンディーガイド・さわる地図ほか (ユニバーサルデザインでみんなが過ごしやすい町へ)

ニーズには、障害者自身のニーズと介護者のニーズがある

車椅子に乗った障害者は、外出するとき一人場合もあれば、付き添う人(介助者)がいる場合もあります。「障害者のニーズ」を掴むとは、その両方を把握することです。
車椅子に乗った障害者にやさしい設備であると同時に、その介助者が快適に動け、休息できる施設を目指すことが理想です。障害児が着やすい服、背負い易いリュックサックであると同時に、介護者が着せやすい、着脱させ易いデザインを考案された製品が出されています。
最近問題となっているのが、障害児の親の高齢化です。障害者を介護する人の高齢化が、新たなニーズを顕在化させています。少ない例ですが、障害者とその親が一緒に住み、ケアを受けることができるような施設も出来てきています。

障害者が未経験では、ニーズがわからない

ニーズには、潜在ニーズと顕在ニーズとがあります。
顕在ニーズとは、顧客が自覚しているニーズを指します。障害者が実際に使ったことのある製品や利用した施設については、明確にニーズを自覚しています。
一方、潜在ニーズとは、顧客がその必要性に気づいていない状態、または意識できていない状態にあるニーズを指します。障害者が、使ったことがない製品や利用したことがない施設については、障害者自身(介護者も含め)ニーズを自覚しにくいものです。
施設のバイアフリー化、障害者向けの製品が増えることで、障害者が外に出て行動する機会が増えています。潜在ニーズが顕在化する機会が増えています。
様々な飲食店に障害者がお客様として入店してみたら、どんなニーズがあるかと想像してみると、必要な設備や配慮が分かります。

障害は同じではない

一概に「障害者」といっても、障害の種類は様々です。視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、精神障害等々あります。更に、その程度(等級)も様々です。事業者が、製品や施設を提供する場合、どんな障害、どんな等級の利用者かを想定することが重要です。さらに、障害者が使っている道具によっても状況が異なります。
ある施設で、車椅子でも利用できるように通路やトイレを整備しました。これで、車椅子の方も施設を利用できるようになったのですが、ある時電動車椅子に乗った方が来場されましたが、通路などが狭すぎて、うまく利用できません。結局、簡易型の車椅子に乗り換えてもらうということになりました。
障害の種類と程度、使っている介助機器によって、ニーズが異なります。製品や施設を提供する事業者は、対象者を明確にイメージし、ハードのみならずソフト面でその対応をとることです。
たとえば、設備として対応できない場合は、介助をすることもあります。鉄道会社では、車椅子の利用者に対して、乗降時に駅員が介助することを行っています。
広告

まとめ

障害者向けの製品やバリアフリーの施設を計画するとき、障害者のニーズを掴むことが重要です。その際に3つのポイントがあります。
1)ニーズには、障害者自身のニーズと介護(介助)者のニーズがある
2)障害者が未経験では、ニーズがわからない
3)障害は同じではない
これらを考慮して、障害者にインタビューしたり、行動を観察したりすることで、本当のニーズを掴みより使いやすい製品や施設を作ることが期待できます。

参考記事:ペルソナの気持ちになってつくる「共感マップ」の6つの要素と3つの有効活用ポイント

 

 

 

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2024 All Rights Reserved.