「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

人に係る仕事の「日報」や「業務報告」は、相手の気持ちを掴んで書くこと

 
業務報告をする人のイラスト
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

人に係る仕事の「日報」や「業務報告」は、相手の気持ちを掴んで書くこと

 

人に係る仕事の「日報」や「業務報告」は、相手の気持ちを掴んで書くこと

「〇月〇日、T社訪問K課長と面談。挨拶及び新商品の説明を行う。」
これは、ある製造会社の営業マンのAさんが書いた営業日報の一部です。何か物足りなさを感じませんか。
また、ある青少年育成委員会(教育委員会下部組織)に提出された学校長から報告に
「夜8時頃、コンビニの店長から『当校の生徒数名が店の前にたむろしている』との通報があり、生徒指導の教員が出向き帰宅させた。非行行為等無し。」
といった報告を目にしたことがあります。この報告も何か足りない気がします。
いずれの報告も上司や委員会として、部下や教員の活動を可視化し管理するための「報告」になっています。いわば、「サボっていないか」を監視するためのものです。
このような報告は、部下の管理には役に立ちますが、営業活動の目的である「売上増」、生徒指導の目的である健全な「青少年を育成する」ことにどれだけ役に立つか疑問が残ります。そこに物足りなさを感じるのです。
例に挙げた2つの報告書に不足しているのは、相手である顧客や生徒の反応や気持ちが書かれていないことです。対人関係を含む営業日報や業務報告には、
1)どんなアクションをしたのか。
2)そのアクションに対して相手はどんな反応、どんな気持ちを抱いたか。
3)次のアクションは何か。
を含めることで、目的に対する成果が期待できます。(詳しくは、参考記事:「面倒なだけの「営業日報」を売上増に結び付ける3つのポイント」
しかし、こちらのアクションに対して相手がどんな気持ちを抱いたかを掴むのは、難しいことです。商品の説明をして、ニコニコと熱心に聞いてくれたからといって、こちらが一番欲しい「購入しよう」という気持ちを抱いているかどうかは分かりません。注意した生徒がすぐに帰宅したとしても「先生の言葉に納得」したのかどうか分かりません。
相手の気持ちが把握できないままでは、次にどんなアクションをすべきかが分かりません。
相手の気持ちを知るには、ストレートに
「説明をお聞きになって、購入する気になりましたか?」
「先生の言うことに納得した?」
と質問すればいいのですが、相手が素直に本音を言うことは稀でしょう。
そこで、相手の気持ちを掴むヒントとなるのが、相手の立場になって考えることです。これを文字としてメモや報告書を書いてみると、より相手の気持ちを考え易くなります。
例えば、先の例に挙げたT社K課長の立場や気持ちになって報告を書いてみると、
「〇月〇日、S社のAさんが1年ぶりに来社。新商品の説明を受けたが、現行品と大差なく変更の必要性がない。以前も今回同様、当社の実情に合わない商品の説明があった。」
などと書くことできます。逆に相手が好印象を持ったと仮定したストーリーを書くこともできます。それらを元に次の質問や行動をとることができます。
相手の気持ちを想像するときステップがあります。
1)相手周辺での出来事を列挙する
2)相手の気持ちを複数仮定する
3)相手の一番関心のあることを元に相手の気持ちを考える
このステップをたどることで、相手の気持ちを掴み、次のアクションに繋がる「報告」ができることが期待できます。

相手周辺での出来事を列挙する

先に挙げた例の営業マンAさんにとって、T社K課長は「訪問先」です。K課長からみれば、Aさんは「来訪者」です。Aさんは、毎日のように売り込みにくる各社の営業マンの一人かもしれません。
相手の気持ちを掴むポイントは、相手であるK課長の周りで起きている中で、Aさんの訪問はどんな位置付けであったかです。各社のセールマンがしょっちゅう来ているのか、めったにこないのか。あるいは、Aさんが毎月来るのか、1年に1回も来ないのか。
例えば、相手の立場で日報風にメモをするなら
「今月、何件、○○の売り込みで来客やメールあり。Aさんも同様な商品を紹介した。」
なのか、
「突然、Aさんが新商品の売り込みあり。今年になって、商品の売り込みに来た初めておの会社。」
ということです。「他社から同様の売り込みがあったか」などはお客様に聞くことは可能です。
相手の周辺で、何があったかという事実を掴むことは、気持ちを掴むより容易です。なぜなら、相手の気持ちは、その時点で必ずしも確定していないからです。
気を付けたい点は、同じ事実であっても相手の受け止め方(気持ち)は、こちらと異なるということです。
例えば、30人の生徒を受け持つ担任教師にとって、生徒一人は30分の1です。ところが、生徒からしてみれば、担任先生が全てです。先生の立場からすると
「2人の生徒を注意した」
という事実は、皆良い生徒であるが、30分の2である2人に問題点があり注意したということになります。しかし、生徒からすると
「クラスで自分達2人だけが、先生に注意された」
ということになります。注意された生徒にしてみれば、人間関係のすべては、先生と自分たち2人だけという感覚でしょう。生徒の心のスクリーンには先生しか映っていません。
先ほどの例に挙げた営業マンAさんにとって、T社は多くの顧客の1つです。ところが、T社の担当からみれば、Aさんは唯一人訪問してくる営業マンかも知れません。
相手の立場で、起きている事実を並べると、そこからどんな気持ちを持つかの推測ができます。

相手の気持ちを複数仮定する

相手にとって同じ事実でも、これに対する気持ちは様々です。

例えば、同じような売り込みを受けた顧客は、
「どれも同じようなもの。安い業者で決めよう」
と思うこともあれば、
「どれも同じようなものなら、手間のかからない業者に頼もう」
と思うこともあります。値決め交渉を「面倒」と感じるか、「面白い」と感じるか相手によって違います。
大切なのは、相手の気持ちを複数仮定することです。自分の経験や考え方に基づくバイアスがかかり、「自分の感じることは相手も同じく感じ、自分の考えることと同じことを相手も考える」と思い込んで、相手の気持ちを推測しがちです。
相手の気持ちを複数仮定することで、「自分と同じだろう」というバイアスから抜け出すことができます。

相手の一番関心のあることを元に相手の気持ちを考える

売り込みに行った訪問先の相手は、必ずしも「買うこと」に関心があるわけではありません。給料や昇格のことが一番の関心事かもしれませんし、家族関係のことかもしれません。関心が、「買うこと」でなければ、「手間を掛けずに調達すること」「周りから問題視されない購買をすること」を考えているかもしれません。
ある半導体をつくる韓国のS社での私の経験ですが、購買部門に行くといつも
「今期はいくら値下げしてもらえますか?」
の一点張りです。社内では、S社は値下げのことしか関心がないことが定説になっていました。ところが、商社の人から、
S社の購買担当の人事評価は、購入価格した価格で決まる」
との情報を得ました。そこで、改めて購買部門を観察すると、価格そのものに関心があるのではなく、自分の人事評価や昇格に一番の関心がありそうだと分かりました。購買担当は、「決めた価格が、上司や人事部門にどう評価されるか」が問題であると気付きました。そこで、価格はそのままにして、「世界的にどれだけ原材料が値上りしているか」、「まともに価格を計算したものより、現状どれだけ安いか」「ライバル会社の購入価格よりS社がいかに安く購入しているか」について、そのまま上司や人事担当に説明できる資料を用意したことがあります。これが、功を奏したのか、価格据え置きでも相手に大変満足してもらい、その後も良好な関係が続いています。

広告

まとめ

人に係る仕事の「報告」は、相手の反応や気持ちを掴み記述することが有効性を高めます。相手の気持ちを掴むにはステップがあります。
1)相手周辺での出来事を列挙する
2)相手の気持ちを複数仮定する
3)相手の一番関心のあることを元に相手の気持ちを考える
このステップをたどることで、相手の気持ちを掴み、次のアクションに繋がる「報告」ができることが期待できます。
参考記事:「ルールを守らない社員」が、ルールを守らない理由とは

 

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2024 All Rights Reserved.