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「なぜなぜ」のギャップ・アプローチの限界とポジティブ・アプローチ

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「なぜなぜ」のギャップ・アプローチの限界とポジティブ・アプローチ

 

ギャップ・アプローチの限界とポジティブ・アプローチ

「何が、悪いんだ!」
「なんで、この機械は、動かないんや!」
会社でトラブルが発生すると、こんな言葉が出て、すぐに原因探しが始まります。特に工場では、「なぜなぜ」を繰り返して原因を追究することを習慣化し、不具合や欠点改善に成果を上げてきました。オフィスでも、同じように目標未達の原因を分析・追及しくことが多いようです。
これらは、「不具合原因追及型の問題解決」とか「ギャップ・アプローチ」と呼んでいる問題解決手法です。日本の会社で広く普及し、日本の会社の成長を支えてきた方法です。
しかし、問題によっては、ギャップ・アプローチでの解決が難しいことがあります。例えば、人や組織の問題に、ギャップ・アプローチで、「なぜなぜ」問答を繰り返せば、どうなるか想像してみてください。人には感情があり、人の集まりである組織にも感情があります。原因探しが、
「結局、誰が悪いんや?」
というような一方的に人に向けた追及になれば、人にも組織にもネガティブ感情が充満し、創造的な行動ができにくくなります。
機械や仕組みには感情がありませんので、いくらダメ出ししても大丈夫です。しかし、「複雑系」や人・組織の課題解決には、「あるべき姿」からの差を追及する「ギャップ・アプローチ」より、「なりたい姿」に向かう未来志向の「ポジティブ・アプローチ」の方が有効なこともあります。
この記事では、ポジティブ・アプローチの効用を、「なぜなぜ」問答に代表されるネガティブ・アプローチと比較しながらご紹介します。

ギャップ・アプローチとポジティブ・アプローチの違い

「ギャップ・アプローチ」とは、 「ギャップ」すなわち「差」を明確にすることを主体としたアプローチです。 「ギャップ」とは、「埋めなくてはならない空白」であり、「足りないもの」に焦点を当てたものです。つまり、
「出来ないことをできるように」して、問題を解決し「あるべき姿」を実現する方法です。
これに対して、「ポジティブ・アプローチ」とは、 「積極的」「肯定的」アプローチです。
「足りないもの」ではなく、「持っているもの」を肯定的にとらえ、 それを伸ばすことで、理想に到達しようとするものです。つまり、
「出来ること」をして、課題を克服し「なりたい姿」を実現する方法です。
ポジティブ・アプローチが、有効な事例として、組織の活性化などの人が絡む問題。DX(デジタルトランスフォーメーション)のように、やらなければならないと思っているが、何からやったらいいのかわからない課題などです。

ギャップ・アプローチの図

Gap approach and positive approach

 

ギャップ・アプローチの限界とポジティブ・アプローチのすすめ

ギャップ・アプローチは、論理的に物事を考えることと相性がいいのが特徴です。問題が発生したら、「あるべき姿」と現状を比較して、MECE(=Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)「漏れなく、ダブりなく」的アプローチをします。
明確な答え(目標)としての「あるべき姿」があり、現状との差が明確であるとき、ギャップ・アプローチは、威力を発揮します。高度成長期において、欧米に見本となるモデルがあり、これをキャッチアップするには、もってこいの手法でした。「故障ゼロ」、「品質不良ゼロ」などの活動が、日本企業が世界を席巻した原動力となりました。
ところが、どこに向かっていくかなど、答えが複数あるような場合において、ギャップ・アプローチは行き詰ります。例えば、DXにおいては、デジタル技術を使ってできることが無限にあります。言い換えると、自分で目標を決めて、自分で「課題」としてのギャップを見つける必要があります。こんな場合こそ、ポジティブ・アプローチが有効になります。
1990年代までに、日本企業が、欧米に追い付き、目標とすべきモデルが見当たらなくなりました。その後、日本企業は、自らモデルを創造する時代になったのですが、この対応が遅れてしまいました。これは、ポジティブ・アプローチの考え方一辺倒だったことが理由の1つかも知れません。


イノベーションの考え方 (日経文庫)

ポジティブ・アプローチの方法

例えば、営業担当者が
「もっと売れるようになりたい」
「もっと残業が少なくなるようにしたい」
「社内の雰囲気をもっと前向きにしたい」
そんな未来の「ありたい姿」を描き、現状との差を「課題」として、これを達成するのがポジティブ・アプローチです。
ポジティブ・アプローチを進めるには、5つのステップがあります。
1)何をしたいかを決める。
何を検討するのかテーマを決めます。
2)強みを見つける。
自分や自社でできること、使えることを見つけます。うまくできていること、うまくできそうなことなどを確認していきます。
3)「なりたい姿」を描く。
自分や会社として、「なりたい姿」をイメージします。できるだけ具体的に描くことがポイントです。例えば、運送会社が、「国内荷物を24時間以内に届ける」と目標を定めたようなことです。
4)「なりたい姿」を実現するためにどうしたら良いかを考える。
「なりたい姿」を実現するには、「強み」や「うまくできていること」を活用することです。また、「うまくできていないこと」を改善する、他の例を参考にするなど、広い視野で考え直します。これは、イノベーションの発想と基本は、同じです。
5)新しい取り組みを始める。
実現するための方策を考えたら、実施することです。ポジティブ・アプローチでは、方法が複数になることが多くなります。いろいろ試しながら進めます。

まとめ

日本では、「なぜなぜ」問答を繰り返して原因に迫り、問題を解決する「ギャップ・アプローチ」で成功してきました。しかし、「複雑系」や人・組織の課題解決には、現状の「あるべき姿」の差を追及する「ギャップ・アプローチ」より、「なりたい姿」に向かう未来志向の「ポジティブ・アプローチ」の方が有効なこともあります。

参考記事:「あるべき姿」を実現する「バックキャスティング」を使う3つのステップ

改革は、「職場の空気」を良くしてからでなければ進まない

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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