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「企業の成長サイクル」と雇用の変化は違う、必要な経営手法の変化

 
企業の成長サイクルを考える人
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「企業の成長サイクル」と雇用の変化、経営手法の変化

 

企業(事業)には、成長サイクルがある

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす。」
これは、平家物語の冒頭の文です。
「この世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。沙羅双樹の花の色は,どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている。」
といった意味でしょうか。
企業もこの法則に従い、成長し繁栄し、そして衰えるときがきます。企業が生まれ、成長し、繁栄して衰える過程をイメージしたものが、「企業の成長サイクル」です。
「企業の寿命は30年」とよく言われますが、もっと長く続いている企業が沢山あり、100年企業も珍しくありません。正確には「事業の寿命は30年」と言うべきで、100年以上続く企業も、中身の事業は変化したり、入れ替わったりしています。
この企業の成長サイクルをイメージ図にしたものを示します。縦軸に「成長性」をとっていますが、実際は「売上額」と考えてください。

 

企業の成長サイクル

corporate growth cycle

 

この過程を簡単に説明すると以下のようになります。
1)創立期
創立期の会社には大抵の場合、「ヒト・モノ・カネ」のいずれも十分ではありません。従い一人の社員が複数の部門の役割を果たすことになります。資金的な制限によって行える施策の選択肢も非常に限定されています。
この段階では、「いかに会社を成長路線に乗せるのか」ということが重要になります。
2)成長期
顧客に求められるモノやサービスが開発でき、最低限の組織と資金が用意できれば成長期になります。成長期では、「いかに事業を大きくしていくか」が重要です。事業を大きくする方法は、自社の規模を大きくする他に、代理店を使って販路を拡大したり、フランチャイズ化したりなど様々あります。
この時期、いかに「ヒト、モノ、カネ」を集めることができるかが、成長の鍵となります。
3)成熟期
成熟期は事業の成長が一段落する時期です。売上がピークを迎えますが、その後も利益の拡大が続きます。この時期、業務改善と生産性の向上が重要になります。先を見越した経営者なら、早くから衰退期対策として、M&Aや新規事業創出に取り組み始めます。
4)衰退期
衰退期になると成長はマイナス、利益も緩やかに低下していきます。新規事業やM&Aにより、次の成長への戦略を模索が必要になります。

このような「企業の成長サイクル」と深い関係がある事柄が2つあります。
1)雇用の変化
2)経営手法の変化
企業の成長サイクルは、売上や利益によって上昇や下降、ピークを判断します。しかし、雇用は成長サイクルのカーブに先行して変化します。経営者が、このギャップを認識していなければ、成長期に成長しきれなかったり、衰退期に突然クラッシュしたりすることが起きます。
なお、この記事は、大前研一著「第4の波 大前流『21世紀型経済理論』」(小学館)を参考にしています。


第4の波: 大前流「21世紀型経済理論」

雇用の変化

企業が必要とする社員数(雇用)は、企業規模に比例していると考えがちです。ところが、実際に企業が必要とする社員数は、異なります。ただし、日本の場合、終身雇用や解雇に対する規制があって、必要な社員数と実際の社員数が異なることが起きています。
以下、企業の成長過程における必要社員数について考えてみます。
1)創成期
創成期の企業では、まだ規模も小さく、沢山の社員を必要としません。むしろ、新しいアイデアや困難を乗り越える力をもった「人材」が求められます。フランチャイズで拡大を図ろうとする企業では、リーダーとなり得る人材確保が課題となります。
2)成長期
成長期を迎えた企業は、如何にして多くの社員を集めるかが、成長の鍵になります。台湾、韓国、中国企業の急成長は、成長企業(事業)に人を集中させることで成功しています。日本では、職業の流動性や、学校教育に流動性がなく、立ち遅れています。
たとえば、システムエンジニアが不足となれば、学校はその人材教育枠を一気に増やしたり、転職が盛んになったりすることは、日本ではありません。
3)成熟期
成長期の後半から成熟期になると、実は社員が過剰になりがちです。特に製造業などでこの傾向が強く現れます。それは、成長期の後半になると、自動化やシステム化が進み、生産性(社員一人当たりの生産量)が、飛躍的に高まるからです。
例えば、かつては一工場で数千人もいた電気製品の組み立て工場は、十分の一にも満たない作業員で稼働しています。企業城下町と言われるような所でも、実際に地元企業の雇用されている人は、決して多くないのが現実です。

2022年から2023年にかけて、アマゾンやメタが好業績にも関わらず、大量の人員を解雇した話がありました。(「東京新聞」2023年1月)この現象を新聞は、景気の変動で説明しようとしていますが、むしろ企業の成長過程として、必要な設備投資、システム開発が一段落して、生産性が上がり、開発や運営要員が余剰になったことが原因とみることもできます。
どんな事業も、その成長期に多くの人を必要とし、成長期の後半から成熟期には、不要となります。この流れにうまく対応できないのが、日本企業なのかもしれません。
4)衰退期
衰退期に入って、需要も減少すると従業員が不要なことは、誰の目にも明らかになります。この段階で、雇用を減らすことを始めるのは、「遅い」と考えるべきです。この段階の企業を救おうと政府や金融機関が支援策を出してお、無駄になることが多いようです。

 

経営手法の変化

企業の成長過程(創立期、成長期、成熟期、停滞期/衰退期)に合わせて、経営手法を変えていくことが重要です。成長サイクルに合わせた、「ストレッチ経営」「シュリンク経営」「イノベーション経営」をご紹介します。
1)ストレッチ経営
ストレッチ経営とは、企業規模の拡大、従業員を増やす、設備を増やす、チェーン店を増やすといった方法。企業の創立期や成長期に有効な手法です。
2)シュリンク経営
シュリンク経営とは、事業が衰退期を迎えたとき、従業員を削減する、設備を統合するといった手法。いわゆるリストラ経営。
ひところもてはやされた「選択と集中」の経営は、シュリンク部門とストレッチ部門とを分離・明確化する手法と言えます。
3)イノベーション経営
イノベーション経営とは、製品、生産、販売、サプライチェーン、組織の内、いずれかの「やり方」を変えていく経営。企業の創立期や衰退期(停滞期)に入った時に必要な方法。新規顧客や新規製品のタネを蒔き、新たな事業を起こし続ける経営手法です。

まとめ

企業には、「創立期」「成長期」「成熟期」「衰退期」というサイクルがあります。企業の成長サイクルと強い関係がある事柄が2つあります。
1)雇用の変化
2)経営手法の変化
企業の成長サイクルは、売上や利益によって上昇や下降、ピークを判断します。しかし、雇用は成長サイクルのカーブに先行して変化しています。経営者が、このギャップを認識していなければ、成長期に成長しきれなかったり、衰退期にクラッシュしたりすることが起きます。

参考記事:挑戦せずに「何もしない方が得」なのは、日本の制度や暗黙のルールのせい

成功事例の話では、「生存者バイアス」がかかりやすいと心得よ!

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