「漫然とした不安」を「安心」に変える3つのポイントとは
「漫然とした不安」を「安心」に変える3つのポイントとは
「漠然とした不安」を「安心」に変える3つのポイント
「会社に閉塞感が漂っている」
「漫然とした不安がいつもある」
今、すぐに倒産するという状況ではないが、長く業績が低迷していると、社内に何とも言えない「閉塞感」が広がります。個人として、肉体的にも経済的にも、大きな問題を抱えているわけではないが、今後のことを思うと「漫然とした不安」がある。そんなことはありませんか。
日本という国全体が、経済の低迷、自然災害の多発、犯罪ニュースなどに接して、国や社会に対して「不安」が増大しているように思えます。政治も行政も何かといえば、「安全・安心」が、大きなスローガンになっています。「街の声」と称した街頭インタビューでも「安全・安心」を求めるものが多いようです。
人は、生活する中で、職場や学校、通勤通学途中など様々な場所で、程度の差はありますが、いつもストレスを感じています。TVやSNS、人間関係など、様々な種類のストレスを感じます。職場だけでなく、家族やパートナー、親しい友人など、本来なら緊張する必要のない相手と一緒にいるときでさえ、イライラしたり、ドキドキしたりとストレスを感じます。しかし、同じストレスでも、人によって「不安」を感じる人とそうでない人がいます。人によっては、「不安」どころか、パニックになったり、「凍りついて」固まってしまったりします。
そもそも「安心」とは、個人の主観に基づく人間関係や環境への信頼感覚です。あくまでも感覚的で、人によって違います。客観的な外部条件で示される「安全」とは違います。実際、安全については、国際的基準がある分野があります。
同じストレスを受けても、安心が感覚的であることで、受け止め方に個人差がでるのです。また、「安心」は、その人がその時感じている「心地良い」という身体感覚や不快になっても時間が経てば改善するという「予測」によってつくられます。今が最悪の状態でも、改善する予測が出来ていれば、「安心」が生まれます。
自分か安心する、誰かを安心させるには、3つのポイントがあります。
1)現状を知る
2)今後の改善予測がある
3)「副交感神経系」を整えリラックスする
「安心」は、今が心地良いか、今後良くなるという予測があるか、リラックスしてストレスからうまく逃げられかで得ることができます。
現状を知る
健康診断で異常が見つかり、癌の精密検査の結果を待つ間の不安。大学入試の結果を待つ間の不安。今の状況が分からないと、「不安」を感じるものです。
「会社の経営が悪そうだ」と社員が感じているとき、社員に経営状態を正直に知らせることで、「不安」が軽減します。たとえ、状況が悪くても、各社員は、それなりに解釈して受け入れてくれます。
人は、現状が分かれば、次の行動を起そうとします。「漠然と不安」に思っている暇はありません。行動を起すことで、「不安」を忘れてしまいます。現状が分からないから、どう行動したらいいか分からない。そこに「不安」生まれる原因があります。
今後の改善予測がある
「安心」は、その人がその時感じている「心地良い」という身体感覚と、不快になっても時間が経てば改善するという「予測」によってつくられます。例えば、今が最悪の状態でも、改善する予測が出来ていれば、「安心」できます。
「予測」について、数学で表せば、その状態(例えば、収入)の過去からの変化を微分してプラスならなら「安心」であり、マイナスなら「不安」ということができます。言い替えると「上昇傾向」なら「安心」、「下降傾向」なら「不安」ということです。例えば、収入の絶対値が多い少ないより、収入が来年も増えると予想できるなら「安心」、減ると予想されれば「不安」になり易いものです。
「安心」は、現状の体調や環境の「心地良さ」だけでなく、今がどうであろうと「今後良くなるだろうという予測」によっても生まれるのです。
政府が、少子化対策、原子力発電対策といった政策を発表します。ところが、
「財源が、今後つめていきます」
「核廃棄物の最終処分場は、今後検討していきます」
といった具合に将来の予測が、曖昧なため人々が安心できないのです。
社員に会社の経営状況を説明したあと、「今後の改善する」との予測を付けることで「安心」が生まれます。
「副交感神経系」を整えてリラックスする
「不安」について、生理学的に解説すると、活動する際に働く交感神経と、リラックスしている時に働く副交感神経のバランスが崩れ、リラックスできない状態であると説明されています。更に、最新のポリヴェーガル理論によれば、リラックスは、一人でするものと、会話など他の人と繋がることで得られるものがあると言います。副交感神経系を整え、様々なリラックスを取り入れることで「不安」の解消が期待できます。
ポリヴェーガル理論による3つの神経系と4つのモード
ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)は、1994年にアメリカの神経科学者であるスティーブン・ポージェス(Dr. Stephen Porges)博士によって提唱されました。ポリヴェーガルとは、「Poly: 多重の」と、自律神経の一つである「Vagal: 迷走神経」が組み合わさった言葉で、日本語では「多重迷走神経理論」とも呼ばれています。
従来、自律神経は活動的なときに働く交感神経と、リラックスするときに働く副交感神経の2つから成ると考えられていましたが、ポリヴェーガル理論では、生物の進化や神経の発生の観点から副交感神経がさらに「背側(はいそく)迷走神経系」と「腹側(ふくそく)迷走神経系」とから成り立っていると考えます。
ポージェス博士は、1つの交感神経系と2つの副交感神経系、合計3つの神経系の働きを生き物の進化の過程に沿って説明しました。
太古の昔、深海魚のような古い種の魚類が地球に姿を現わしました。その魚にできた背側迷走神経系は、消化や吸収、休息をするために働き、危機に直面したら酸素を使わないでなるべくじっとするという特徴があります。
4 mode of mind
次に、素早く泳ぐ魚が出てきたところで、交感神経系が発達しました。素早く動いたり、危機に直面したら戦うか逃げるかの反応をしたりする神経系です。
その後、ほ乳類が出現したときに腹側迷走神経系が発達しました。親子間や群れのなかで交流するためのもので、声の韻律の調整や、人類においては、豊かな表情を作ることなどでお互いの思いを伝え、安全の合図を出し合い、社会を形成する働きがあります。
簡単に言えば、背側迷走神経系は、「一人リラックス」状態。交感神経系は、「戦うか、逃げるか」の活動状態、腹側迷走神経系は、「他人との繋がり」状態です。普段の生活では、仕事などで、交感神経系が働モードにあります。このモードでは、緊張が続いており、ちょっと休憩をとるなど「一人リラックス」がしたくなり、背側迷走神経系が働きます。あるいは、腹側神経系の働く「他人とのおしゃべり」や「家族の癒し」をもらってバランスをとります。ところが、交感神経系に極端に強いストレスがかかり、パニック状態となると背側神経系が働き「凍りつき」状態が生じます。ポリヴェーガル理論では、トラウマは、「背側迷走神経系」の働きによって強い恐怖と激しい交感神経系の緊張が解除されずに、「凍りつき」の状態がおきていると考えます。
副交感神経系の働きからと「凍りつき」
私たちが危機に直面したときには、交感神経系や副交感神経系が、生き残るために働きます。その働きは、進化の過程とは逆向きに、腹側迷走神経系、交感神経系、背側迷走神経系の順番で発動していくといいます。
ポージェス博士によると、私たちは、お互いの意見の食い違いや、ちょっとした問題が起きたときは、まず腹側迷走神経系を使い、「私は敵ではないですよ」という友好の合図を出して、話し合って物事を解決しようと試みます。それがうまくいかず、危機に陥ったときには、交感神経系が戦うか逃げるかを試みます。そして、それもうまくいかないと、背側迷走神経系が優位になり、究極の生き残り戦略に入ります。これが、「凍りつき」ということです。トラウマは、「凍りつき」と考え、ポリヴェーガル理論を応用した治療がされている例があります。
不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方 ポリヴェーガル理論の第一人者が教える47のコツ
まとめ
「安心」は、その人がその時感じている「心地良い」という身体感覚や不快になっても時間が経てば改善するという「予測」によって生まれます。今が最悪の状態でも、改善する予測が出来ていれば、「安心」できます。
「安心」を得るには、3つのポイントがあります。
1)現状を知る
2)今後の改善予測がある
3)「副交感神経系」を整えリラックスする
これらは、今が心地良いか、今後良くなるという予測があるか、リラックスしてストレスからうまく逃げられかということです。