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イノベーションが進行するパターンと「生産性のジレンマ」「ドミナントデザイン」

 
車のドミナントデザインを考える子のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

イノベーションが進行するパターンと「生産性のジレンマ」「ドミナントデザイン」

 

イノベーションの進行するパターンと「生産性のジレンマ」「ドミナントデザイン」

ある企業が、画期的な新商品を出した後、
「最近は、この会社の製品もなんだか同じようなものばかりでつまらない」
そう感じることがあります。工業製品だけでなく、加工食品や映画などでもあります。「イノベーション」といえるような画期的なモノやサービスも、その後に出るものには、次第に新鮮さが減っていきます。よく、
「ヒットした映画の第2作、第3作で、第1作目より面白かった作品はない」
などと揶揄されます。しかし、映画会社にとって、第2作、第3作は、確実に観客を集めることができます。企画・制作に1作目ほどの手間をかける必要がありません。確実に利益を稼ぐのは、第2作や第3作です。
「なんだか同じようなものばかりでつまらない」
と消費者が感じるようになるのは、モノやサービスに飽きるからだけではありません。生産者が、利益を得ようとすると新鮮さがなくなる、つまりモノやサービスのイノベーションの割合と言える要素を減らさざるを得なくなるからです。実は、その裏で消費者に見えない生産方法などの隠れたイノベーションが進んでいます。
ところで、イノベーションは、大きく2つに分けられます。
1)プロダクト・イノベーション
モノやサービスそのものを革新するもの
2)プロセス・イノベーション
モノやサービスを生産する方法、提供する方法を革新するもの
新商品を開発するようなプロダクト・イノベーションと生産方法や工程などを革新するプロセス・イノベーションは、同時に起きることはありません。これは、「生産性のジレンマ」と呼ばれています。当初はプロダクト・イノベーションが活発に行われる一方、やがて企業側の関心がプロセス・イノベーションヘシフトし、プロダクト・イノベーションが沈静化していきます。
このように、イノベーション起きて普及していく過程には、法則性があります。
1)流動期:プロダクト・イノベーションの時期
2)移行期:プロセス・イノベーションの時期
3)固定期:ドミナントデザイン成立後
これらの時期に対応した企業活動が、イノベーションによる収益確保には欠かせません。
この記事では、イノベーションの普及する過程について紹介します。

イノベーションの考え方 (日経文庫)

流動期:プロダクト・イノベーションの時期

技術の発展や市場環境の変化をきっかけとして、画期的なモノやサービスが現れることがあります。プロダクト・イノベーションです。これらは、これまでなかった商品や従来品と全く異なるモノやサービスです。この段階では、生産者も消費者も新商品について、手探り状態です。生産者からみれば、
「消費者の反応はどうか?」
「商品を買ってくれるのだろうか?」
そう思えます。消費者から見れば、
「本当に面白いのだろうか?」
「役に立つ商品なのだろうか?」
等々です。
この時期、画期的な商品が1つ登場することで、各社がそれに追随するように独創的な商品開発を行います。モノやサービスに対する判断をする基準も明確でないケースが多くあります。
ここ何年かの自動車産業は、脱炭素で様々な車が出ています。ハイブリッド車、水素燃料電池車、電気自動車などです。電気自動車で勝負ありかと思いきや、従来のガソリン車を水素燃料に切り替えるだけの車も浮上しています。今、既存の自動車メーカーに加え、多くの新規参入者が、プロダクト・イノベーションでしのぎを削っています。

 移行期:プロセス・イノベーションの時期

移行期では、製品仕様が顧客ニーズに合致する形で最適化され、市場におけるドミナントデザインが決まります。
ドミナントデザイン(Dominant Design)とは、市場において標準化・固定化されたモノやサービスの仕様です。様々な商品が生まれ、その仕様を突き詰めていくと、それ以上変革しようがない最適な形に落ち着くようになります。
ドミナントデザインを持つ商品のでは、どの企業が開発・製造したとしても、おおまかな設計方法や外観・内部構造、使用技術、搭載する機能などが似通ったものとなります。
どこの車を買っても、アクセルが右、ブレーキが真ん中であるのは、ドミナントデザインがあるからです。
この段階では、各社の関心はプロダクト・イノベーションを巡る競争から、コストと価格を巡る競争に移行します。現状の商品を高い生産性で製造・販売する方法に関心が向かいます。大規模な生産ラインの建設やチェーン店の数を増大させます。つまり、プロセス・イノベーションが活発化する時期です。
この時点で大規模な設備投資が行えない企業は競争から脱落し、企業数は減少していきます。

固定期:ドミナントデザイン成立後

固定期は、製品の成熟化によって差別化が難しくなり(コモディティ化)、市場の成長やプロダクト・イノベーションがほとんど見られなくなる段階です。
企業は、すでに多額の投資や労力をかけて構築した供給体制を無駄にしないよう、大幅な商品の変更を避けるようになります。業界の寡占化が進むのもこの時期です。ドミナントデザインは市場の優れた指標となる反面、新たなアイデアを阻害し、業界の寡占化を進行させることになります。

再び流動期:破壊的イノベーション

寡占状態になった業界においても、市場や環境の変化、科学技術の進歩により、固定期における少数のリーダー企業に対抗するイノベーターが必ず現れます。
彼ら/彼女らのイノベーションは、ドミナントデザインの存在を前提としたものではなく、既存プロセスや現状を否定するような「破壊的イノベーション」になるかもしれません。家電の常識を打ち破ったダイソンのような会社が、また流動期を作り出すはずです。

まとめ

イノベーションは、
1)プロダクト・イノベーション
2)プロセス・イノベーション
とに大きく分けられます。新商品を開発するようなプロダクト・イノベーションと生産方法や工程などを革新するプロセス・イノベーションは、同時に起きることはありません。これは、「生産性のジレンマ」と呼ばれています。
イノベーション起きて普及していく過程には、法則性があります。
1)流動期:プロダクト・イノベーションの時期
2)移行期:プロセス・イノベーションの時期
3)固定期:ドミナントデザイン成立後
これらの時期に対応した企業活動が、収益確保には欠かせません。

参考記事:カイゼン活動から「イノベーション」を起こす3つのステップ

イノベーションの定義と中小企業における「イノベーション経営」

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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